覚悟と報酬
バサッとマントを外す。そして王子に向き直り
マントを王子の体を覆うようにかけた。
「え?」と驚いた王子が顔を上げる。怖かったのかな?目には涙がたまっていた。
俺は覚悟を決めた…ミッションや報酬とか関係なく王子を助ける覚悟をな!
「フッ報酬なら、もう貰いましたよ」
「え?なにを?」
「貴方の笑顔ですよ。私達エンターテイナーにとっては、お客様が喜ぶ感嘆の声を上げる事が何よりの報酬なのです」
実際にそうだ、俺が声優養成所に通っていた時も一番嬉しかったのは、発表会で俺の演技が受けて笑い声や歓声が起こった時だった。
プロの人は分からないが、ネットで小説を書いている人とかもそうじゃないのかな?いいねとか、面白かったですと言われて、嬉しくて、また読んで欲しくて書いてるんだと思う。
驚いた顔のまま固まっている王子、俺は指で王子の涙をぬぐい
「さあ笑って下さい、喜んでください。それが私の報酬です!さすれば、貴方のことは私が責任を持って脱出させてみせます!」
と笑顔で帽子を脱ぎ恭しくお辞儀をして言った。
「うむ、ありがとう!」と涙を流し笑う王子
その涙は、恐怖や悲しみによる物ではなかった。
「そして、そこ!」
と探偵の直観スキルに従いトランプのカードを取り出し投擲する。
「ぐあ~なぜだ~」と額にカードが刺さって、のたうち回るマーリー
「フッ…おかしいと思ったんですよね。完璧なはずの執事であるアトラさんが、お風呂の扉を開け放しにしたままにするでしょうか?その時に紛れ混んでいたんでしょう?」
「くっ確かに、その通りだ!でも、なぜ?僕の超隠密で完璧に気配を消していたはずなのに!」
「フフフ、貴方はプロとしてあるまじき行為をした、だからですよ。」
「どういう意味だ?」と叫ぶマーリー
えー、説明させるの?トリックでも何でもないんだけど…でも、王子も聞かせて欲しそうな顔をしてるしなあ、仕方ない。
「貴方の本来の仕事は私が王子に何かをしない様に、もしくは早まった王子が逆に何かをしない様に見張る事だった…」
そうなのか?と驚く王子。実際に王子には知らせてなかったのだろう
「しかし、貴方は自分の趣味である盗撮を優先してしまった。最初に疑問に思ったのは私がかけ湯をした時でした。右と左で一回づつ、お湯をかけた筈なのに三回パシャパシャパシャと音が鳴った…」
ぐっと言って悔しがるマーリー
「上手く物音に隠してシャッター音を誤魔化していたつもりなんでしょうが、そのあともやり過ぎてバレバレなんですよ」
あまりにも酷かったから流石に途中で気づいたよ!
そして、事件と話し合いは解決し俺は更衣室へと移動した。
着替えの入っている籠を見ると【やっぱりバレちゃいましたね~申し訳ありませんでしたケンシン様】と書かれたメッセージカードと黒の燕尾服が置いてあった。
アトラさんの仕業だな、いつの間に…あの人が見張ってた方が良かったんじゃないのか?
俺は燕尾服に着替え、シルクハットを被り予備のマントを羽織った。完全にマジシャンになってしまったよ。
因みにマーリーのカメラは取り上げておいた。元の世界のデジカメと同じ操作だったので俺と王子のデータを消去して、後日アトラさんへと返却した。




