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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
ニューゲーム開始
19/200

18 巣立ち

俺がこの村に辿り着いてから1年近くが経とうとしていた。

この1年で色々なことがあった。

冬の間に俺は13歳になった。

ここ1年で身長も伸びて、以前の俺を知っている人間でも一見して分からないくらい変わったと思う。

つまりそろそろ村を旅立ってもいいのかもしれない。

戻ろうと思えばすぐ来れるしね。



春、塩の買い付けにいつもの行商人がやってきた。

その行商と交渉して、近くの町まで着いて行けることになった。

俺は1年近くお世話になってしまったゴートさんと村のみんなに盛大に見送られた。


ありがとう。忘れないよ。

また帰ってくるよ。


「言って来い。つらい事があったらいつでも帰って来ていいからな!男を上げて来い!ガハハ」

「はい・・・!」


最後まで豪快だったゴートさんに別れを告げ、俺は行商の荷馬車に便乗させてもらいカリオの村を旅立った。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




俺たちは今、カリオ村から1つ村を越えて町への道を進んでいた。

今回乗せてもらえた行商には前回とは違う護衛の人が付いていた。

パーティ蒼穹の双牙の剣士ハンスさん、槍士ロダートさん、弓士コルンさんだ。

この人たちは男2人女1人の3人パーティで三角関係かと思ったら、それぞれ町にいい人が別でいるらしい。

完全に仕事仲間だそうだ。

どろどろじゃなかった。

3人は冒険者ギルドに登録していて、たまたま護衛依頼を受けたらしい。

冒険者と言っても旅をしているわけでは無く、町の生まれだそうだ。


「ソーマくんはいくつなの?」

「この前13歳になりました。」


コルンさんの質問に答えるとハンスさんとロダートさんも加わってきた。


「その年で一人旅かー。俺は何してたかなー。」

「ハンス君はヘレナさんにいたずらする事しか考えてなかったのではないですかね。」

「ぶっ!!」

「ハンスきたないよー。」

「文句ならロダートに言えよ!ってか、いたずらなんてしてねーよ。」

「ヘレナさんって言うのはハンスのお嫁さんなのよ。汚いハンスにはもったいないくらいいいこでね。私の幼馴染でもあるの。」

「そうでしたか?まあいたずらは言い過ぎかもしれませんが、ストーカー紛いではありましたよね。お使い中のヘレナさんの後ろをコソコソつけていたり。」

「あー、あったねーそんなこともー。」

「っち、ちげーよ。あ、あれは、そう、護衛だよ護衛。悪漢に襲われないように影ながらだな、」

「それをストーカーと呼ぶのでは?」


毒舌のロダートさん、いじられ役のハンスさん、マイペースなコルンさん。

いいパーティだなと思った。


「みなさんは冒険者になってながいんですか?」

「そうだよー。」

「オレなんかは10歳で登録したんだよ。」

「え。」

「登録自体は10歳より前からできるんだ。とはいえ子供に町の外で魔物狩りをしろなんて依頼は来ないし、受けさせて貰えなかったけどな。」

「そりゃそうよ。どんなに低レベルの魔物でも戦いの心得のない子供が勝てるもんじゃないし。」

「ただ例年そういう聞き分けのいい子供ばかりではないので、緊急の救助依頼とか捜索依頼が出されたりするのも恒例となっていたりしますよ。」

「ハンスもそうだったよねー。」

「あの頃は若かったんだよ。」

「ははは。」


またハンスさんの失敗談だったようだ。


「ギルドの受付さんに聞けば詳しいことも分かるだろうけど、冒険者ギルドの冒険者にはランクがあって、最初は町の中かホントに周辺だけで完結するような依頼だけ受けられるのよ。だから町の子供たちは小さな時は町中でお手伝いがてらに依頼を受けて、おこづかいを稼いだり、社会勉強をしたりとかしているの。」

「危険が伴ったり、過重労働になりそうな依頼はランク相当であっても受けられないようにしていますしね。」

「へー、そうなんですか。」


まんま日雇いの職業斡旋所だな。子供にも優しいところは日本とは違うけど。

いや働かなくていいから、日本の方が優しいか?


「にゃ?」

「まあ小さい時は危険とかの判断がつかないから、『魔物狩りとかしたい』って思ってたりしたけどな。今はなるべく危険なことからは離れたいけ・・・」

「・・・?ハンスさん、どうし、、、」

「どっち?」


とコルンさんが短くハンスさんに聞いた時、俺も事態に気がついた。

シロはハンスさんより早く気がついていたみたいだ。

野生の勘か。

そうそうシロも着いて来てるよ。

蛇足だね。


「前方だ。馬車を止めてくれ!!」


ハンスさんは素早く御者に指示を出して飛び出した。

ロダートさんは後ろに続いていた後続の荷馬車に停止の指示を出していった。

荷台に残っていてもいいと言われたが、俺もコルンさんと一緒に飛び出した。




行商隊に迫っていたのはゴブリンの群れだった。

低い身長、鋭い爪、長い鼻と耳と小さい角を生やした頭を持つ子鬼だ。

レベルは8~10。一人前の冒険者にとっては朝飯前な敵だが、一般人からしたらかなり脅威なレベルだ。

この低レベル帯でレベルが1上がると危険度は跳ね上がる。

一般人のレベルが5くらいであることからするとレベル8以上が10匹以上いるのはかなりの脅威だろう。



「ゴブリンが17匹だと!?」


剣を抜きながらハンスさんが叫んだ。


「このあたりで10匹以上の群れが出るなんて珍しいね。」

「冬の間に増えたのではないでしょうか。冬間は討伐数が減少するので春先は増える傾向がありますし。」

「そうかもな。ソーマは下がってろよ!」

「は、はい!」「にゃー。」

「ふふふ。大丈夫よ。私たちにまっかせなさーい!」

「よし!いくぞ!」


はじめて見たゴブリンに興奮しつつ、どもりながらも返事をしたら緊張してると思われてしまった。

冷静に、冷静に。




オラ、ワクワクすっぞ。

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