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悲しい時は

俺は仰向けに倒れてボーンソードの剣先を見たまま、しばらく放心していた。


ハッと思い出した様に、さっきの黒鋼騎士達がいた場所を見ると…


そこには幅10メートル、長さ1キロメートルの土が抉り取られた道の様な物が出来ていた。

もちろん、その道の中には木も建物も黒鋼騎士達もなかったし、居なかった。


「やっちまったな…」思わず呟いてしまう


不可抗力とは言え、人を殺してしまった。


だが、余りにも突然の事だったからか不思議と罪悪感とかはなかった。


まあ、あいつらの行動も原因かも知れないけどね。


それよりも、何で火計が発動したんだろ?消し炭にしてやろうか?って言ったけど、ちゃんと疑問形だったと思ったのだが…本当に迂闊な事は言えないな


さてさて、やっちまった物は仕方ないとして


これからどうするかな…うん、夕日が綺麗だ。


山の中に夕日が沈んでいこうとしている

そちらへ向かって真っ直ぐに伸びている道らしき物を見て、少し途方にくれながらボーとしていた。


少しして頭の整理が出来た俺は、まずさっきの美少年の様子を見に行こうと家の方へと向かう。


家に近づいて行くと、さっきの美少年が起きて来ていた…お母さんらしき遺体の側で泣いている。


俺が近づくと、一瞬ビクッとなった。そのあと驚いた様な顔をして、こう言った。


「もしかして、お父…さん?」


え?俺はお父さんだった?

いや、ゲームの中でも現実でも俺はそう言う事はしていなかった…魔法使いになれる人なので


「いや、俺は君のお父さんではない…」


そう言うとふっと寂しそうな顔をしたあと

「そうだよね…じゃあ黒ヤオ族の人?」


黒ヤオ族と言う言葉には聞き覚えがなかった…

俺のやっていたゲーム・フロンティアの世界ではそんな一族は居なかった。


「もしかして黒ウサ族の事か?」


そう、聖霊術を使う森の民がウサミミのウサ族だった。

7つの国にそれぞれ、色違いのウサミミをした赤目の一族がいた筈だ。その一つが黒ウサ族。


「え?知らない…でも、あなたは黒ヤオ族じゃないね…よく見ると目が黒いし」


目が黒い…そう言えば、この子は目が赤いな。


「じゃあ君も黒ヤオ族なのか?」


力なく首をふる少年


「ううん…お父さんが黒ヤオ族だったんだ。それで、もしかしたら助けに来ていてくれたのかと」

と言うと、また泣き出してしまった。


参ったな…何か元気づけないと


しかし、何も思い浮かばなかった。


地面に手をついてポタポタと涙を落としいる、

俺はじっと見ている事しか出来なかった…


俺の視線に気づいたのだろう、少し恥ずかしかったのか手で顔を覆うと泣き止もうとして声を殺して泣いていた。


俺は黙って彼を抱き締めた。

「別に悲しい時に泣く事は悪い事じゃない、今日は俺をお父さんだと思って泣けばいい…こうしてれば俺には何も見えないしな」と言った。


その後、少年は一瞬黙りこんでから大声で泣いた。


俺は薄暗くなってきた農家の庭で辺りが暗くなるまで少年を抱き締めていた。


その後、泣き止んだ少年は


「お母さんを埋めてあげなきゃ…」と言って俺から離れると立ち上がった。


俺も立ち上がり「そうだな」と言った。


拭くものと着替えを取ってくると言って家に向かって走りだした少年、少し離れた所で何かを思い出した様に立ち止まった。


そして、振り返るとボソッと「ありがとう…」と言った。俺は黙ってうなずいた。


それを見て、少年は頭を下げてから直ぐに走りさった。


少年が走り去った後、俺は彼のお母さんの遺体を確認する。傷は喉を切り裂いていた。死因は窒息か出血多量か…どちらにしても苦しかったろうな。


俺は遺体に手を合わせる。


その遺体は、どう見ても中年の男性の物だったが、その事を茶化す気にはならなかった…


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