0 プロローグ
「うひゃ、!?」
何やら酷い悪夢を見てしまって、変な声を上げてしまった。
なぜ、なぜ、空からみたらし団子が降って来て、それに押し潰されなければならないのか。
俺は涎を拭いた。きたねぇ。
今、俺の目の前のテレビにはエンドロールが流れている。
「ああ、あと一回か。」
今までプレイしていたゲームの話だ。
エンドロールの途中で寝落ちしてしまって、みたらしに押し潰されるという悪夢を見てしまったようだ。
どうせならきれいなお姉さんに押し潰されたかった。
おしくらまんじゅうでもいいぞ。
...悲しくなってきた。
俺がやっていたのはマジックキングダムというコンシューマー向けシミュレーションゲームだ。
一人用だ。
別に社交性がない訳ではないぞ。きっと。
ただ、ゲームは一人用が好きなだけだ。
例え毎週特に予定もなくて、殆ど外出もしないが、社交性がない訳ではないのだ。
そうだ。断じてないのだ。
...悲しくなってきた。
そりゃ彼女の一人も欲しいが、出会いがないのだ。
まあ、家と会社の往復しかしていないから、出会いなどコンビニの店員との会話くらいしかないのだが。
...悲しくなってきた。
久々の連休もゲームで終わりそうだが。
...悲しくなってきた。
悲しくて思考がループしている。
...悲しくなってきた。
なんだっけ。
そうそう、ゲームだゲーム。
このゲームは所謂マルチエンディングなのだ。
これで100回目だ。
このゲームのエンディングは全101回。
どこかのわんちゃん見たいだが、そうらしい。
つまりあと1回で全エンディングを制覇できるのだ。あと1回だ。
長かった。
何度強くてニューゲームを繰り返したことか。
99回だが。
うん、長かった。
「最後の1周をする前に、腹ごしらえでもするかな。」
うん、そうしよう。
近くのコンビニへ行こう。
俺が住んでいるのは結構都会だ。
時刻は午後6時。人通りもそこそこある時間だ。
いつも通っているコンビニへ向かう途中、外人さんがいた。
いつもは見かけない人だ。
見かけない人なんてたくさんいるが。
とにかく見かけない人だ。なんといっても金髪美人だ。
その隣にはスマホ片手に歩いているイケメン男。こちらは日本人だ。イケメンだ。
しかもペラペラと外国語で話している。もうぐうの音もでねぇ。
まったく分からないから英語ではなさそうだ。
俺も英語でも話せれば、欧風美人と知り合えるのかな。
...悲しくなってきた。
2人はスマホを見ながら歩いている。
いわゆるながらスマホだ。
テンプレなら、ここで強風で看板が飛んできてぶつかるんだ。
これはテンプレではないか。
とかアホなことを考えていたら、車だ。
ああ、交通事故の方か。
ないない。
素通りしてコンビニへ行こうとしたら、その車がふらふらしていた。
「マジかよ。」
あの2人は気づいていない。
「あぶな、、!!」
なぜか咄嗟に動いてしまった。
2人を突き飛ばして、俺は轢かれた。
目の前が真っ赤だった。
なんだか目の前の背景がどんどん移り変わっていく。
死ぬ直前だからかな。
走馬灯ってやつか。
家カギ掛けたっけ。
ハードディスクどうしよう。
いつもより色々と思考が捗るな。
-- スキル【高速思考】を取得
そういや、ゲームあと1回だったんだよな。
あと1回強くてニューゲームができればフルコンプリートだったのにな。
やりたかったな。
-- スキル【1回強くてニューゲーム】を取得
なんだ?
何か聞こえる。
ああ、助けた金髪外人さんか。
何か言ってるな。
しっかりしてー!とかかな?
心配してくれてるならいいな。
何言ってるか知りたいな。
-- スキル【全言語理解】を取得
「しっかりして!!分かる!?気をしっかり持って!!」
うわー。金髪美人さんに心配されてる。
俺の人生捨てたもんじゃねーな。
最後に見たのは変な悪夢だったな。
でも、美人な外人さんに看取られるなら、最後にいい夢みれた、かな?
-- スキル【夢見がち】を取得
ああ
なんか眠くなってきたな。
俺、、、