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2話:オンボロ橋

逆さ虹の森の長ーい川にな、1本の橋がかかっておるんじゃ


それがもう、今にも千切れそうなほど危なっかしくて


いつの間にやら『オンボロ橋』と呼ばれておったのじゃ






さて、このオンボロ橋の位置が厄介でのぉ


逆さ虹の森を、真っ二つに分ける川にかかっておる


向こう側に行くには、どうしても橋を渡らんといかんのじゃな



「ヒィ…!」



やれやれ、クマか


デカい図体で一体何が怖いやら


いや…オンボロ橋は身体がデカい方が怖いかのう



「あ、脚を、踏み外したらっ、どどどど、どうしよう…!」



ただでさえ揺れる橋が、クマがガタガタ震えながら渡るもんじゃから更に揺れておる


クマよ、お前さんが何遍も渡って


一度も落ちたことが無いじゃろう?


そう簡単には落ちんよ






「ふぎゃっ!」



クマが一際大きく叫びよったわ



「あはは!クマ坊、おっ先~!」



やれやれ、今度はリスか


リスは身軽じゃからのう、器用に縄の部分を走って渡るんじゃ


ま、誰か渡ってる者が居たら、わざわざ踏みつけ行くがのぉ


今まさにクマがやられたみたいに



「おい!リスの野郎、待ちやがれ!」



お、リスが来た方向から声がするぞ?


この荒っぽい声は、アライグマじゃろ



「あ、クマ!さっさと渡れよ!俺様はリスを追いかけてるんだよ!」



クマの身体で橋はいっぱいになってるからのう


クマが渡るといつも後ろがつっかえるのじゃ



というか、リスよ


これがわかってて、橋の向こうに逃げ込んだな?



「む、むむ、無理だよぉ…!」


「お前なー!いつも渡ってるだろ!いつも大丈夫だろ!」


「き、昨日は大丈夫だったけど…!き、きょ、今日は、駄目かもしれないじゃない!」


「お前なー!」



アライグマめ、イライラと足踏みしておる


リスに逃げられたのが悔しいんじゃろうなぁ






「あらま、橋がつっかえてるのね!」



そう言いながらアライグマとクマの頭の上を、するすると飛んで行くのは…



「コマドリ!ズルいぞ!」



コマドリくらいしか、おらんなぁ



「俺様も運べ!」


「無茶よぉ、大きい物は運べないわ!」


「ぼ、僕も、飛べたらなぁ…」



コマドリは橋を渡り切った先の木に止まって、歌い始めたようじゃな



「頑張って!元気が出るように歌ってあげる!」



さて、果たしてクマの元気は出るのやら…



「あ、あちきも!あちきも歌ってあげる!」


「あらリスさん、素敵ね!」



クマの元気が出る前に、アライグマの怒りが頂点になりそうじゃ






「あれ?アライグマ君、渡らないの~?」



にょろにょろと、そしてのんびりと言ったのは、ヘビじゃな



「クマが、真ん中で、つっかえてんだよ!」


「あれれ、ホントだぁ」


「ごごごごごめんねぇ…!」



クマよ、そうやって揺らし続けた方が逆に危険じゃぞ、多分



「キツネ君、どうしよっかぁ」



ヘビがひょいと後ろを向くと…


お、キツネが何やら大荷物じゃな



「あ、つっかえてる?」



特に気にした風でもなく、キツネはのほほんと言った


何だかのう、ヘビとキツネが揃うと何だかゆっくりになるのう



「それじゃ、縄だけ先にやっちゃおうか」


「おいキツネ、何だよその縄と板?」



アライグマが聞くと、キツネはやっぱりのほほんと言いよる



「橋を強くしようと思ってねぇ」


「あら、私が言った場所にちゃんとあったかしら?」



コマドリがパタパタ飛んできて、キツネの頭に止まる



「うん、板も縄も手に入ったよ~」


「キツネく~ん、縄貸してぇ~」


「ほいさっさ!」



キツネがヘビに、縄の端を渡したな


それをくわえて、ヘビは器用にするすると橋の縄をつたって行く



「あ、アライグマ君これ持って!」



キツネがもう片方の縄の端をアライグマに差し出したが…まぁ、嫌そうな顔じゃのう



「何で俺様が!」


「この中で1番力持ちでしょ~?」



ふむ、確かにキツネとコマドリよりは力持ちじゃのう


1番の力持ちはクマじゃが…奴は橋の真ん中で気を失いそうじゃし



「…ふふ、まぁな!」



やれやれ、『1番』の響きに弱い、単純な奴じゃ


さて、いつの間にやらヘビは向こう側へ辿り着いているようじゃの



「こっちはオッケーだよ~!」



そして、柱に器用に結びつけたようじゃ


ヘビがくわえていた縄はぐるぐると


橋の縄にからみつくように、ぐるぐると向こうまで引かれておる



「はい!アライグマ君、引っ張って!」



キツネに言われて、アライグマがぎゅうっと縄を引っ張る



「なるべくそのまま、こっち側の柱に結んで!」



ふむ、言われた通りにできるのじゃから


アライグマは、なかなかどうして器用な奴じゃのう



「よーし、縄はこんな感じかなぁ」



なるほど、古い縄に新しい縄を絡ませて補強していたのか



「おい、こっちはこれで良いとして、もう1本はどうすんだよ?」



アライグマの言う通り、縄は橋の両側にある


片方だけ補強しても仕方が無いのう



「あちき!あちき引っ張ってあげる!」


「向こうはクマさんに引っ張ってもらおうかな」


「!?ぼ、僕!?」



クマよ、さっさと渡ってしまえ


いつまで橋の真ん中で呆けておるのじゃ


というかキツネよ、さらりとリスを無視したな?



「板はねぇ、ちょっと前に補強したから大丈夫だよ」


「あぁ、そういや新しい板がところどころ重ねてあったな」



アライグマよ、意外と細かい所まで見ておるのだなぁ



「そうそう、もう駄目そうな板は前に直したんだけどねぇ、全部じゃなくってね」


「あ!ちょうどクマさんが居るところの板は新しいわね!」



コマドリの声で熊が足元の板を見る


確かに、オンボロ橋にしては新しい板じゃな



「残ってる古い板は頑丈そうだから問題無いよ、今日は全部替えちゃおうかと思ってたけど」


「だってよ!クマ、さっさと渡っちまえ!」



このオンボロ橋は、森の住民に支えられておるのやら



「う…うん!」



はたまたオンボロ橋が、橋を渡る森の住民を支えておるのやら


一体どっちなんじゃろうなぁ




「よーし、コマドリさんは縄を向こうに持って行って!」


「任せてちょうだい、くるくるって、ヘビさんみたいに持って行けば良いのね!」


「こっちは結んでおくから、クマさんはそっちで引っ張って柱に結んでねー!」




何?ワシが誰か、じゃと?


ワシは『オンボロ橋』


森の住民との、持ちつ持たれつの関係は


まだまだ続きそうじゃのう




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