31 訓練
今日はギルドの訓練日だ。
昨日はFランクの討伐依頼を受けて一日中町の外にいた。
依頼は近くの森に住み着いたゴブリンを計10匹討伐することだ。
目的は森での採取だ。
適当にゴブリンを狩って、森で薬草を採取した。
村周辺の森よりも薬草自体の数が少なくて難儀だったが、ある程度の数は確保できた。
ストレージに入れていた薬草をミンさんのところで使うためのカムフラージュだ。
ミンさんには悪いけど、あまり広める話でもないので黙ってる。
閑話休題
俺はギルドの奥の訓練場にやってきた。
冒険者でいっぱいかと思っていたけど、そうでもなかった。
大体20人くらいの人が集まっていた。
特に若い人が多く、おそらくは10代だ。
上の年代の人は付き添いのような雰囲気だった。
そんな中にハンスさんとロダートさんがいた。
「ようソーマ。元気にやってるそうだな。」
「ハンスさん。おはようございます。はい。ボチボチやってます。」
「ボチボチかよ。聞いたぞ。スピカのやつが中々な新人が入ったって褒めてたぞ。」
「はぁ。ありがとうございます。」
「スピカ君が褒めるのは珍しいことなのですよ。」
「そうなんですか?スピカさんとお知り合いですか?」
「ああ、スピカはこの辺りの同年代では抜きに出て強くて、冒険者としてある程度活躍したところでギルドの職員として採用されたんだ。冒険者になったタイミングが殆ど同じだったからその時からの付き合いだな。」
「スピカ君は冒険より安定を取ったのです。」
「そ、そうなんですか。お二人も訓練ですか?それもと付き添い?」
「スピカからソーマが参加するって聞いてな。気になったから来たんだよ。新人冒険者がどうしてるかと思ってな。」
「ひやかしですね。」
「まあ、折角来たからには訓練もしていくけどな。」
「ソーマ君ならば、あっという間にハンス君なんて抜きさって行きそうですね。」
「てめぇ、ちょっとは遠慮しろ!」
「何に?」
「てめぇ・・・」
「あははは・・・。」
そんないつもの掛け合いを見ていると訓練場の入り口からギルド職員のスピカさんが入ってきた。
「みなさんお集まり頂き、ありがとうございます。何名か熟練者の方も来て頂けているようで良い訓練になりそうで何よりです。」
スピカさんはハンスさんなどの少し年上の年代の人たちに軽く目礼をした。
「初参加の方もいらっしゃるのでこの訓練会について軽く説明させて頂きます。この訓練会では基本的に、個人では不足する対人戦の機会を設けるために開催しています。
対人戦は魔物相手では得られない技術を経験できる機会になります。特に熟練者の方との模擬戦は中々経験できることではないので、積極的に技術を吸収するように務めてください。
では対戦表を貼り出していますので、順番に模擬戦を開始してください。怪我や体力に問題が出た方は遠慮せずに言ってください。ではよろしくお願いします。」
「熟練者の方が大変そうですね。」
対戦表を見た感想だ。
「まあ回数は多いが、相手は新人が多いからな。大して疲れたりはしないさ。」
「そうですよね。出来る人はここには来ないですよね。」
「そうそう。お、ほら、終わった。次はロダートだな。」
「はい。行って来ますね。」
「いってらっしゃい。」
そう言ってロダートさんは模擬戦に向かった。
試合はほとんど3分程度で終わっている。
一応は最大10分となっているが、新人の方が先にバテて終わってしまう。
余り参考にならない。
ロダートさんの相手は俺より少し年上の槍使いの少年だった。
この少年は結構粘って、6分くらいで力尽きた。
2倍だすごい。
無駄な動きが多くて余計な体力を使っていたし、踏み込みも甘い。
ロダートさんは少年の槍を上手く受け流していた。
最低限の力で受け流すのは相手が未熟でも高い技術が必要なはずだ。
俺は横で会話しながらも熟練者たちの一挙手一投足を観察し、体の動かし方や力の流し方を脳内シミュレートしていった。
これで体がついてくればいいのだが、頭と体を一体にするには訓練は必須だろう。
ここにいれば、動きを見る機会は得られそうなので良かった。
あとは自分の体に合わせた動きを研究していこう。
そんな事を考えていたら、俺の番が来た。
相手はハンスさんだ。
「よろしくお願いします。」
「おう。よろしくな。じゃあ始めるか。」
俺もハンスさんも得物は剣だ。
その動きも鏡映しにしやすい。
俺はこれまで見てシミュレートした動きを試していった。
実際に模擬戦の中で使ってみると、いいと思った動きが役立たずで、まあまあかと思った動きが合っていたりと修正のしがいがある。
受けるよりも受け流す。
受け流すよりも避ける。
避けてフェイント。
突き。
払い。
払い。
振り下ろし。
受けられて、吹き飛ばされる。
すぐさま体勢を立て直し、避ける。
ハンスさんは結構容赦なく攻撃を入れてくる。
避けるのも大変だ。
俺がほんの少し意識を足元に落としただけで、隙をみて攻撃を入れてくる。
なんとか受けたり避けたりできているが、有効打を入れられない。
経験が圧倒的に違う。
だが、なんとか体に合った動きが分かってきた。
「そこまで!時間です。」
10分経ったらしい。
まだ足りない。
もっとトライアンドエラーを繰り返さなければ。
「ありがとうございました。」
「お疲れさん。やるなあ。この試合だけでも動きがかなり変わったぞ。」
「へへ。まだ試行錯誤中なんですよ。どんな動き方が合っているのかよく分からないので、試していこうかと思ってて。」
「熱心だなー。俺はちょっと疲れたぞ。」
「体力低下ですか?年ですね。」
「うるせー。まだ十分若いわ!」
「ソーマ君はかなり動けますね。動きは素人ですが、試合の中で最適化できていっていましたし、頭もいい。」
「いやいや、そんなに持ち上げないでくださいよ。」
「まあ、素人ですけど。」
「そうですよ!」
「はっはっは。ソーマもロダートの毒牙にかかったな。仲間だ。」
「そんな仲間いらないですー。」
「はっはっはー。そう言うなってー。仲良くやろうぜー。ははははー。」
この後も別の人と模擬戦をさせてもらった。
同年代の冒険者とも模擬戦をして、かなり充実した訓練になった。
次は槍とか使ってみようかな。




