勇者side 俺、異世界へ行く
「くそっ...」
気がつくと、真っ白な部屋に居たはずの体は、見たことのない原っぱの上に浮いていた
「日本にはこんな所なかったぞ...?」
「あぁ! やっと来ましたか!」
すると、春人の後ろに女性が空中に立っていた
...一瞬ドキッとしてしまったぞ...、にしても何でこんな美人が...って、神様なのか? コイツも
「...あんたも神様なのか?」
「そうですね。 そういうことになります」
...神様って爺さん位しか居ないのかと思ったが...そんなこともないんだな
「...で、俺はもともと違う世界の駄神に殺された訳で、こっちに送られてきたわけ何だが...、どうすれば良い?」
「じゃあこの世界での役職を与えましょう。 何をしろとは言いませんが、あなたはこれから「勇者」です」
...あー、良くあるパターンだな。 どうせ魔王をぶち殺してこいとか言われるのがオチだ
「あ、そうそう。 「魔王」は私のお気に入りなので、彼女に頼まれたりしない限り殺さないで下さいね」
...何だよそれ。 勇者である必要ないじゃん。 しかも気に入ってるからって...
「会えばわかりますよ。 私の気持ちもね...」
「分かってたまるかよ。 俺が魔王と会うのは魔王をぶち殺す時だけだ」
そう言った瞬間、場が凍り付いた
...っ! 何なんだこの空気は...
「...殺さないで下さい...ね?」
...こいつの仕業か! 悔しいが、何も対抗できない...。 足が竦んじまってる...
「...わかった。 善処しよう」
すると、一気に先程の温かい空気が戻ってきた
「物わかりが早くて助かります」
...そりゃどーも
「まぁ、貴方にとっても殺したくない存在となるでしょうがね」
「勇者は魔王を殺す。 魔王は人間を殺す。 そういうものじゃないのか?」
「いずれ分かりますよ。 彼女は異質ですし、何よりも容姿が素晴らしいのですよ!」
...彼女? 女なのか? 魔王といったら男な気がしてたが...。 それに容姿が素晴らしいって...神様がそんなこと言っていいのか? 全員平等に見てやるもんじゃないのか?
「神様は人を...生きる者を何だと思っているか聞きたい」
元の世界では神様が糞だったからな...
「この世界では、生きとし生ける物は全て皆平等ですよ」
...一気に信憑性が無くなったが、まぁそこは気にしなくとも良いだろう
「...そうか、少し安心できた。 ありがとう」
「あ、頭を上げて下さい! もともとはそちらの世界の神様のせいですので!」
ほぅ...少し話が合いそうだな
「...で、話を切り替えて悪いが、これからどうすれば良い」
「そうですね...とりあえず魔王に対抗できるレベルの加護を授けましょう。 ですが、戦いの時にしか発揮できなくしますが、よろしいですか?」
加護...加護ねぇ。 どんな物が手に入るんだろうな? 魔王に対抗できるレベルってことは相当だろうが...
「あぁ、それなら嬉しいくらいだ」
「後は、そのしゃべり口調を変えてしまいましょう。 性格も改変させます。 ...でも! 安心して下さい! 記憶は消しませんし、自分の意思で動く筈ですから。 私はただ手助けをするだけです」
へぇー。 そうか、まぁ僕は勇者ってことになっているからね...そりゃそうだよな...
...ん? 「僕」だって? 「俺」じゃなく?
「ちょっ、ちょっと! もう効果が出てるんですけど!?」
「本当ですね! 貴方様の顔にはそのしゃべり方が一番合っています!」
いやいや! そんなこと言われても、いきなり変わったら流石に戸惑うよ!?
「一気に好青年感がどっと出てきましたね...魔王と勇者がくっついたとしたらどんな子供ができるのか気になりますねぇ...」
いやいやいやいや! 魔王とくっつくとか、勇者がしてはいけないことだろ!?
「流石にそれは駄目じゃないの!?」
「いや? 別に駄目ではないですもん。 もう12年前に人間と魔族の戦争は終わりましたし...」
「勇者として召還される理由皆無じゃん!」
...僕は何をすれば良いんだ?
「魔王と会って、彼女が暴走したら止めると言うのが使命ですね。 止めるというのは殺すということですが、その時は私も彼女を殺すことを認めましょう」
そうか...いつかは殺す事になるかも知れないのか
「まぁ、彼女は吸血鬼とエルフのハーフだから、あと...2000年くらいは寿命で死なないんじゃないかしら?」
「そんなに人間が生きてるわけないでしょ!?」
「まぁまぁ、そう遠くないうちに使命を果たすときが来ますよ。 その時は...いや、やはり何でもないです」
...? 何を言いかけていたんだろう?
「そ、そんなに気にすることでは無いですよ! 乙女の言いかけたことを詮索すると、痛い目をみますよ!」
「はいはい...」
...あれ? よくよく考えたら僕が疑問を話す前から答えてくれているけど、どういうことだろ?
「あ、気づいちゃいましたか? 実は心を読めるんですよ!」
神様って万能すぎない?
ーーあら? 有難うございます!
...へ? 何で頭の中に神様の声が?
「私のスキルを譲渡してみました! どうでしょう? 意識した相手のみに意思を送れますが、使い方を誤ると精神が崩壊しますので、気をつけて使用してくださいね」
スキルを譲渡までできるのか...神様って凄いんだな
ーーありがとうございます...でも、神様神様と言われると、あの爺さんとちび共と同じような感じがするので、「女神」って呼んで下さい。 これでも神の中では一番偉いんです
へぇ~...それって偉いどころか、世界のトップって事だよね!? とんでもないな...
「ま、まぁ話はこのくらいにして、そろそろ転移させましょう。 ...場所はグランコンティ最北端の「マリウス」で良いかな?」
「そこってどんなところなの?」
元の世界では最北端と最南端は極端に寒い所だったからね...
「割と温暖で、過ごしやすいようですよ。 実は魔族の大陸ですが、人が何万人も移住しているので大丈夫でしょう。 ...これから5年後の話ですが...」
ということは、今はその町に入ると人間は僕だけ...と?
「そうなってしまいますが、貴方には少し苦しんで貰う事になりますが、そこで運命的な出会いを起こせるようにしましょう。 ...安心して下さい! 殺しはしませんよ!」
いやいやいや、苦しむってなんなの!? 女神様レベルだと相当怖いんだけど!?
「...わかりました。 人や魔族では初めて見る病気を作りましょう。 呪いという名目でね! 見た目は凄く辛そうだけど、実はそうでも無いという演技ってできますか?」
「できると思いますよ」
「なら、実は辛くないけど、辛そうに見える呪いを転移させたら付与します。 そうしたら、右手にあるの城には近づかず、左手にある小屋に向かって下さい。 今後役に立つ情報などを得ることが出来るようにしておきます。」
え? それはありがたいけど、ずるくない?
「いえいえ、そんなこと無いですよ? 仮にもその体でも...16歳でしょう?」
...一番気にしていることを指摘してくれたな...
春人は身長155cmのいわゆる「チビ」であった
「それは言わないでくれよう...気にしてるんだから...」
「わわわっ! す、すいません! そんなつもりでは無かったんですが...」
「いや、大丈夫だよ...もう慣れてるし...」
その後ずっと女神の土下座が続いた
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「それでは、春人君に良い出会いがあるように願っています。 それではまた会いましょう!」
「あぁ、でも次会ったときは俺が死んだときかな?」
そう言いながら僕の体は光に包まれた。
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「...ここは? ...森?」
こうして、中井 春人はこの世界へ転生してきた。
全く関係無いんですけど、部活が辛いです...。 初めて左の広背筋が筋肉痛になりました...




