62 失敗
村からある程度離れたら、いつものように旅人の道標でカルポの町の近くまで転移して町へと戻った。
「着きましたね。ソーマ様。」
「そうだね。初めての依頼にしてハードだったけど、どうだった?」
「冒険者ってすごいです!!僕ももっと強くならないと!」
「ソーマ様が一緒なら大丈夫です!」
2人が元気よく反応する。
ゼンはいいが、イチが段々と重い子になってきている気がする。
ちゃんと教育しないと。
ギルドで依頼達成の報告をする。
「ソーマくん、お帰りなさい。依頼はどうだった?」
「一応は依頼達成です。これサインです。」
「はい。確認しました。何かあったの?」
「ゴブリンは5匹いたんです。」
「え!?5匹も!!?それってFランクの仕事じゃないじゃない。」
「まあそれもそうなんですけど、オークの足跡を追っていったら、ジャイアントワームに行き着いて、オークは全部食べられてました。」
「ジャ、ジャイアントワーム!!!?え、オーク!!?」
「ええ、まあ。」
「下手しなくてもCランクの依頼じゃない!!?大丈夫だったの!?怪我ない?平気?」
「だ、大丈夫です。平気です。怪我も無いですし、ちゃんと討伐もしましたから。」
「そ、そうなの?・・・倒したの?」
「はい。何とか。不意打ちが出来たので、何とかなりました。」
「そ、そう。不意打ち。で、でも倒しちゃったなんてすごいわ。」
いつも冷静で丁寧な・・・いや、そうでもないか。
キサラさんが落ち着いてきたようだが、改めてことの重大さに困っているようだ。
「ジャイアントワームの討伐は、本当ならCランクの依頼なの。依頼はゴブリン1匹の討伐だったからFランクだったけど本来ならこれは依頼の詐称よ。依頼者のペナルティものなのよ。」
「まあそうかもしれないんですけど、ワームが居たのが村からかなり離れた場所だったので俺たちが過剰にこなしただけとも言えるんですよね。実際村からは4時間以上離れていたので、村に被害が出ることなんてほぼ無かったでしょうし。」
「そうは言ってもね。」
「そこを何とか!村長さんたちいい人だったし、こんなことでペナルティ与えるのは何か。」
「うーん。まあソーマくんがそこまで言うなら、上には取り計らってみるけど。」
「やった!キサラさんありがと!」
「う、うん///」
よかったー。
ちょっと疑っちゃった引け目もあって、俺のせいでペナルティなんてなったら寝覚めが悪いからね。
「お、坊主!!戻ったのか!!」
大声が聞こえたので、声の方を向くとギルドマスター地区長のダスターさんがいた。
「あ!!」
思い出した。
この人のスキルだ。
「?ソーマ様、どうしたんですか?ダスターさんみたいな大声あげて。」
「【闘気】だよ【闘気】。あの人が持ってたんだよ。思い出したからつい声あげちゃった。」
「何で知っているんだ?」
俺の「闘気」発言に目を細めてこちらを見るダスターさん。あ、やべ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なるほどなー。」
俺たちはダスターさんがこの支部に滞在している間に使っている会議室の一室で、事情を説明していた。
「しかし、ジャイアントワームをその年で倒しちまうとはなー。」
ダスターさんも普通の声を出せるんだな。
俺はどうでもいい感想を抱いた。
「たまたまです。」
「たまたまで倒されてたまるか!!」
やっぱり大きい。
「イチがある意味で覚醒したから何とかなったんですよ。」
「ああ【闘気】を発現したんだな。」
「そうみたいです。」
「で、お前は鑑定ができる、と。」
「まあ、そうです。」
鑑定がばれてしまった。
「しかもスキルが分かるってことはかなり高レベルだな!!最後に俺が叩いた時だろう。あの一瞬で読み取るとは!!」
「・・・」
「見られちまったものはしゃーないが、人前ではあんまりしゃべるもんじゃねーぞ!!」
「はい、すみません。」
「まあ、俺のステータスに隠さなきゃなんねーところなんて無いけどな!!がははは!!」
失敗した。
ギルドの受付という他の冒険者がいる場所で話してしまうなんて。
もっと気をつけないと。
「はい!」
「なんだ!!狐っ子!!」
「【闘気】ってどうやったら使えるようになりますか!!」
「何だ!!使ってみたいのか!!」
「はい!!ぼくもビリビリドッカーンしたいです!!」
「そうか!!じゃあ教えてやろう!!がははは!!」
「ホントー!?やったー!!」
す、すごい。
ゼンがダスターさんのテンションに付いていっている。
「【闘気】ってやつは魔力を纏う技術だ。纏った魔力に様々な特性を持たせることで攻撃力を上げたり、防御力を上げたりできる。狐っ子の言うように雷の属性を持たせることも出来るだろう。」
「はい!わかりません!」
「何だとー!!丁寧に教えただろー!!」
「でも分かりません!!」
「ぐぬぬ。」
この2人だけじゃ話が進まないな。
というかダスターさんは結構頭を使うタイプなんだな。
「【闘気】というのは魔力操作の延長にある技術ってことですか?」
「そうだ!!普段はスフィアや魔道具に対して送っている魔力を体を覆うように維持することで纏うのだ!!」
「ただ魔力を覆っても力が強くなったりはしなかったと思うのですが。」
「それは特性を持たせていないからだろう。特性を持たせるにはイメージを固定する必要がある。それも強いイメージだ!!コレっ!!という特性をしっかりイメージできていなければ魔力が漂っているだけになるのは当然だ!!」
そうだったのか。
魔力を集めて攻撃力を上げたり出来ないかと試したことはあるが、特性の付与が出来ないと闘気にはならないということか。
と言うことは、闘気を操れたら、魔法っていらない子?
単純な攻撃手段としては、闘気の方が早いかもしれない。
使えるかどうかは分からないけど、この前ゼンとイチが魔力を渦巻きのように操ったときのようなことだと思う。
「ふむふむ。」
「坊主は何か分かったようだな!!」
「まだイメージだけですが、なんとなくは。」
「兄貴すげー!!」
「流石です!ソーマ様!」
「後で試してみます。ありがとうございます。」
「がははは!!構わん!!後進を育てるのも勤めだからな!!」
気持ちのいい人だな。うるさいけど。




