116 驚愕
短めですいません。
◇◆◇
白光が落ち着くと目の前にはオークの姿は無く、代わりにこの前の冒険者が立っていた。
何か声をかけられたかよく覚えていない。
ただ、
カッコいい
と思った。
私を見て着ていたマントを掛けてくれた。
今の自分の状態を思い出し、一気に恥ずかしくなる。
彼はおどけた調子で私に声をかけてきた。
どうしましょう。
勢いでやってしまったけれど、後悔はしていない。
恥ずかしいけれど。
思えば自分からキスをしたことなどこれまで無かった。
はじめての経験。
自分で言ったことだけれど、残りって何でしょう?
少し間の抜けた声を上げた後、彼は笑って仲間の下へと去って行った。
その後は陳腐だけれど、すごいの一言だった。
彼は次々にオーク達を薙ぎ倒し、彼が手を向けた先に居たオークも血を吹き出しながら倒れた。
私達が必死で生き残ろうとしていた敵をものの数分で討ち果たした。
実際にかかった時間を測ったわけではないが、早いことだけは分かる。
凄まじい強さだった。
その光景に私は見とれているしかなかった。
「お嬢様!ご無事ですか!?」
「ナル・・・。ええ、大丈夫よ。危ない所だったけれど。ほら。」
「出さなくていいです!!ルーク!見るな!」
「イテッ!何すんだよ!」
「お嬢様のことをジロジロ見るからだ!」
「見てねぇよ!今来たとこだっつーの。」
「ナル、ルーク、ありがとう。」
「いや、何の役にも立たなくてすまねぇ。」
「そ、そうだ!オーク共に阻まれて、くっ!」
「そんなこと無いわ。あなた達がいなかったらもっと早くに私は犯されていた。だから、ありがとう。」
「お嬢様・・・。」
「お嬢・・・。」
ナルとルークが落ち込み、沈んでいる所にヴァルチャー隊長が生き残りをまとめてやって来た。
「お嬢様、無事で何よりです。」
「ヴァルチャー、あなたもね。他のみんなは?」
「何とか生きてはいます。ですが、大きな傷を負ったものは助けられないでしょう。」
「そう。」
オークに襲われる前、私達を含めて19人は居たけれど、いったいどれだけが生きて町に帰れるか。
すべて私の失敗。
もっと私に力があれば。
もっと装備を整えられていれば。
もっと資金があれば。
もっと計画をしっかりとしていれば。
現実的な課題が私に重くのしかかってくる。
資金をどうにかする為の遠征だったのに、と助かったばかりなのに後悔ばかりが募る。
あ、そうだ。お礼をしなければ。
せめて義には礼をもって報いなければ。
見ると助けてくれた子たちは他の兵士達の手当を手伝ってくれていた。
ここにある物資では応急処置すらままならない。
あそこの兵士など深い傷を負ってしまっている。
血が止め処なく流れ出て、いない?あれ?
「いたいのいたいのとんでいけ~。」
何だか気の抜けるかけ声と共に女の子が何かを振りまく。
すると重傷を負った者の傷がみるみる内に治癒していく。
「ポーション!?しかも中級以上!?」
思わず声が漏れてしまった。
目線をずらせば同じ様な見た目をした男の子も別の所でポーションを振りかけていた。
しかも1本や2本では無い。
ある者には直接飲ませ、ある者には振りかける。
それも無造作に。
いったいどれだけのお金が必要になるのか。
中級1本当たりが金貨1枚は下らない。
それを、それを・・・!
私は愕然とするしか無かった。




