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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
ニューゲーム開始
41/200

40 耳と尻尾

待機状態にしていたエアショットでゴブリンライダーの脳天をぶちまけた。

「[羨望]の瘴珠」とかいう危険なにおいのするアイテムを取得してしまったが、気にしない。

無視だ無視。


ラピッドエアショットは魔力の供給を止めても破棄しないと待機状態となる。

微量に魔力を消費し続ける待機魔力があるのだが、態々詠唱し直さなくても魔力が続く限りいつでも速射できるので戦闘中は基本的に待機状態だ。

他の魔法を使うには切り替えが必要だが、シロと連携していれば、基本的にはどうとでもなる。

なんとも頼れる相棒だ。


まだまだ魔力に余裕があるので、残りの狼にエアショットを撃ち込みつつ、崖の下を覗き込んでみる。


「おらおらおらー!」


掛け声は適当である。

覗き込むと、斜面の木々に引っ掛かった金属製の檻を見つけた。

重そうだ。

中には人が入っているようで、更に重そうだ。

重さで馬車が倒れた時に飛ばされたのだろう。

檻の周りに斜面に負けず、狼が囲っていたようだが、なぜか全て混乱したように逃げていった。

何匹かは崖から滑り落ちて木に刺さったりして死んでいた。哀れ。

気がつくと俺達の周囲にいた狼たちも方々に逃げていった。

どうやらゴブリンライダーが群れのボスだったようだ。

そりゃそうか。

ジャックウルフが群れを成していること自体が異常だったのだから、ボスが居なければ解散するのは当然だよな。




周囲から魔物の気配が無くなったのを確認して、魔法の待機状態を解除した。

さて、問題は崖の下の檻だ。

かなりの急斜面で普通に降りられない。

人が入っているからストレージには入れられない。

いや、実際には同意があれば入れられるのだが、初対面でいきなりストレージに入れてもいいですか?と聞く訳にもいかないし、はいと答える人もまずいない。

俺なら無理だ。

意味不明だし。

とは言え、俺やシロはまだ子供であんな折を持ち上げることなんてできないし、鍵を開けようにもそもそも降りられないし八方塞だ。

とりあえず声を掛けてみようかな。



「おーい。無事かー?生きてるかー?」


うーむ。

返事がない。

もう一回。



「おーい。無事かー?生きてるかー?」



「・・・はい・・・。」


お!微かに聞こえた。

意識もありそうだ。



「そこから引き上げるのに、一旦ストレージに入れてもいいかー?」



とりあえず聞いてみる。

ものは試しだ。



「・・・はい。引き上げて頂けるなら何でもいいです・・・。」



お。予想外にオッケーが貰えた。

これはかなり衰弱してそうだ。

同意は貰えたし、さっさとやってしまおう。

俺はエナジーウィップを発動して、魔力の鞭を檻に伸ばす。

このエナジーウィップはウォーターウィップを改造して作ったもので、元の魔術よりも操作性を上げてある。

まだ手のようには動かないが、ゆくゆくは第3の手とかやってみたい。

魔力の鋼線とかもかっこいいな。

檻に魔力で接触し、ストレージリングに格納。

成功。

檻と檻の中の人が一緒くたに格納された。

マジ鬼畜。

すぐに出してあげよう。


適当に周囲の狼の死骸を回収してスペースを空ける。

空いたスペースに先程回収した檻を出す。


「・・・え?・・・」

「・・・ふぇ?・・・」


あれ、二人いた。

声は一人だったから一人だと思ってた。

同意の声も一人分しか聞いていないのだがストレージの制約に引っ掛からなかったな。

二人は鳩が豆鉄砲をくらったように目を見開いて固まっていた。

どうしたんだろう?


「大丈夫かい?今空けるからね。」


俺は馬車と一緒に回収されていた檻の鍵を取り出し、檻の扉を開ける。

幸い歪んだりはしておらず、すんなりと開けることができた。


「出てこれるかい?」

「・・・はい。・・・」


おずおずと言った様子で二人は檻から出て来た。

耳と尻尾が付いている。

耳と尻尾が付いている。

大事なことなので2回言いました。

そう。

二人はどう見ても獣人のようです。

しかも双子のようで、顔がそっくりだ。


「怪我はどう?体は痛いかい?」

「・・・はい。大丈夫です。・・・」


どこからどう見ても大丈夫には見えないが。

腕を抱えて、片足を引きずり、体は全体的にやせていた。

俺よりも身長が低く、獣人とは言えおそらくは年下だ。

性別は見た目からはよく分からない。

とりあえず、怪我を治して、食事を取ろう。

俺はストレージからポーションを取り出して、1本ずつ渡した。


「これ飲んで。」

「・・・これは・・・?」

「薬だよ。」

「・・・薬。こんな高価なもの・・・。」

「自作だし、材料はタダだし、大丈夫だから。どうぞ。ほらグイっと!」


なんだか押し問答になりそうだったので、俺はちょっと強引にポーションを飲ませた。


「「うぇ。・・・」」

「ははは。味はあんまりだろう?けど回復はするから今は良しとしてくれ。」


ブンブンブンブン

二人は首をこれでもかと振って、美味しいと言っていた。

そんなわけないのに怒られるとでも思ったのかな?

まあ動けるようになってそうで良かった。


「とりあえずはその辺で休んでて。俺はちょっと片付けしてくるから。シロ、見張りはよろしくねー。」

「にゃー。」


ビクッ


「にゃー・・・。」


ビックリされて少し落ち込むシロであった。

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