102 サーシャ
商人たちが部屋から退出したのを確認してから始める。
「兄貴・・・。」
「その娘をそこのソファに寝かせてくれ。」
「うん!」
「シロ。」
「にゃん。」
ゼンに女の子を運ぶように指示を出して、俺は少し準備をする。
「・・・サイレンスウォール。」
俺の詠唱が完成すると同時に光が舞い、部屋の中に風属性の壁を作る。
練成銃の開発の中で作った消音の魔法と炎の壁を作り出すファイアウォールを組み合わせて作った消音のための壁だ。
まあまあ魔力を食う。
サイレンスウォールを展開して、ストレージリングからポーションを取り出す。
現状では下級のポーション類しか作れないが高品質な材料とこれでもかと魔力を充填して品質は最高品質のものだ。
最高品質のポーションの在庫はあまりないが出し惜しみする場面でもないので大判振る舞いだ。
念のため魔力ポーションと解毒ポーションも出してソファーに近付く。
「兄貴。大丈夫かな?」
「できることはやるさ。サーシャ。聞こえるか?薬だ。これを飲んでくれ。ゼン、飲ませてあげてくれ。」
「うん。」
女の子ことサーシャは頷くこともできず、すでに意識が朦朧としていそうだった。
俺は回復魔法を唱える。
「●●● ○○○ □□□ ・・・ アクアヒーリング!」
呪文を唱えると胸に入れていたスフィアを通して光が生まれる。
生まれた光が文字を形作り、コードを描いていく。
光のコードがサーシャを包み、アクティブコマンドを唱えると青い光がサーシャに降り注ぎ、淡く光る。
俺は更に胸元に入れている神青球スフィアに魔力を注ぎ込み、青い光を生み出していく。
アクアヒーリングは、下級回復魔法アクアヒールを追加魔力補充ができるようにした強化版だ。
素の効果を上げるだけでなく、魔力を込めれば込めるだけ効果が上がるように工夫した。
ついでに魔力も回復する優れものだ。
サーシャに刻まれた傷がみるみる内に塞がり、傷跡も消えていく。
呼吸も落ち着いてきたようだ。
背中の翼は相変わらず片方が欠けた状態なのが悔やまれる。
流石にどれだけ魔力を込めてもアクアヒールでは体の欠損を再生させることはできない。
くっ付けるだけならできるだろうが、生やすのは無理みたいだ。
今のところ方法は無いがその内、見つけだそう。
名前:サーシャ
レベル:6
性別:女
年齢:10歳
種族:翼人
職業:奴隷
属性:光
所有者:ソーマ
罪科:なし
称号:なし
スキル:
ユニークスキル
飛翔(不能)
説明:翼人族の少女。
山間の小さな村で薬師の母と暮らしていたが、奴隷狩りに合って奴隷落ち。
暴力嗜好を持つ前主人によって片翼を損なわれ、空を奪われる。
特徴:
身長:122cm 体重:27kg
B:60 W:50 H:67
スカイブルーの髪で胸のあたりまでの長さ
濃青の瞳
白い翼があるが、片翼。片方は欠損。
誕生日:11月(真冬)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夢を見ていた
昔の夢だ
お母さんと一緒に山に入って、薬草を採っていた
あれ?
お母さん?
どこ?
どこに行ったの?
置いて行かないで
一人にしないで
『ヒヒャヒャヒャ!こりゃいいぞ!』
え?
なに?
だれ?
『大人しくしろ!!』
い、いや!
はなして!
いや!
『ほう。中々いいじゃないか。これを貰おうか。』
え?
だれ?
どこに行くの?
『さあ。お前はどんな鳴き声を上げるかな?』ニィ
え?
なに?
なにするの?
やだ
いたいよ
いやだ
いたい
痛い
いたい
痛いいたいいたいいたい痛いいたいいたいいたい痛いいたいいたいいたい痛いいたいいたいいたい痛いいたいいたいいたい痛いいたいいたいいたい・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
だれ?
どこ?
なに?
あたたかい
ねむいよ
・・・
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「兄貴。大丈夫なんだよな?」
「たぶん。」
「た、たぶんって!」
「大丈夫だって。体力は落ちてるが傷は塞がってる。急激な回復に驚いて休んでるんだよ。今は休ませてあげよう。」
ポーションと回復魔法で見たところは落ち着いたと思うが、如何せん目を覚ますかどうかはこの子次第だ。
無理やり起こす訳にもいかないし、しばらくは様子を見るしかないだろう。
「ゼン。この子を背負えるか?」
「うぇ!?」
「何、変な声だしてるんだよ。」
「な、何でもないよ!大丈夫!任せてよ!」
「じゃあ頼むな。」
「にゃー。」
うん。
なんて分かりやすい子なんだ。
まあ、気になる子をいじめるタイプでなくてよかったが。
シロも呆れているぞ。




