計略と錯覚と
「では改めて作戦を説明します」
と言いながら、ゆっくりと青い駒を動かす。
「私が別動隊を率いて、この山に登ります。ここまでは大丈夫ですね?」
と言って全員の顔を見渡す。
「ええ、先ほどの説明でも何となくは分かりました
」とアトラさん。
「そして、この山頂から私が火計を三回ほど射ちます」
火計を三回射つ?どういう事だ?と会議室がざわめく
「すみません、火計と言うのは火矢を射て敵陣を火まみれにする事ですよね?残念ながら相手の布陣するであろう土地は森林や草原でもありません…」
なるほど…
「更に言えば風向きも海からの北東の風が吹いていて火計をかけると逆にこちらがダメージを受けます…もしや東南の風を起こす方法でもあるのですか?」
しかも、大量に矢を用意する必要があるが時間はがないし…と続けた。
俺は首をふり答えた。
矢を大量に用意したり、東南の風を吹かすのは、白い扇子を持った天才軍師じゃないと無理です。
「いえ、違いますよ!私が最後に阿修羅ドラゴンへと向けて放った攻撃です」
どよどよ、と会議室がざわめく
「ちょ、ちょっと待って下さい…あれはアーティファクトの魔剣による攻撃だったのではないのですか?しかも、私の記憶が確かなら壊れてしまった様に思うのですが?」
ああ…そういや計略の存在を教えてなかったな…どうしよう?
本当は何でも良いから剣さえ用意してもらえば何発でも射てるんだけど、そんな事いったら俺自身が大量破壊兵器みたいな扱いになっちゃうからな…
「フフフ…いつから錯覚していました?魔剣が一本しか無いと!」
うん!魔剣の線でお願いします!
「なん…だと…」と会議室内が更にザワザワとざわめく。
「フフフ…これは驚きました…一体どうやって、そんなにも大量のアーティファクトを?よろしければ、お教え願いませんか?」
本当にそうだ…そんな隠れ武器屋とかあったら、こっちが教えて欲しいよ!
「フフフ…ご想像にお任せしますよ」
後で、どこかから適当に借りよう。
「そうですか、やはりメガ…いえ、何でもありません…それよりも、それでは早速山頂にある砦へと伝令を送り、準備を整えましょう」
と言った時だった。
バーンと扉が開き傷だらけの兵士が転がりこんでくる。
「どうしました!?」
と言ってアトラさんが、その兵士に近づくと
「も、申し訳ありません…ティーカップ山の砦が落とされました」