17 迎春
長い冬を越えて、カリオ村にも春がやってきた。
冬明けの時期にあった岩塩坑道での一件以来、あの猫は俺と一緒に暮らしている。
あれからひと月くらい経ったが、あまり変わってはいない。
いや、灰色だと思っていた毛色は灰をかぶっていただけらしく、真っ白だった。
ただの勘違いだ。
小さいがちょこちょこ動き回り元気だ。
村の子供たちと遊んだりしており、どうやら言葉を察するくらいには賢いようだ。
岩塩の採掘は元々人では十分なくらいの採掘量でよかったので、俺が加わったおかげか次の回収までには十分前倒しで終われた。
今は畑を耕したり、種まきの準備をしたりと言ったのんびりした時期だ。
動物が動き出すので狩りにもいい。
俺も山で山菜や薬草類の新芽が出始めているので採集をしていた。
ついでにシロをジェリーの迷宮に放り込んでジェリーを倒させてみた。
陽炎スキルは炎+幻術のスキルらしくまだ幻術は上手く使えないが小さな炎を出すことは出来た。
それもあってシロでもジェリーを危なげなく倒せていた。
一緒にいたら称号の取得条件を満たせないので置いていったのだが、戻ってみるとちゃんと取得していた。
驚くべきは、称号を取得した後は入り口で寝て待っていたらしいことだ。
俺の言葉を完全に理解している。
すごいぞシロ!
あ、シロというのはファントムキャットの子猫の名前だよ。
丸い犬みたいな名前だけど猫です。白い猫です。
「にゃー。」
うん。かわいい。
そういえば忘れていたが、ウィンドウみたいなのが表示された理由が分かった。
ストレージリングの中に入れた覚えの無いものが入っていた。
「[貪欲]の瘴珠」というアイテムだ。
故ファントムキャットを倒した時に入手していたらしい。
すっかり忘れていたが、ストレージリングの機能にドロップアイテム収集と言うものがあった。
魔物や動物を倒すとたまにアイテムを収集していたらしい。
収集できる条件は不明で、ゲーム等でよくある確率なのか、持っているものが収集できるのか。
リングの中を確認したら俺が入れたもの以外にも別区画に分けられてこれまで収集したものが入っていた。
結構な量があったが毛皮とか爪とか肝とかの素材ばかりで大したものは無かったが、[貪欲]の瘴珠だけが異彩を放っていた。
レアアイテムだけポップアップが出る仕様なのかもしれない。
名前:[貪欲]の瘴珠
種類:瘴珠
等級:伝説級
品質:普通
属性:無
説明:称号[貪欲]が込められた大罪系下位の瘴珠。
割ると称号[貪欲]を取得でき、スキル貪欲を取得できる。
心が貪欲に支配される。
なんだか禍々しい色の玉で、鑑定結果も頂けない内容だった。
ストレージに隔離区画を作って死蔵しておいた。
触らぬ神に祟りなしである。くわばらくわばら。
区画区画といっているが、ストレージリングはかなりぶっ壊れ性能なアイテムだった。
ゲームのようなウィンドウでストレージ内のものを表示して分類することが出来る。
並び替えて見易くしたり、バラバラに格納していたものを一纏めにしたりと色々と出来た。
この他にも分解機能というのがある。
その名の通り、格納した物を分解できる機能だった。
倒した動物とかを入れたら、血抜きから、皮剥ぎ、肉の切り分けまで全部やってくれる。
当初は気付かなかったのだが、水だけをストレージに格納することは出来ないのだが、桶に入れた水を格納して、その後分解したら、桶と水を分けることが出来た。
分解というか分ける機能だった。
清水の保存のために桶やらに困っていたのがバカみたいだ。
おまけにストレージの中で水と桶をくっ付けて桶に水を入れた状態で出すことも出来た。
便利過ぎるぞストレージリング。




