11 魔法道具
魔法の改造は、まだまだ先のことと思っていた矢先、俺はまた新たな発見をした。
魔法ファイアボールの習得と同じく行商に来ていた商品ではなく、行商人が持っていた道具を見せてもらったのだ。
俺は行商人が持ち込んでいた薬や道具を熱心に見ていた。
これが自分の食い扶持になるかもしれなかったから結構必死な顔をして見ていたらしい。
自分では気づかないものだ。
そんな時、行商人の一人が声をかけてくれた。
「坊主、えらい熱心だな。そんな珍しいもんはないだろうに。」
「ああいえ、この村では作られていないものですし、珍しいですよ。持ち合せが無いので買えないのが心苦しいんですけどね。お邪魔でしたか?」
「ああ、まあこの村では買う人間は少ないから見てる分には問題ないがな。」
「ありがとうございます。」
「そうだな、、、坊主、珍しいもの見てみるか?」
「?なんです?見たいです!」
「ふっふっふー、ともったいぶる物でもないけどな。これだ。」
店員が見せてくれたのは魔法のランプだった。
いわゆる魔法道具だ。
魔石から魔力を取り込み、明かりをつけるマジックアイテムだ。
大きな町に行けば結構ありふれたものだが、この村では珍しい。
「おおー、これは魔法のランプですか?はじめて見ました!」
ウソである。
話を合わせるのは大事だよね。
「そうだ。魔法のランプだ。ランプ自体は町に行けば結構ありふれてるんだが、こいつはその中でも最新でな。普通魔石は魔力が無くなったら交換して使うんだが、こいつは魔力を補充できるようになってるんだ。」
「補充、、、?」
「そうだ。街の錬金術師が開発中の試作品だから、補充するのに時間はかかるし、魔力も多くいるが、新たに魔石を購入しなくてもいい画期的なものだ。」
「それはすごいですね。魔石は消耗品って聞いたことがあったんですけど、ずっと使えるならすごいですね。」
「まあこれはまだ1分光らせるのに10分くらい魔力補充しなきゃならないから売り物にはならないがな。」
と言って店員さんはその魔法のランプを見せてくれた。
俺も面白そうだと見てみたのだが、驚いた。
魔法のランプの内側に、魔法語でコードが刻まれていたのだ。
真鍮のように見える金属板にコードが刻まれていてほんのり光を放っていた。
そのコードも読み取ることが出来た。
コードは初級魔法の「ライティング」を基本として、魔石から魔力を引き出すコードと魔石に魔力を補充するコードが刻まれていた。
これが示す可能性は、俺が持っているマジックアイテムからもコードを読み取れる可能性があるということだ。
これにより一気に俺の持っているコードが増え、できることが増える。
新たな魔法が作れそうだし、魔法道具用のコードも作れそうだった。
「そんな驚かれると見せたかいがあるな。」
「はい。珍しいです。すごいですね。」
「まあ、暇つぶしにはなるしな。ハハ。」
「でも完成したらすごいことになりそうですね。」
「まあな。」
「いいもの見せていただいてありがとうございました。」
「いやいや。これも暇つぶしだよ。そんな丁寧にお礼を言われるほどのことでないからな。」
俺は適当にお茶を濁しながら、お礼を言ってその場を後にしたのだった。
俺はとりあえず先ほど見たコードをメモしておくことにした。
メモに使っているのは英雄さんの残した手記に残っていた白紙ページだ。
サクセスノートと名づけた。
なんだか成功しそうだ。
メモをしつつ考えていることは、ルームで見つけたマジックアイテムのことだ。
ルームにもいくつかマジックアイテムがあったし、ストレージに回収したものもある。
あれが解析できれば、一気に魔法語のラインナップを増やすことができるだろうと考えていた。
手持ちのマジックアイテムは、ストレージリング、旅人の道標、魔法のしゃもじ、扇風機の4つだ。
あとはルームにマジックウェアハウスがあったはず。
調べてないけど、机や布団なんかももしかしたらマジックアイテムかもしれない。
今から調べるのが楽しみだ。
調べた結果だが、まず机や布団なんかはマジックアイテムでは無く普通のものだった。
家具が特別なのでは無く、ルーム全体に魔法がかかっていたため、ルームの状態が良かったみたいだ。
鑑定によるとルームにある家具や道具に対して状態保存の魔法がかかるようになっているらしい。
どこかにコードがあるのだろうが、どこにあるのかは分からなかった。
生物には無効になるらしく、骨が残っていたのは生物では無くなったかららしい。
肉の部分は生物判定だったようだ。何の参考にもならないが。
コードが発見できなかったものがもう1つあった。
マジックウェアハウスだ。
扉が壁に固定されていて、そこに状態保存の魔法がかかっているため、動かせなくなっていた。
状態保存の魔法の無効方法が分からないので、これも調べようが無かった。
少なくとも見える範囲には無かった。
更にストレージリングと旅人の道標だが、何かコードらしきものが刻まれているのは分かるのだが、何が書かれているのか物理的に見えなかった。
超微細加工が施されているのだと予想しているが、顕微鏡でもないと確認のしようがなく断念せざるを得なかった。
確認できたらアイテムの複製も夢ではなかったのに残念だ。
結局、解析できそうなのは魔法のしゃもじと扇風機だけだ。
これだけでも役に立ちそうではある。
魔法のしゃもじは魔力を込めると念動力でしゃもじを形作り、大きさは自由自在に変えられるという代物だ。
使ってみると大きさは供給する魔力の量で調整することが分かった。
コードをを解析してみると、魔力の固定と収束、位置関係のコードが見られた。
魔力は使用者が供給する方式で魔力を伝えるコードは見られなかった。
おもしろいのは魔力を固定して形を作るところだ。柄の部分に対して相対的な位置に無属性の魔力を固定していた。
魔力で擬似的な物質を作っているようなものなので、しゃもじの形状でもこん棒のような使い方ができる。
質量が無いので振るった時の遠心力のみとなるため攻撃力は低いだろうが、見えない武器での攻撃はおもしろい。
魔法道具の作成方法を調べられないかな。
もう1つの扇風機の方は、形はそのまま扇風機だった。
風を動かす魔法があるせいでこの世界では効率が悪いものになっている。
だが、回転と方向に関するコードと、魔力の引き出しと伝達、分配、強弱調整に関するコードがあった。
鑑定的には品質は悪いが、コード的にはものすごい価値があるアイテムだった。
魔力の操作関係のコードがかなり充実していて、無駄な魔法語も少なそうに見えた。
護衛の人が唱えたファイアボールや行商の店員さんに見せてもらったランプのコードには初心者の俺から見ても無駄な魔法語がちらほら見られていた。
無駄を省けばもう少し良くなりそうな気がしたが、ルームに残されていたアイテムはその無駄が無いように俺からは見えた。
おそらくこのアイテムの作成者は趣味か何かで作ったのだろうが、俺にとっては超お宝だ。
超感謝である。




