1話:ドングリ池
ここは逆さ虹の森の、ドングリ池
とっても綺麗で澄んだ池の底には、ドングリがゴロゴロと転がっていました
何故って?
『ドングリ池にドングリを投げ入れてお願い事をすると、願いが叶う』
なんて噂が森中に広がっているのです
今日もドングリを投げ入れに来た子がいます
「うふふ!」
ちゃぽん、と音を立ててドングリが沈んでいきます
投げ入れたのは……コマドリです
コマドリは3日に1回くらい池に来ます
「今日も素敵な歌を歌えますように!」
願い事はいつも同じです
コマドリは満足したように、素敵な歌を歌いながら、飛び去って行きました
ほら、もうお願いが叶いました
願わなくたって、コマドリの歌は森で1番素敵なのです
ちゃぽん、と、また池にドングリが投げ入れられました
今度はヘビです
ヘビは時々、思い出したようにドングリを投げ入れに来ます
「んーとね、お腹いっぱい食べられますように!」
願い事は大体同じです
それか「美味しいご飯が見つかりますように!」です
そんな膨れたお腹で、それ以上何を求めているのでしょうか
いつも幸せそうにご飯を食べているので
大体叶っているような気もします
「えいっ」
次に来たのは大きな大きな身体の、クマです
クマは毎日、ドングリを投げ入れに訪れます
「み、みんなと怖がらずに、お話しができますように!」
願い事はいつも同じです
クマは怖がりなのです
怖がりなので、森の仲間たちとお話しするのもちょっと怖がっています
やれやれ、そんな大きな身体で何が怖いのか
まぁ、クマはいつも挨拶の練習やら、色々な努力をしているので
いつか願い事は叶うに違いありません
ぼちゃ!と、乱暴にドングリが投げ入れられて、水が大きく揺れました
アライグマです
アライグマは暴れん坊なので、ドングリの入れ方も乱暴です
「へっへっへ、俺様が森の支配者になりますように!」
願い事はいつも同じです
願い事も乱暴です
こんな暴れん坊が森の頂点に立ってしまったら、一体森はどうなってしまうのでしょう
まぁ、アライグマは毎日ドングリを入れに来るので
意外とマメなやつなのかもしれません
ぼちゃちゃちゃ、と、ドングリが次々に池に流れ込んで来ました
リスです
この入れ方はリスしかいません
「んふふ!ドングリの数だけ面白い悪戯ができますように!」
リスは森中でドングリをかき集めて、5日に1回くらい池に全部放り込むのです
願い事はいつも同じです
そして大抵の悪戯はアライグマに仕掛けられるのです
アライグマの怒った声が森中に響くので
大体いつも願い事は叶っているようです
「ほいさっ」
ぽちゃん、と音を立ててドングリを投げ入れたのはキツネです
キツネは気まぐれにやって来ます
「んん…」
そしていつも考えます
「んんん…」
たくさん考えて、
「ん~…みんなのお願いが叶いますように?」
願い事はいつも同じです
いつも首を傾げて、願い事を言うのです
マイペースが過ぎます
まぁ、そこがキツネの良い所でしょう
ここはドングリ池
ドングリを投げ入れると願いが叶う、なんて噂のおかげでドングリ池と呼ばれるようになったのか
名前がドングリ池だから、ドングリを投げ入れると願いが叶うなんて噂が立ったのか
もう誰も覚えている者はいないでしょう
ワタシだって覚えていないのですから
ワタシは誰かって?
いつも、ドングリ池にドングリを入れに来る子達を見ているモノです
ワタシはいつも此処で、みんなを見守っているのです
「今日も沢山遊べますように!」
「面白い事が起こりますように!」
「ずっと晴れが続きますように!」
「雨が降りますように!」
ワタシは『ドングリ池』
今日もみんなの、色んなお願い事を聞いています