12 新魔法
行商との出会いから魔法に関する発見がいくつもあった。
特にマジックアイテムにも魔法の詠唱で使う魔法語の魔法語列が見つかった。
火の下級魔法であるファイアボールの詠唱とウォーターボールへの改造も比較的簡単にできたため、これから新しい魔法の開発をしていきたいと考えている。
コードを組み合わせるだけで作れるとは思えないため、時間はかかるだろうが、少しずつ進めていくつもりだ。
まずはウインドボールを作る。
おそらくウォーターボールと同じ要領で作れるはずだ。
その後はウインドボールを改造して威力や精度を上げる改造だ。
風属性を選んだのは、周囲への影響が少ないことと目に見えにくいからだ。
火や水の場合、山火事の心配とか素材の破損とかの心配をしなければならないが、風の場合はその影響が少ない。
全く無いわけではないが火や水よりはましだろう。
本当は風の上位属性である雷属性を使ってみたいのだが、雷には初級魔法が無いので魔法語を知らない。
どこかで魔術書でも入手しないと取得は難しいだろうな。
と考えているうちにウインドボールの詠唱の完成だ。
早速試してみる。
「◎◎◎ ◆◆◆ ▼▼▼ ・・・ ウインドボール!」
目の前に詠唱と共にコードが浮かび上がり、風の玉を生み出した。
飛び出した風が木の幹にあたり、木の幹を少し凹ませて破裂した。
「ふむ。中々の威力か?」
次は詠唱時に注ぎ込む魔力を増やしてみよう。
同じように詠唱して、ウインドボールを放ち、先程とは別の木にぶち当てて様子を見た。
どうやら魔力を増やせば、風の玉を大きく出来るようだ。
大きくなった風の玉が当たった木は先程よりも広範囲が凹んでいたが、威力自体はそれほど変わったようには見えない。
単純に大きくなって範囲が広がるという認識でいいのかもしれない。
次は威力を高めるために魔法道具から得た魔力の固定と収束を取り入れたウインドボール改を作ってやってみた。
結果は不発だった。
やはり単純に組み合わせるだけでは魔法は作れないらしい。
何度か修正を加えながら、試してみたらなんとか発動できるところまで改造できた。
が、固定関係のコードがまずかったのか、小さくなった風の玉はゆっくりと動いていき、木の幹に当たって破裂した。
木の方は全然凹んでいなかったから、威力が下がったらしい。
そりゃそうか。
固定関係のコードを抜いて、また何度か試してみた。
小さくなった風の玉は最初のウインドボールと同じ速度で飛んでいき、木の幹にめり込んでいた。
貫通はしていないが一撃の威力を明らかに上げることができたようだ。
一方で問題も出てきた。
改造のためにコードを追加して修正していった結果、消費魔力がかなり増えてしまった。
今は試作だとしてももっと低コストにしないと実戦では使えないだろう。
今も魔力の使いすぎで、ちょっとクラクラしている。
もっと精度や威力を上げて、消費魔力と詠唱量を抑えられるように考えよう。
そういえば、魔力を使い切ったら魔力が増えるとかってあるんだろうか?
よくあるそういう話だと使い切った方が魔力量の伸びがいいとかあったけど、この世界でも当てはまるのだろうか?
その辺りはサクセスノートには書いてなかったから分かっていない。
魔力を増やせる場所があるって書いてあったりはしたが、すぐ行ける様な場所でもないし、地道にやるしかないのだろうか?
新魔法も回復薬もコツコツ進めていこう。
まだしばらくはこの村でやっかいになるつもりでいる。
離れた国とは言え、街に行ったら何があるか分からない。
俺はいわゆる脱走兵にあたる。
脱走兵は、見つかったら厳罰だ。つまり死刑か奴隷行きだ。
俺なんかのために手配なんてしないだろうけど、あの国は何をするか分かったもんじゃない。
成長期なので髪の色が変わったり、体格も成長してきている。
元々は黒かった髪の色が段々と抜けてきているような気がする。
いや、成長期って髪の色が変わったりするか?
この年で?
幼児に比べたら色が濃くなるとかはあった気がするが、12歳で変わるってどうなんだ?
やっぱり種族か?
種族なのか?
どうなんだ?
まあ、いいか。
そういう訳で、もうちょっと経ってから旅立とうと思ってる。
冬を越えてからかな。




