119 魔力剣の実演
「ではソーマ殿!約束の物を!さあ!」
「あ、は、はい。」
サンドイッチを食べ終わったタイミングを見計らって、ヴァルチャー隊長が、勢いよく迫って来た。
約束の物とは、そう、魔力剣のことだ。
まあ約束した事なので軽くデモンストレーションでもしてあげよう。
「じゃあやりますけど、どうしようかな?」
「あの石とかどうですか?」
「ん?ああ。いいかもね。じゃあ」
「取ってきますね!」
等身大くらいある石、と言うか岩に向おうとしたらイチが先に駆け出した。
まあいいか。
駆け出したイチを見守っているとボコッンとスゴイ音が鳴り響き、イチの10倍くらいの巨大な岩を持ち上げたイチがいた。
どうやら地表に見えていたのは一部だったようだ。そりゃそうか。
というかスゴイ絵面だな。
小さな少女が巨大な岩を持ち上げて向かってくる図なんて、どんなホラーだよ。
現実だけど。
「イチー!持ってこなくていいからそのまま放っといてー!」
「はーい!」
俺の言葉をそのまま実行したイチはあろうことか、こちらに向かって巨大な岩を投げつけて来た。
俺の意図を完全に誤認している。
「は!?」
「なにー!?」
「に、逃げっ!!」
「え?」
周囲がどよめき、呆然とする中、俺は思う。
「置いといて」と言うべきだったな。
やってしまったものは仕方ない。
仕方ないので片付けてしまおう。
シュン
「へ?」
「は?」
「え?」
「き、消えた!?」
周囲が輪をかけて呆然とした。
まあ、突然巨大な岩が消えたら驚きもするだろうけど、似たような事は既にやってるんだけどなぁ。
答えは簡単、エナジーウィップとストレージリングのコンボで、格納しただけだ。
ストレージリングに格納する時には特にエフェクトも無く、シュンっと消えてしまうので分かりにくいと言えばそうなのだが。
取り敢えず、少しだけ離れた場所に岩を出し直す。
これならストックしてある岩で良かったんじゃないかと思わなくも無いが、後の祭りってやつだ。え?違う?
まあどうでもいいか。
「今度は出たー!?」
「うわっ!」
「わー。」
「え?」
リアクションが初めから変わっていない人がいるが気にしない。
「これを斬るわけだな?」
「あ、はい。分かりやすいかなと思うので。」
「なるほど。まあまあだな。」
周囲が驚く中で平常運転が1名。
ヴァルチャー隊長だ。
「いやいやいやいや。何がまあまあなんですか!?こんな岩斬れる訳無いじゃないですか!」
「ん?斬れるぞ?」
「はい?」
「線を見極めて、それをなぞれば名剣を使えば何とか斬れる。俺も過去に一度だけ斬った。」
「はい?・・・ナル。隊長が壊れたぞ?」
「ルーク。大丈夫だ。隊長はいつもこんな感じだ。」
なんかアットホームな軍隊?だな。
軍隊じゃなくて私兵かな?
「ともあれ、今回はそこまでの技巧は必要ないですよ。」
そう言って俺は柄だけの魔力剣を懐から取り出す。
魔力剣は見た目は柄だけしかないが、その分その柄にはドーラこだわりの装飾が具わっている。
シンプルでいい、といったのだが、最低限は必要だとの意見で任せたら、非常に凝った装飾を施された。
にも関わらず、機能性も損なっておらず、握りやすいときた。
もう何も言えなかった。
「ほう!それが!」
「はい。魔法道具の魔力剣です。」
「素晴らしい装飾ですね。」
「製作者のこだわりなんですよ。シンプルでも良かったんですけど、これでもまだまだだって言ってました。」
「そうなのですか。でも素晴らしいです。特に柄頭のディティールなんて繊細で美しいです。」
「そ、そうですか。ありがとうございます。」
「そんな事より切れ味はどうなんだ。」
「隊長・・・、そんなことよりって、あんた。」
「うむ?何か問題でも?」
「あははは・・・。まあ、じゃあやってみますね。」
ヴァルチャー隊長に急かされるままに岩に向かう。
いつもの様に魔力剣に魔力を送り、刃を形成。
周囲の安全を確認してから、さささっと振る。
最後に魔力剣の固定を解除して終了だ。
一拍遅れて、岩がズレて崩壊していく。
今の所、魔力剣は直線で固定しているので、動かなければ一方向からしか斬れない。
三角柱を横倒しにしたような形になったが、この岩使い道はあるかな?




