43 朝食
食事の後、やっと落ち着いた2人にこれまでのことを聞いた。
鑑定結果の説明にあったように2人は攫われて気がついたら奴隷にされていたらしい。
2人は父親と3人で山奥に暮らしていた。
父親は1年前に他界。
山に現れた魔物と相打ちしたらしい。
その後しばらくは2人で暮らしていたが、人狩りに襲われてそれからは奴隷として徹底的に叩き込まれた。
着るものはボロ、食べるものも満足に与えられず、お客には愛想を振りまけ、無駄口を叩くな、お前らは物だと何度も躾けられたそうだ。
大事な商品のため、肉体的に傷つけられることは少なかったが、傷が残らない様に平手打ちなどは多々あったようだ。
鞭とか棒だと傷になるからな。
見た目が大事だったのが幸いしたか。
ここまでいくつかの町を巡ったが、これまで金額に折り合いが付かなかったようだ。
銀髪の狐人は珍しいしな。
カルポの町にも獣人はいる。
虎、猫、犬、トカゲ、鳥などなどいるが狐は見たことがない。
聞いた話では狐は黄色らしい。
銀孤と言えば日本の物語でも大妖怪とかの姿だしこちらの世界でも珍しいのだろう。
話疲れたのかうつらうつらし始めたので2人をテントに放り込んだ。
毛布を掛けてやったら、あっという間に寝てしまった。
これまで大変だっただろうし、今日くらいはよく寝かしてやろうと思う。
その間俺はもはや日課となっている魔法の開発をしつつ、近づいてくる魔物を魔法の実験台にしつつシロが起きるのを待つ。
途中かなり寒くなってきたので、毛布を追加で出してテントに放り込んだ。
俺も毛布に包まった。
シロが起きたら見張りを交代して、俺もテントに入り込み、寝た。
翌朝起きてみるとテントはもぬけの殻だった。
2人はもう起きているようだ。
テントから出るといい匂いがしていた。
食材なんて出してなかったと思ったけど。
「おはようございます。」
「おはよう。早いねイチちゃん。よく眠れた?」
「はい。ありがとうございます。」
「それならよかった。ゼンくんは?」
「すぐそこの川に行って魚獲ってます。」
「魚獲れるの?道具なんて用意してないのに。」
「たぶん大丈夫です。山に居たときは木の枝とかで獲っていたので。」
「へー。すごいな。俺にはそんな器用なことできないや。それは何?」
「昨日の残りにその辺りに生えていた山菜とか香草を加えて調えてみたのですが。ダメだったでしょうか?・・・」
「いやいや。美味しそうな匂いがしたから気になってね。昨日とはまたかなり香りが違うね。でも美味しそうな匂いがするよ。楽しみだ。」
「はい!」
まだ何をするにも恐れを感じるが、昨日よりは大分元気になっているようで、笑顔も見えるようになった。
子供は元気で笑顔でないとね。
俺もまだ子供だけど。
そうこう行っている内にゼンくんとシロが戻って来た。
手には7匹も魚を持っている。
どれも30cm近いサイズだ。
よくこんな小川にいたな。
「イチー!取ってきたよー!」
ゼンくんは元気に帰還報告をしてきた。
「おかえり。」
「おかえりなさい。」
「ただいまー。あ!おはようございます!」
「うん、おはよう。いっぱい取ってきたね。」
「そうですか?この辺りには少ないみたいで時間がかかってしまって。」
「そうなんだ。でもこの辺りでそのサイズの魚は中々見ないからすごいよ。」
「えへへ。そうですか?ありがとうございます。イチ、これよろしく。」
「はい。あ、あのー・・・」
「ん?何かな?」
「お塩をいただけませんか?」
「ああ、そうだね。他にいるものあるかい?」
俺は塩と果物と適当に食材を出してみる。
「あ、じゃあコレとコレも。」
「じゃんじゃん使っていいよ。安売り品を大人買いしたやつだからいっぱいあるんだ。食材のままだから調理しなくちゃいけなくて、調理後の料理は早々に食べちゃうからさ。」
「そうなんですか。便利ですね。」
「うん。便利でしょ。あ、でも言いふらさないでね。便利過ぎて誰かに狙われたら嫌だから。」
「「は、はい!絶対言いません!」」
「え、えーっとそこまで意気込まなくても大丈夫だよ。」
「いえ!大丈夫です!」
「あそう。まあ、よろしくね。」
「「はい!」」
イチちゃんの用意してくれた朝ごはんも美味しかったです。




