セントラルの常識
「兄って?第一王子はファグリさんなんですよね?」
と疑問に思った事を訪ねてみる。
「それは…」と口ごもるメグリ王子
すると、代わりにリーブスが答える
「私は卑しい森の民の子供です…王子の兄だなんて、とんでもない!」
「俺から話そう!」とくぐもった声が聞こえた、その方向を見ると
天井にめり込んでいたファグリ王子が両手を天井につけて「ふんっ!」と叫ぶと天井から頭を抜いて降りてきた。
「俺から説明しよう、内の国は少々考え方が古くてな…血族至上主義で尚且つ、森の民を奴隷扱いしているのだ…そして兄のリーブスは森の民とのハーフなのだ」
なるほど、そんな事情が有ったのか…
「まあ、そんな下らない常識も俺がぶっ壊してやるがな!」
「ええ! 」「フフフ…宜しく頼みますよ」
メグリ王子とリーブスさんが近寄り三人で輪になって手をがっちりと組んでいた。
仲良いね~若いって良いね~と思った。
「それで、こちらの方は?」
とリーブスさんが俺に気づいて訪ねてくる。
メグリ王子がああ!と言って俺を紹介してくれた。
「この方はケンシンさんと言って私の軍師です!」
「え?この方が?」
「そうです超龍殿と一緒に、たった二人で五千からなる敵の立て籠る砦に潜入して見事討伐したのです」
と言って、えっへんと言う感じのポーズをとるメグリ王子。
まあ、俺は10人ぐらいしか倒してないんだけどね…超龍が怒りそうだなと思って様子を見ると床に寝てた!
恐らく話が長く複雑になったし興味もなかったので寝てしまったんだろう…まあ逆に助かったよ。
「なるほど…では、貴方が炎の魔術師なのですね?」
とリーブスさんが聞いてきた。
炎の魔術師?ああ、火計の事かな?確かに計略って言うより魔法に近いけど…
「ハハハ魔術師だなんて、とんでもない!あれはアーティファクトの力ですよ」
「フフフ…私が文献を読みといた限りでは、その様な性能の物は、この世界には存在しない可能性が高いんですがね…まあ、アーティファクトと言う事にしときましょう」
「はい」
そうしてください。色々と説明(言い訳)するの面倒くさいので…
「それで、どうして貴方がメグリ王子の軍師を?」
本当にどうしてなんだか…俺が聞きたいですよ!
「ええ、まあ、成り行きと言うか…」
「なに?成り行きだと!貴様ぁ成り行きで、こんな超絶美少年と仲良くなれる訳が無いだろうが!何を企んでいる?」
とファグリ王子が俺の胸ぐらを片手で掴み持ち上げる…ノド輪の体勢だ、片手で首を持って高い高いしてるとも言える。
くそ、息が出来なくて苦しい。
「止めてください!」
とメグリ王子が叫ぶとファグリ王子がビクッてなる…この人、さっきから他の兄弟に怯えすぎだろ?
胸ぐらは掴んだままだが、地面には降ろしてくれた。
「ケンシンさんには私から頼んで軍師になってもらったのです、それどころかプリズンからの脱出まで手伝ってもらって…」
「そ、そうだったのか…すまん」
と言って俺から手を放すと、御辞儀して謝ってきた。
「御詫びにセントラルに来る事があったら、ゴールド温泉を案内しよう、大陸最古の温泉とも言われていて立派な金で出来た宮殿の中にお湯が流れているのだ!」
と誇らしげに語る。
「そうですか、ありがとうございます!それでは御礼に背中でも流しますよ」
仲直りの為だ、ブラコンみたいだし急に襲いかかってきたりはしないだろう。
「え?」
と言う顔をするファグリ王子
「積極的な男だな…だが俺にはメグリと言う心に決めた男が…」
「へ?背中を流すぐらい当たり前じゃないですか?メグリ王子にも…」
「なに?メグリに背中を流してもらっただと?」
「ケンシンさん!」
俺に対して顔を赤くして叫ぶメグリ王子…ヤバかった?
「セントラルの温泉で背中を流すと言うのは逞しい背中ですね今夜どうですか?と言う意味だあ、決闘決闘を貴様に申し込む!」