61 【闘気】スキル
ジャイアントワームにイチの攻撃がヒットした瞬間、雷を帯びた爆炎が上がった。
それまで暴れ狂っていたワームはVの字に折れ曲がった後、力が抜けたように地面にドスンと倒れた。
完全に死んでいるようだ。
「イチ!すごいな!!流石は僕の妹だ!!」
「えへへ。」
「最後のどうやったんだ!?何かビリビリドッカーンってなってたぞ!すげーかっこよかった!僕もやりたい!!」
「ええっと。何かご主人様がワームに食べられそうになってるの見てたら、カーっとしちゃってよく覚えてないの。」
「??」
「どうやったか分からないのか?」
「はい。ごしゅ、ソーマ様。」
言い間違えてる。かわいい。
じゃなくて。
分からないのか。
雷を纏っていたからイチの属性が作用しているのだろうけど、一体なんだろう。
その答えはイチを鑑定してみたら分かった。
スキル:料理、闘気
「イチ。【闘気】って言うスキルが増えてるよ。」
「え?・・・・・・あ!そう言えば最後に振り下ろした瞬間に何か見えた気がします。夢中で気づかなかったんですけど。」
「おそらくあの攻撃が闘気って技なんだろうね。もしくは闘気を使った攻撃か。」
「闘気、ですか?闘気ってなんでしょうか?」
「そのスキルが取れたら、僕にもイチみたいな必殺技が使えるかな!?」
「使えるかもね。でも闘気ってものがよく分からないからなあ。・・・・・・いや、あれ?どこかで見たことがあるような。どこだったかな?」
「・・・・・・」
「ごめん、思い出せないや。」
ゼンががっくりしてしまった。
イチとシロが慰めている。
「まあ、イチが取得したってことは可能性があるってことだし、また色々調べてみよう。な!」
「そうだよな!」
「はい!」
「にゃー!」
「じゃあ、ジャイアントワームを回収して、帰るとしますか。」
「「はい!」」
ジャイアントワームをストレージリングに回収して、ついでに付近に散らばっている岩を適当に放り込んで、もと来た道を戻る。
岩もその内、何かに使うかもしれないので回収できる時にしているのだ。
ストレージリングだとスタックができるから管理が楽なのだ。
村からかなり離れてしまった為、戻るころには日が傾き始めていた。
もう1,2時間で日が落ちると言うくらいで帰り着くことができた。
足が棒のようだ。
村に着くと村の人達が集まって何かをやっていた。
お祭りか?
そんな訳は無く、朝に出発した俺たちが森の奥からまったく戻らなかったため、村長さんが心配して捜索しようとしてくれていたらしい。
冒険者相手にそんなことするなんて、この村の人たちはいい人たちだ。
詐欺依頼かと疑ってすみません。
俺たちの姿を見て村の人たちは安心したのか、それぞれの家に帰っていった。
俺たちは村長さんの家でことのあらましの説明だ。
ゴブリンもワームも討伐済みで、討伐したのもかなり離れた距離のため、他の魔物も問題ないだろうと伝えると驚いていたが感謝された。
回収したジャイアントワームの死体からはオーク4匹分の死体が出てきた。
ブヒブヒ言っていたが、ジャイアントワームと戦っている最中に衝撃でついでに死んだのだろう。
2割くらいは消化されていたが、魔石も残っていたし、オークの肉も使えそうだった。
ゴブリンの死体は出てこなかったが、小ぶりの魔石が3つ出てきたので、ゴブリンは消化されたのだろう。
オーク肉はマヒ毒に侵されていたが、ストレージリングの機能で分解するとマヒ毒も血も完全に抜くことができた。
抜いたので安全なのだが、気持ち的に食べたくないので全部売るつもりだ。
ワームの食べ残しとかなんか嫌だ。
村長さんのご好意で一晩泊めてもらえることになったので以前狩ったオークの肉を提供して、夕飯にしてもらった。
脂が程好くのっていてオーク肉は美味い。
イチが果物から作った特性のソースをかけると更に美味い。
果物の程好い甘味と酸味が肉にマッチして非常に美味だった。
シロも満足そうに10kgくらい食べていた。
お前は体重10kgも無かったよね?
世界は不思議で満ちている。
翌朝、念のため村の周囲をひと回りして他の魔物の脅威が無いかを確認してから、村を後にした。




