23 冒険者
俺の今の所持金は47貨だ。
この国、というかこの世界の貨幣単位は大体の地域で同じ単位が使われているらしい。
10刻みで銅貨、大銅貨、銀貨、金貨といった貨幣がある。
どこかで聞いたような貨幣単位だ。
深くは考えまい。
俺の今の収入源は村で作った調剤回復薬だ。
魔力を含んだ材料が必要なのと数々の調剤失敗によってあまり在庫は無いのだが、売り払えばしばらくは宿無しになることはない。
どこで売れるのかが問題ではあるが、適当な商店にでも行けば何とかなるだろう。
商品としては人気商品だろうしな。
とはいえ、この付近で薬の材料を入手できるとも限らない。
材料の薬草は魔力を含んで育ったものが必要だが、自生している薬草全体からしたら、その割合は1割にも満たない。
ぶっちゃけ探すのが大変だ。
見つかったらラッキーくらいの気でいないと正直だれる。
なので、他にも食い扶持が必要だ。
というわけで、冒険者になります。
いえーい。
なんだかファンタジーな感じだ。
ファンタジーの定番、冒険者ギルド!
わくわくするぞ。
一夜明けて俺は冒険者ギルドへ向かった。
この町の冒険者ギルドは町の中心部にある。
旅の疲れが出ていたのか、朝はのんびりとして過ごし、今は朝と昼のちょうど境い目くらいの時間だ。
ここの冒険者ギルドには酒場は併設されていなかった。
通りを挟んでちょうど向かいに酒場があった。というか数件連続して飲み屋っぽい店が軒を連ねている。
仕事終わりの冒険者を狙った店なのだろう。
後で行ってみたい。
中途半端な時間だったためか、ギルドの中にいる人は少なかった。
カウンターは3つあったが、今は1つにしか人がいない。
カウンターの他には掲示板があっちこっちにあり、チラシなのか依頼なのか色々貼ってあるのが見えた。
とりあえずはカウンターに行ってみよう。
カウンターに居たのは三角メガネが光るザ・秘書って感じのちょっとキツそうな雰囲気の人だった。
「カルポ冒険者ギルドでようこそ。どういったご用件ですか?」
予想していたよりもやさしい言葉遣いだった。
なんかすいません。
「冒険者になりたいんですけど。」
「冒険者への初回登録ですね。」
「はい。」
「じゃあ、この書類に必要事項を記入してください。字は読めますか?」
「はい、大丈夫です。」
書類には、名前、年齢、種族、その他とあった。
その他には何ができるかを好きに書いていいそうだ。
とりあえず、剣(自己流)と魔法(下級)と薬剤(低級)と書いておいた。
鑑定は内緒だ。
「はい。いいですね。身分証の提示もお願いします。」
「はい。これです。」
「仮身分証ですね。紹介者の名前もあるので問題ないですね。少し待っててくださいね。」
そう言ってお姉さんは下がっていった。
カード的な何かを作りに行ったんだろう。
わくわく。
「にゃあ?」
「晴れて冒険者かぁと思うとわくわくしてな。」
「にゃあ。」
分かっているのかいないのか分からないがシロと適当に戯れながら待っていたら、奥からお姉さんが戻ってきた。
「お待たせしました。ギルドカードを発行してきました。どうぞ。」
「おおー。ありがとうございます!」
「ソーマさんのランクは初期ランクのGになります。ランクの説明はしましょうか?」
「あ!お願いします。全然知らないので!」
「はい。
まず、ソーマさんのランクGは町中作業のみのランクです。基本的に町の中で完結する依頼しかありません。
町の外に出かけるような依頼はF以上になると受けられます。討伐系や採集系の依頼が入ってきます。
ランクアップには依頼の達成率や依頼人やギルドからの評価によってこちらからの提案型となります。
特にGからF、EからD、CからBへのランクアップ時にはそれぞれ試験があります。
ランクが上がる毎に試験の内容も変わりますが、大体は模擬試合と簡単な筆記があったりします。
Fランクに上がる時には筆記試験はありませんけど。」
「ギルドからの評価ってどんなことなんですか?」
「色々ですね。戦闘能力とか素行とか性格とかですね。レベルを開示してもらう事もありますね。」
「レベルって秘密にするものなんですか?」
「まあそうですね。基本的には言いませんし、聞きません。その人の強さを簡単に数値化出来てしまうので、それだけでは見えない部分を蔑ろにしてしまいがちになるので、ギルドの方では基本的には聞きません。ただ、依頼人からレベル開示が依頼を受ける条件になってたりすると伝えないといけないですね。あまりないですが。」
「レベルって何なんですかね?」
「詳しいことはどこの機関でも分かってないそうですよ。大まかに身体能力の強さがわかるという程度です。実際の戦闘には駆け引きや機微といった技術も大きく関わってくるのでレベルが高いのが強いとは限らなかったりするんです。レベル20の人でも油断したらゴブリンにやられてしまう事もありますからね。慢心はしない事が重要ですよ。」
「はぁー。勉強になります。」
「いえいえ。よく聞いてくれるから話しすぎちゃいましたね。ごめんさないね。」
「と、とんでもないです!こういうことを教えてくれる人とか居なかったのでためになります!お姉さんありがとうございます!」
「・・・。」
「?お姉さん?」
「ハッ!」(かわいくてちょっと飛んでしまったわ。)
「えーっと、じゃあ、今日はこれで失礼します。仕事は明日からにします。ありがとうございました。」
「え、ええ。じゃあ、またね。」
挙動がおかしくなったお姉さんを残して、俺はギルドを出た。
テンプレ的な絡まれイベントのようなことは発生しなかった。
よかった。
今日は残りの時間は、市場を見たり、店舗を覗いたりして過ごそうと思う。
とりあえずは市場へゴーだ!




