ファグリ王子
ハイマツ城では勝利の宴が繰り広げられている…よくある展開としてダンスしたり、貴族に紹介、御披露目と言った事になるだろうと思うかもしれない。
実際にそう言う展開になりそうになったが、とてもじゃないが、そんな気分にはなれなかった…
火計を射ち終わった後、俺は熊王と合流し、カインとアベルの遺体を捜索した。
熊王の嗅覚により二人の遺体は発見出来たが、やはり顔の部分だけが無くなっていた…やはりノーフェイスの言った事は本当だったんだろう。
生きている人間は無理だったが遺体はアイテムボックスに入れる事が出来た。
カマタマーレで待っている親父さんのスミスに少しでも良い状態で遺体を渡したいからだ、それと顔のない二人の遺体を見せ物にしたくなかったのもある…
翌日、メグリ王子とアトラ王に話してカマタマーレへ行く事を告げると
「それならば私も行きます!」
とメグリ王子は言ってくれた。
「メグリ王子…気持ちは有り難いのですが立場と言う物もあるでしょう?ここは俺と熊王だけで…」
と言いかけたが
「ケンシンさんは私の軍師です!いわば身内なのです!ケンシンさんの友達は私の友達も同然です」
と言われた。そういや、そんな事になってたな…この際だ、しっかりと誤解を解いて断る事にしよう!
「メグリ王子、この際だからハッキリ言いますが…」
俺が軍師の話を断ろとすると、パンッ!とアトラさんが手を叩いた。
「では、こうしましょう!メグリ王子も一度、セントラルに報告に行かなければなりません、その途中にカマタマーレに寄ると言う事にしては?」
と言うとメグリ王子が笑顔で
「そうです、そうですよケンシンさん!それなら構いませんよね?」
と俺の腕に抱きついてくるメグリ王子
「いや、でも…」と断ろうとすると
「だめですか?」と段ボールに捨てられた子犬の様な目で俺を見てきた…
あかん、これはあかんやつや。
「わ、わかりました…」
典型的な日本人ゆえに断りきれなかった…まあ、でも、こんな美少女(本当は美少年)に腕に抱きつかれて子犬の様な目で見られたら何人でも断りきれないよね?
「ナーハッハ、我もついていってやろうか?」
と何故か居合わせた超龍が、メグリ王子に言っていたが、冷たい目で貴方は要らないです!と速攻で断れていた。
「ホホウ…なかなか良いではないかアァァー」
と両腕を抱えて興奮していた…
そういや超龍が仕えていたファラオも美少年だったな…もしかしてドSの美少年に言葉攻めされて興奮するとかいう特殊な趣味なんだろうか?
「それでは、早速準備しないと…あと、お兄様にも話さないといけません!」
「お兄様?」
「ええ、昨日の祝勝会に参加してなかったから知らなかったかもしれませんが、今回の戦でトーチ軍に突撃した際に我が軍の被害がほとんど出なかったのは、メグリさんの兄であるファグリ王子の活躍が大きかったのです!」
「え?でも、モンスターの王の討伐に向かってたんじゃ?」
「ええ、ちょうど、そのタイミングで赤竜王を討伐して戻って来たのです!」
とメグリ王子
「今、使いの者を出していますので、そろそろ来ると思いますよ」
と言うと同時にドーンと扉が開かれる。
すると、190センチぐらいある筋肉ムキムキの金髪ロングヘアの眼鏡をかけたイケメンが入ってきた。
「おお!弟よ!お前は世界一美しい、結婚してくれ!」
と言うと隣にいた俺をはね飛ばしメグリ王子に抱きついた。