20 身分証ない
それから町に着くまでにもう二つほど村を越えたが、その道中には特に何も起きなかった。
その間、町や冒険者について色々と聞く事ができた。
これから行く町は、カルポという町で人口2000人程度のこの辺りでは大きな町だ。
この国の中でも大きい方の町で、この規模で国4番目の町だそうだ。
町には主要な施設として、町役場、冒険者ギルド、商業ギルド、市場、歓楽街などがある。
小さいがスラムもあるそうで、少し治安が悪いらしい。
他国で聞くような、殺人が絶えないとか抗争が頻発するとかはないそうだ。
せいぜい誰それの息子が喧嘩して道端で寝てたとか、家出少女が廃屋に隠れてたとかそのレベルだ。
町の規模が小さいのですぐに身バレするようだ。
なんて安全な町だ。
町の近くには2つ低ランクの迷宮があるらしい。
あるのはゴブリン迷宮レベル10程度とビースト迷宮レベル15程度らしい。
どちらも階層は浅く、最深部まで行って帰るだけなら1日で往復できる程度。
横道に逸れるとそこそこ広く、魔物が狩り尽くされるということはないらしい。
町の冒険者全てが同時に突入すれば分からないが、そんな無駄なイベントなど誰も企画しない。
狩り尽くしてもしばらくしたら、またリポップするだけだ。
迷宮が近くにあり、適度に狩りが行われているためか、町の周辺にはあまり魔物はいない。
この辺りはそもそも魔物が少ない。
先日ゴブリンの群れがいたのも珍しいのだ。
詳しいメカニズムは解明されていないが、迷宮の近くでは自然の魔物が発生しにくいと言うのはこの世界では常識だ。
迷宮が魔素を集めているからとか、瘴気を浄化しているからとか、定説はあるが本当かどうかは誰にも分からない。
調べようもない。
主要施設の場所やオススメの宿やお店を聞いていたら、遂に目的の町が見えてきた。
町は周囲を3mくらいのレンガ塀で囲っていた。
門もちゃんとあり、何箇所かに物見やぐらがあり見張りをしている兵士の姿が見えた。
この平和な町でもやぐらの上で見張りをしている兵士さんはしっかりと周りの平野や森を監視していた。
この町の人は、真面目な人が多いのかもしれない。
いやたまたまかもしれないが。
門のところでは身分証の確認もあった。
もちろん俺は持ってない。どうしよ。
と、オロオロすることは特にない。
事前に聞いていたからね。
門番の兵士さんにカリオ村から来たことを伝え、行商人さんや護衛のハンスさん達から口添えを貰った。
「おお、カリオ村から来たのか。ゴートさんは元気かい?」
「はい。元気に狩りをしてますよ。ガハハって笑いながら。」
「はは、相変わらずだなぁ。」
兵士さんは苦笑しつつ、若干懐かしそうに話していた。
ゴートさんはこの辺りで結構有名な冒険者でもあったらしい。
ゴートさんのレベルは42もあるから当然といえば当然だ。
好奇心に負けて、鑑定眼で覗き見してしまった。
ちなみに冒険者ランクはBだったらしい。これは聞いた。
肩を壊してからはギルドの依頼は基本的には受けていないと言っていた。
肩を壊してるとか、斧を振り回している姿からは想像できないのだが、以前はもっとすごかったという事だろう。
時たまこの町の冒険者や兵士だけでは手に負えない魔物が出た時に応援として呼ばれる事があったらしく、憧れている人も結構いるそうだ。
俺とシロは行商隊の人たちと別れて、門の横にある衛舎にいる。
仮身分証の発行のためだ。
さっき口添えを貰ったから特に問題がある訳ではないが、身分証の発行には鑑定による罪科確認が必要なのだ。
殺人鬼や盗賊を無闇に町に入れないためにも必要な措置だろう。
門を通らずに入られたら意味がない気がするけど。
鑑定と聞いて俺は実は内心ビクビクしていた。
俺の今のステータスはこうだ。
名前:ソーマ
レベル:11
性別:男
年齢:13歳
種族:人間(魔人)
職業:なし
属性:無
罪科:なし
称号:(無敵無双)、(挑戦王)、(竜殺し)
スキル:
鑑定Lv10 max
鑑定眼Lv8
エクストラスキル
竜殺し
ユニークスキル
1回強くてニューゲーム-使用済
高速思考
全言語理解
夢見がち
説明:
享年12歳(仮)。スキルにより復活を果たすと同時に前世の記憶が蘇える。
英雄に認められた次代の英雄候補。
魔人の血が入るも未覚醒状態。血の提供者は■■■■
種族とか称号とかスキルとか説明書きとか変な内容のオンパレードだ。
特に種族の(魔人)とか。享年12歳(仮)とか。
どうなることやら。




