35 ゴブリンの迷宮3
出現した宝箱を開けた。
名前:下級魔術書(水)
種類:書籍、魔術書
等級:普通
品質:普通
説明:水の下級呪文についての学術書。
ウォーターボール、ウォーターボールズ、ウォーターウィップ、アクアヒールを記載。
「お、おぅ・・・。」
「にゃー?」
・・・これ、町の魔術書店で見たことあるぞ。
1冊金貨1枚の値札がついてたはずだ。
金貨1枚は1000貨だ。
俺の貯蓄ではまだ手が出せないと思っていたんだ。
今俺の所持金は200貨くらいだ。
収入はある程度あるが、生活に必要なものや食事などで出費もある。
町での生活を始めたばかりと言うこともあってまだ生活必需品が揃って無かったりするから出費が激しいんだ。
なので、魔術書には興味はあったが手が出せなかった。
それが今俺の手の中に!
宝箱に魔術書が入っているとは聞いたこと無いけど、迷宮内で命を落とした冒険者の持ち物かもしれない。
なんにせよ俺にとっては最高のものが手に入ってホクホクだ!
さ!帰ろ。
広場に転がったゴブリンの死体をストレージに回収し、先程の戦闘で消費した魔力を自作の下級魔力ポーションを飲んで回復する。
広場は宝箱以外は何も無く、殺風景な場所だったが、空になった宝箱を鑑定したら「迷宮ボスの宝箱(空)」となっていたので間違いなく攻略はできただろう。
俺達は入り口を目指して来た道を戻っていく。
途中にいた敵は全て倒して来たが、戻る頃にはまた出て来た。
行きよりは数が減った様で最大でも5匹くらいの集団だった。
俺とシロは出てくるゴブリン達を危なげなく撃ち殺して行きと同じペースで戻っていった。
洞窟内には時間が分かるものはなく、時計も持っていないため、洞窟に入ってどれくらい経ったのかが分からない。
お腹の減りぐらいからおそらく昼は過ぎていると思うが、この最短ルート上にはセーフエリアはないため、ゆっくり休憩はできない。
最奥の広場で休憩してから出発すればよかったのだが、帰ることに夢中で休憩のことを忘れていた。
うっかり。
「シロごめんな。もうちょっとで出口だから、出たらお昼食べような。」
「にゃん!」
「あいがと。」
「にゃーお。」
シロの炎の礫で体勢を崩し、俺が剣で止めを刺すこと数回。
ようやく出口が見えてきた。
出口を出るとそこには集合時にいたギルドの職員さんと3組のパーティがいた。
その中には突入前に意気込んでいたパーティもいた。
フラグは折れていたらしい。
テンプレ展開って中々起きないな。
どうでもいいことを考えつつも挨拶しておこう。
「おつかれさまでーす。」
「!お、おう。おつかれ。」
「おつかれさまです。」
俺の接近に気付いていなかった冒険者くんがどもりながらも返してくれた。
ほほえましい限りだ。
ギルドの職員さんは俺が出て来くるのは気付いていたようで出た瞬間は驚いていたようだが、普通に返事をしてくれた。
「無事でなによりです。普段よりかなりゴブリンの数が多いと報告があったので、少し心配していたのですよ。」
「そうだぞ。俺たちでも苦戦する数が出てきたからな。まあ俺たちなら余裕だったけどな!」
「「うんうん。」」
「そうだったんですか。ご心配をおかけしてすみません。確かに聞いていたより多かったですね。」
「だろ?俺たちなんか10匹の集団にも遭遇したんだ。まあ倒したけどな。」
「10匹ですか!すごい数ですね。一人前の冒険者が対応するレベルじゃないですか。」
「まあな。へへへ」
うん。気を良くしたようでなによりだ。
「納品してもいいでしょうか?」
「ええいいですよ。討伐証明部位を30以上が必要ですよ。」
「はい。えーと、じゃあこれで。魔石はギルドに直接持って行きますね。」
俺はそう言って討伐証明部位の角を50個渡した。
行きで倒した分くらいの数だ。
実際はこの倍くらいあり、リーダーやメイジの角もいくつかあるが、上位種は最奥にしかいなかったため出さなかった。
一人で迷宮の最奥まで行くなんて目立ちすぎるからだ。
これでも目立つが今の迷宮の状態を考えると時間的にこれくらいは倒しておかないと逆に変だし、ある程度の実力があることは示さないといけないだろう。
まあ適当だけど。
達成証明書を発行してもらい俺たちは休憩することにした。
ちなみに他の2パーティは追加報酬のために再突入して行ったそうだ。
駆け出しの冒険者なのにみんな慎重なようである。
特攻するイメージだったのだが、教育が行き届いているようですごいことだ。
俺は逸脱してるけど。




