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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
トリスタ編
106/200

104 領主の娘

時間は少し巻き戻る---



「やめなさい!」


私は自らの体を子供たちの前に滑り込ませて男たちに立ち塞がる。

最近このような輩が増えている。

何とか取り締まらないと。

と、考えつつ男たちを睨み付ける。


「なんだぁ?てめえ?関係ねえやつはしゃしゃり出てきてんじゃねぇよ!」

「関係なくはないわ!」

「ああん!?」

「おぃ。こいつ領主の娘じゃねぇか?」

「あぁん?領主だぁ?・・・やべぇのか?」


どうやらこの人たちの頭にはなにも入っていないらしい。

めんどう事を起こさないで欲しいわ。


「この子達は町の孤児院の子達よ。孤児院の子は領主の保護下にあるのよ。その子達に言いがかりをつけて嚇すということがどういうことか、その足りない頭でよーく考えなさい!」

「うるせー!!突然現われて好き勝手言いやがって!こちとらお仕事だ!俺らの縄張りで商売してんだから、場所代支払うのは当然だろ?なぁお前ら!」

「「そうだそうだ!」」


男の後ろから別の男達が賛同するように囃し立ててくる。

どうやらこの人達はみかじめ料を要求しているようだが、個人の私有地でもない限り、市場以外で場所代がかかる場所なんてない。

要は言いがかりだ。


「あなた達、どこで売っていたの?」

「え、えっと、あっちの市場の近くのパン屋さんの前・・・。」

「ああ。ロールパンが美味しいお店ね。余ったパンは貰えた?」

「うん!」

「そう。よかったわね。」

「うん!」

「で、あなた達、お家はどこかしら?どこに住んでいるの?路上?」

「ああん?バカにしてんのか!?」

「そうではないのだけれど、どこの場所代を請求しているのかしら?と思って。パン屋さんの前はあなた達の土地ではないわ。どちらかと言えばパン屋さんの土地ね。で?」

「ごちゃごちゃうるせぇ!こっちが下手に出てりゃあいい気になりやがって!!オイ!囲め!!」

「いい気になっているのはどちらかしらね。」


少し指摘しただけでいきり立つなんて。最近増えているわね。困ったものだわ。

男たちは一斉に動きだし、バラバラな動きで私を囲むように移動していった。

私は護身用に持ち歩いている感電杖を抜き、前に出る。

私が前に出るとは考えていなかった男たちは一瞬動きを止めた。

戦闘中に一瞬でも動きが止まるのは命取りだ。

私は嫌と言うほどにわかっているが、男たちは分かっていないようだ。

一息に近付き、感電杖を突きつける。


「あばばっ!!」


突き付けた男は変な声を上げて倒れた。まずは一人。


「な、なに!?」


驚いた男たちを余所に更に別の男に接近して一気に突く。


「あばばっ!!」


また変な声を上げて倒れた男を放置して別の男に突撃する。

4人が同様に倒れると、流石に体勢を整えた男たちが拙い連携で囲み込もうと躍起になるが、その動きもまるで素人だ。次々と倒していく。既に作業だった。


「ふぅ。」


頭と思われる男も同様に倒し、辺りを見回して一息ついた。


「終わりかしらね。」

「そうだね。」


ドサッ


自らの確認の意味で呟いたはずの言葉に返事があった。

それと同時に建物の影から見知った男が見知らぬ男を引き摺って出てきた。

あら?なぜここに?まさかお仲間?


「一人で相対するには無理があったんじゃないですか?」

「・・・そちらは?」

「こいつらの仲間みたいですね。建物の影にまだ10人くらい倒れてますよ。こいつはちょっと逃がしたら不味そうだったから、連れてきたんですけど。レベル22の職業暗殺者で、人攫いもやってるみたいですね。」

「え!?・・・」


話が本当なら私では対応しきれなかったかもしれない。職業に暗殺者が付くなんてプロ以外にあり得ない。


「腕と脚の関節を外してあるから、逃げられないとは思うけど、兵士さんに引き渡すまでは付き合いますよ。」


「な!?」


見たところ傷を負っているような様子もない。

つまりはレベル22の暗殺者を余裕で圧倒できるだけの実力があるということに他ならない。


「あ、えっと。だからもう大丈夫ですよ。えっと。」


私が目の前の男たちの実力に驚き、固まっていると冒険者の男は慌てたように言葉を続けていた。

どうやら勘違いをさせてしまったようだ。

実力の話の真偽は置いておいても、状況から考えて私が助けられたのは間違いない。

これで何もしなかったら領主の沽券に関わる。たしか、


「たしか、冒険者のソーマさん、でしたよね?」

「!は、はい。そうであります!」

「?」

「あ、いや、そうです。」


頭をかきながら言い直したソーマさんに失礼ながら少しかわいいと思ってしまった。

そう思ったことは滲ませず、話を続ける。


「直に兵たちも騒ぎを聞きつけて来るでしょう。それまでお願いできますか?」

「あ、はい。それはもちろん。」

「ありがとう。それと、今回の件のお礼をしないといけません。また後日、何時でもいいので我が家にいらしてくださいな。招待させて下さい。」

「え、ええ?」

「わかりましたか?」

「は、はい!」


お礼の約束を取り付けている間に手配していた兵たちがやって来て倒れている男たちを捕まえて連れていく。私は子供たちを園に送ってから向かうとしよう。


「じゃあ、また後日。楽しみにしていますね。」

「はい。」


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