3 鑑定
扉から漏れ出していた光が収まるとそこには小さな部屋があった。
机があって、棚があって、ベットがあって、骨があった。
そう骨があった。
きっとこの部屋の主の骨なのだろう。
驚くことに骨だけがきれいに残っていた。
こんなことってあるのか?
ベットの中で骨だけ残るって。
あ、服は着ているな。
服も残っていた。
どれだけの時間をここで過ごしていたのか想像を絶するぞ。
とりあえず、骸骨さんに黙祷と合掌を捧げておいた。
どこのどなたかは存じませんが、安らかにお眠りください。合掌。
化けて出ないでね。
さて、とりあえず、休もう。
体痛い。
ぶっちゃけ瀕死です。
地竜に吹っ飛ばされて、壁にぶつかって、落ちてボロボロだ。
ここなら地竜に襲われることもないだろうし、少し休もう。
小部屋の壁に寄りかかって小休止だ。
あー、しんど。
~~~
どれくらい寝ただろう。
いつの間にか床に転がって寝ていた。
流石にベットへは行かなかったようで自分に安心したよ。
起きたら隣に骸骨とかぞっとするな。
考えるのは止めよう。
体も動くようになってきたし、部屋の中を見させてもらおうかな。
声も「思うが儘に進め。」って言ってたし。くれるってことでしょ。
さーて何があるかなーっと。
まず目に付くのは、部屋の中央にあるテーブルだ。
正確にはテーブルの上に鎮座している「スフィア」だ。
完全なる球状、透き通った青色をしている。
何となく神々しさすら感じる。
俺はそれをそっと手にとって見た。
触ってみたが、凄そうという感想しか湧かない。
どんな等級のものなのか【鑑定】で詳しく分かるならいいだが。
鑑定というのは、スキルだ。
スキルの取得条件は様々だが、才能ありきの訓練で身につく。
訓練してもスキルの才能が無ければ、取得はできず、スキルを持っている人間はごく稀だ。
自分に合ったスキルが何かを知る術はないため、もし取得できたらラッキーというものだ。
ただ、中には取得している人間の多いスキルもある。
それが、鑑定スキルだ。
鑑定スキルは、3人に1人は持っていると言われている。
しかし、有効に使えるレベル5以上の鑑定スキルを持っている人間は非常に珍しい。
鑑定スキルは数あるスキルの中でも習熟度のあるスキルである。
習熟度は繰り返しスキルを使うことで経験を積むことであり、鑑定スキルの場合、延々と鑑定を続ける必要がある。
繰り返し使う必要があるが、同じものを鑑定し続けても経験値は溜まりにくく、そもそもスキルレベルを上げるために非常に多くの習熟が必要となっている。
その成長のしにくさで、大抵の人間はレベル2で挫折してしまう。
しかもレベルが低いと鑑定結果が非常に少ないのだ。
レベル1で分かるのは名前だけだ。
石を持ったら「石」と目の前に表示される。ただそれだけだ。
しかも触らないと発動できないという制約もあるし、別々のものを鑑定し続ける必要があるため、かなりの苦行だ。
かく言う俺も挫折した。
鑑定レベルは1である。
俺が鑑定を取得したのは、5歳の時だった。
当時はスキルが取得できて喜んでいたものだ。
こつこつ鑑定をしてきたが、未だにレベル1である。
7年でレベル上昇なしだ。
日常の中で出会う物を鑑定していてもレベルは中々上がらないらしいことを知ったのは騎士学校に入ってからだった。
騎士学校に入って3年間でもこつこつ続けてきたつもりだが、レベル上昇なしだ。
はい。そういうことです。
聞いた話では、鑑定には次の段階として【鑑定眼】というのがあるらしい。
60歳を超えた商人の1割ぐらいが持っているレアスキルらしい。
まあ、鑑定眼もレベル1かららしいけど。
高望みはしねぇ。
鑑定スキルの話はこれでいいとして、問題はこの「スフィア」だ。
結構レアのアイテムっぽいから、試しに鑑定してみよう。
名前:神青球スフィア
種類:スフィア
等級:神級
品質:最極上
属性:なし
説明:神が創りしスフィア。
世界の空と海と生命を司る神聖なる青き球。
神が世界に干渉する際にも使われる魔法触媒。
・・・ん?
ナニコレ?
ん?
あれ?
もう一回。
名前:神青球スフィア
種類:スフィア
等級:神級
品質:最極上
属性:なし
説明:神が創りしスフィア。
世界の空と海と生命を司る神聖なる青き球。
神が世界に干渉する際にも使われる魔法触媒。
あれー?
何でこんなに見えるのー?
ボクわかんなーい。
ふう。
よし、落ち着け。
よし、落ち着いた。
とりあえずこのスフィアは凄まじい物だということが分かった。
等級:神級って何だよ。
品質:最極上って何だよ。そんな言葉ねーよ。
神が創ってるよコレ。神が魔法使ってるよコレ。
ヤベーよ。
ふう。
おそらくだがこのスフィアが珍しい、珍し過ぎるものだったから、鑑定のレベルが一気に上がって、詳細が分かるようになったんだろう。
驚きだ。
これは自分を鑑定してみないとな。