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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
ニューゲーム開始
25/200

24 奴隷紋

市場にやってきた。

ここは屋台市場が広がるエリアだ。冒険者ギルドからも近く、町の中心部に位置している。

生活で必要なものは大体ここで揃うらしい。

ただし、高級品はしっかりした店舗に行かないと売ってはいない。

防犯的な意味もあるだろうし、品質の管理とかにも関わるんだろう。

よく分からないけど。


簡単な惣菜や野菜、果物、穀物、適当な金物、適当な古着、雑多なアクセサリー、雑多な道具、よく分からない置物、焼き鳥、串焼き、ナンみたいな食べ物と一つ銅貨1枚からの商品を扱う屋台が所狭しと並んでいた。

いや、並んでいない。

通路はあるが、ぐねぐねと細い道が辛うじてある感じで、屋台が詰め込まれているようだ。

だが、かなり活気はある。

至るところで客引きの声があがっている。

正直この国の雰囲気とはかけ離れていると思うが、こういうところがあるのはいい。

探検するのが楽しそうだ。



俺とシロは屋台市場に突入した。

とりあえず、いい匂いを撒き散らしていた近くの焼き鳥屋で串を買った。

俺には焼き鳥にしか見えなかったが、店主は焼肉と言っていた。

何の肉かは教えてくれなかったが、ジューシーな味わいで中々うまかった。

一串に肉が4つ付いていたが、多分全部違う肉だ。

きっとその日入荷した肉を適当に刺しているのだろう。

肉が違うのに焼き加減は全て絶妙だった。

どんな妙技だ。

俺にはきっと出来ない。

不器用なので。



肉串を食べながら店を見て回る。

もちろん手当たり次第に鑑定をしながらだ。

肉串は見ていない。

店主が教えてくれなかったのに、そんな無粋な真似はできない。



知るのが怖かったとも言う。





村ではゴートさんの家にあったものを使わせてもらうことが殆どだったので、道具の類の手持ちがほぼ無い状態だ。

村にいたときに作った木箱や籠、布袋や布を多少持っているだけで、鍋や皿の手持ちはない。

薬を作るのにも必要になるため、屋台でそこそこのものを買っておいた。

ちょっと凹みがあったりしているが、とりあえずは穴が空いていなければ問題ない。

しいて言えば薬を入れるための容器が問題だった。

村の人から空き容器を貰ったりして何とか工面していたが、ちゃんとした店に卸すにはちゃんとした容器を用意しないとまずいだろう。

まずいとは思うがどこで買えるか分からない。

薬を扱っている店舗に行ってみるしかないだろうな。

手持ちの薬も売れるかもしれないし。



鍋やボウルや皿や小瓶なんかを適当に買いつつ、屋台を見て回る。

その最中、いくつか変なものを見つけた。



名前:錆びた伝説の包丁

種類:包丁

等級:伝説級

品質:粗悪

説明:錆び付いて全く用をなさなくなった伝説の包丁。

数多の伝説的な料理を生み出してきたが錆びてしまった。

時の流れは伝説をも殺す。



名前:ナベのフタ

種類:盾、魔法道具

等級:希少級

品質:低

説明:ナベのフタは最強の盾である。



名前:猫の置物

種類:置物

等級:普通

品質:低

属性:闇

説明:暗闇で目が光る絶妙なポーズを決めた猫の置物。

見るものを不安にさせる効果はない。

むしろ失笑を誘う悲しみに満ちている。




どれも意味不明である。

全て1貨で投売りされていた。

猫の置物は買っていない。

面白そうだったけど、シロが敵意を剥き出しにしてしまったから、宥めるのに苦労した。

1つ目の錆び包丁は錆び落としをして研ぎなおしたら復活するんじゃないかと思って試しに買ってみた。

錆びすぎてどうにもならない可能性はあるが、1貨だし気にしない。

ただ、鑑定の説明がかっこよかったから、研ぎなおしたら説明が消えてしまうかもしれないのが懸念だ。

2つ目のフタは、フタだった。

種類が盾になっていたが、完全にフタであった。

しいて言えば持つところがしっかりした作りになっていたくらいだ。

防御力はきっと高い。最強の盾だし(笑)。

使わないけど(笑)。





色々とキョロキョロしながら見て回っていると屋台市場を抜けてしまった。

ここが真反対なのか、右なのか、左なのかは周囲を見回しても分からない。

しいて言えば薄暗かった。

なんだかディープな雰囲気だ。いやダークか?

屋台巡りでかなりの時間を消費した様で日は完全に昇りきり、少し傾いていた。

店舗の方にも行ってみようと思っていたので、大通りの方まで戻らないといけないが、どっちに行けばいいんだろう?

ふらふらと通りを歩いて進んだところで、屋台の人に聞けばよかったことに気がついたが、もう進んでしまったし、急いでいるわけでもなかったので、そのまま気の向くままに歩いてみた。

小さな町なのでその内に外壁にぶつかるだろうしな。



ふらふらと進んで行くとどうやらスラムの方に来てしまっていたことがわかった。

道端で寝ている人がいたから一目瞭然だ。

窓板が無かったり、壁が崩れているところがあったりしたのも一因だ。

基本的に町の喧騒とはかけ離れた場所で静かだった。

この雰囲気は騎士学校に似ている気がする。

スラムに似た学校ってどうかと思うが、似てしまっているから仕方が無い。

俺の主観だけどね。



「大体の位置も分かったし、戻ろうか。」

「にゃあ?」


俺はシロに意味はないが話しかけて町の中心部の方向に進もうと進行方向を変えようとした時にシロが何かに気付いた。

遅れて俺も声が聞こえることに気がついた。

スラムにも人がいるのだから声が聞こえても不思議では無いのだが、少し気になった俺たちは気配を殺して(たぶん)声のする方に近づいてみた。



建物の影から覗いた先には、商人のような男とがたいのいい山男とローブを着た魔術師風の男と見るからにスラムの住人といった風体の男の4人がいた。

スラム男は仰向けになって、寝ているのか動きは無かった。

その男の胸のあたりに魔術師男が筆で何か文字を書いていた。

あれも魔法文字のようだった。

意味的には「補助」と「契約」といったことが書かれているのが分かったので、そういうものなのだろう。

準備が出来たのか魔術師男が呪文を唱え始めた。


「××× %%% ### ●□▼ ・・・」


結構長いが高速思考スキルの恩恵で記憶力も上がっている今の俺なら何とか記憶できた。


「□□□。コントラクト。」


魔術師男が魔法を使った。

どうやら契約魔法のようで、いわゆる奴隷契約だろう。

スラム男の胸には奴隷紋と呼ばれる模様が刻まれている。



名前:スラオ

レベル:5

性別:男

年齢:45

種族:人間

職業:奴隷

属性:地

罪科:窃盗

所有者:ドーロン

説明:衰弱死寸前。



鑑定眼で確認した結果からしても職業が奴隷になっているから間違いないだろう。

魔術師男が呪文を唱える前は職業:なしだったし。

説明に衰弱死寸前とあるので、奴隷にならなくても死んでいた可能性が高いし、生き残る確率が上がったと思えばこれもありだろうか。

俺は嫌だけど。

商人風の男は奴隷商人だったようだ。

名前はまあどうでもいい。

魔術師男は契約スキルを持っていたから、魔法が使えれば契約魔法が使えるという訳ではないようだ。

使えるかは分からないが後でメモしておこう。


俺はそっとその場を後にした。

触らぬ神になんとやらだ。




「問題ないか?」

「はい大丈夫です・・・。正常に契約できました・・・。」

「ふん。これでなんとかノルマはクリアできるか。」

「そうでふね。」

「この町は小さすぎてやりにくいな。借金奴隷も少ないし潮時かもな。」

「そうでふね。」

「よし行くぞ。連れて来い。」

「そうでふね。」

「ふねふねうるさい!さっさとしろ。」

「そうで・・・ゴフッ。痛い・・・。」

「ふざけてるからだ。早くしろ!」

「へい。」



そしてその場から全ての男達が立ち去り、後には何も残ってはいなかった。


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