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魔法少女はそのままで。   作者: 片倉真人
メルティキス編
71/183

第14話 魔法少女は七不思議で。(1)

 ◆4月23日 午後3時55分◆

「――七不思議?」

 この場にそぐわない言葉に、私は思わず疑問の声を漏らす。

「実は最近、生徒会の間でも少し問題になっていてね。天草君。説明してもらえるかい?」

 黒髪書記は不機嫌そうな表情を浮かべたあと、仕方ないといった様子で語り始めた。

「…どのようにして話が始まったのかは判りませんが、ある時期から七不思議の話が校内で話題になるようになりました。昔からそういったオカルト的な話はあったのですが、突然噂が流行し始めてからは、噂が噂を呼び、すぐに校内中その話で持ちきりになりました」

 噂を聞けば、それを確かめたくなるのが人の(さが)、ということだろう。

「…七不思議の噂を実際に確かめようと、生徒たちが遊び感覚で夜中の学校に忍び込み、肝試しのようなことをはじめました。そして、それが後を絶たずに毎夜毎夜続いていることが発覚し、生徒会にまで問題が報告されるような事態になってしまいました」

「実のところ、我々生徒会としても頭を悩ませている問題なのだ。毎夜巡回するわけにもいかないし、かといって何か問題が起きた後では遅い」

 私もどちらかというと、気になることがあれば確かめたくなる気質の人間なので、その輩のことを頭から否定は出来ない。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「それで、私たちを上手く利用して、あわよくば問題解決まで漕ぎ着けようってこと?」

「勘違いして貰っては困る。これは公正な取引。君たちがそれを解決出来たのなら、それ相応の報いとして部の創設を認める。それだけのことだ。問題あるまい」

 ――何が公正なものか。

 私は心中で憤りながら、これが生徒会のやり方だということを悟った。


 部活動に昇格させたい同好会は、過去に相当数存在していたのだろう。

 だが、部活の数が少ないという現状を見れば、その理由は明らかである。

 生徒会は部活動に昇格させることを餌に、無理難題を押し付け、良いように扱き使い、そして最終的に達成できなかったからと、強制的に同好会という枠に押し込め、無理矢理に納得させる。

 つまり、公正な取り引きなどと言いながら、最初から部活に昇格させるつもりはなく、私たちのような人間を利用するだけ利用して捨てているのだろう。

 無論、私の憶測でしかない。

 だが、もし本当だとすれば、そこには公正さなどなく、作為的な悪意しかない。


「…わかった。とりあえず、内容を聞かせて」

 だが、それを判断するのは話を聞いてからでも遅くは無い。

 私はそう考え、まずは話を聞くことにした。


 …


「――以上が私が伝え聞いた七不思議の概要だ」

 全ての概要を聞かされたあと、私は拍子抜けをしてしまった。

「あー…ちょっと待って…整理する」

 トイレの花子さん、夜な夜な動き出す人体模型、誰も居ないのに鳴り出す音楽室のピアノ、目が動くモーツァルトの肖像画、あるはずのない13段目の階段、大鏡の中に映る少女、屋上に現れる白い影。

 どれもが一度は聞いたことのあるような、七不思議の鉄板ネタばかりだった。

「…ちょっと聞きたい。噂が広まり、確かめようとする輩が後を絶たなくなった…ってことは、そのうちのどれかは信憑性があった。そういうこと?」

 不自然な点は、()()()()()()()()()ということ。

 七不思議のいずれも目撃されなければ、噂はデマだったという噂が広まって終わりのはず。

 誰かが実際に目撃したことをほのめかすか、嘘をついて噂を流し続けでもしないかぎり、そんな状況にはならない。

「さあ…そこまでは」

 黒髪書記は視線を逸らす。

「このくらいの謎を解ける位でないと、君の言う()()()()()()()()なんて出来ないのではないかい?」

 生徒会長席に座る男が、ニヤリと笑う。

「わかった。その条件、乗ってあげる」

 私は考えるまでもなく、その条件に乗ることにした。

「君ならそう言ってくれると思っていた。やはり、君に提案して正解だった」

「…」

 黒髪書記は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「それじゃあ…って、あれ…?」

 私が部屋を見回しても、部屋の隅に陣取っていたはずの援交兎(ラビット)の姿が見当たらなかった。

雹果(ひょうか)なら、少し前に部屋を出て行きました」

「…そう」





 ◆4月24日 午後5時◆

 私と芽衣の二人は、調査を終えて図書室に足を運んでいた。

 その理由は、七不思議についての情報をまとめるためだ。

「しかし…これは一体どういうことだろう」

 丸一日掛けて七不思議について調べ上げた結果、七不思議の解明は一朝一夕にはいかないであろうことが判明した。

「私ちょっと、まとめてみますの」

 まず、黒髪書記が言っていたように七不思議が学校中で噂になっている、などという事実は無かった。

 一年生は知らなくて当然なのはわかるが、二年生にも知っている人間はいなかった。

 そして、三年生の中で知っている者を見つけても、なぜかそのことを口にしようとする人間は居なかった。

 目立った情報が得られなかったため、餅は餅屋という言葉に基づいて、私たちはオカルト研究会に赴いた。

 そこでやっと、幾つかの情報が得られた。

 一つ目は、七不思議のほとんどは既に解明済みであること。

 二つ目は、七不思議によって命を失った者がいたこと。

「時間を追っていきますの。七不思議の噂が流行ったのは二年前で、七不思議のうちの五つは、とある一人の方がすぐに解明してしまいましたの」

 二年前くらいに、七不思議の話で盛り上がった事実は突き止めた。

 そして、とある人物が毎夜のように学校に通い詰め、明晰な頭脳と科学的な実証で七不思議を次々に解明していったらしい。

「…でも、残りの二つを解明したすぐ後に、その人が謎の死を遂げた」

 七不思議を解明した直後、その人物は解明したことを大勢の生徒の前で公言していた。

 しかし、残り二つの謎を語る前に、突然倒れて病院に運ばれ、そのまま帰らぬ人となった。

「はい。その結果、“七不思議の呪い”というもう一つの謎が生まれましたの。でも、逆にそれがきっかけで七不思議の噂は語られることはなくなりましたの」

 七不思議を解明したとき、その人間は呪いを受け、数日後に死ぬという八つ目の七不思議が囁かれた。

 だが、奇しくもそれが決定打となり、皆が七不思議を解き明かそうとすることをやめた。

 なぜなら、七不思議を解き明かすことで死んでしまうという恐怖や、その話題に触れること自体がタブーだとする声が広まっていたから。

 そして、七不思議の噂は時間とともに語られることはなくなり、自然消滅することとなった。

「その時に残ったのは、屋上に現れる白い影と、大鏡に映る少女の謎。八つ目の“七不思議の呪い”が増えたことを併せると、現在の七不思議は残り三つ」

「たぶん、残りの二つに何かあると思うんだけど…」

 私は最初から、最後の二つに何かあると踏んでいた。

 直感というわけではないが、他の五つに比べると、残った二つは割と現実的な気がしたからだ。

「大鏡はこの学校に2つあるとオカルト研究会の方は仰っていましたの。一つは教室棟の中央階段に設置されているらしいですの。もう一つは…」

「…あそこか」

 私はもう一つの大鏡について心当たりがあった。

 それは、生徒会室に設置されていた大きな鏡だ。

「まあ…あっちは後回しで」

 七不思議について生徒会が調べていたとすれば、生徒会室にある鏡はすでに調査済みだろう。

 それに、生徒会とはこれ以上角を立てたくない気持ちもある。

「先に屋上の白い影を…と言っても屋上は鍵が掛かっていて入れないのか…」

 先日、屋上に入ろうとした際、鍵が掛かっていたことを私は確認している。

 アニメとか漫画では常時開放されていて、昼食を食べたりするシーンが当たり前にあったりするが、現実ではそんなケースは殆ど無く、常に施錠されている。

「これは準備が必要だな…。そっちの調査は明日しよう」

 私がしなくてはいけない事は、屋上の白い影が幽霊であると証明するか、幽霊ではないと証明するかのどちらかだ。

 となると、屋上を調べることは事実上避けられない。

 ――何らかの手段を用意しないと。

「とりあえず、帰り掛けに教室棟の鏡を調べよう」

「わかりましたの」

 私たちは席を立ち、図書室の出口に向かう。

「そういえば、雨さんは?」

「…七不思議の話をしたら、今回はパスって言われた。たぶん、あーちゃんはそういうの苦手だから、首を突っ込みたくないんだと思う」

「へぇ~…あの雨さんが…意外ですの」

 芽衣は何か思い耽るように考え込み、そのまま黙ってしまった。

「芽衣?どうした?」

「へ…あ、いや、ちょっと考え事をしていましたの」

 いつもの様子とは明らかに違い、焦ったような表情を私に見せた。

「芽衣もこういう話苦手?」

「いいえ…。私は幽霊さんとも仲良くしたいくらいですの」

「…そ、それは他では言わないほうが良いと思う」

 ――天使の懐の広さは、やはり違うな。

「…ん?」

 図書室を出ようとしたとき、私はふと視界に入ったQRコードが気になって立ち止まる。

「なんでこんなところにQRコード…?」

 街では、電車の広告やコンビニなど、様々な場所で見るようになったQRコードだが、まさか学校内で遭遇するとは思っていなかった。

「これは校内新聞…ですの?」

 読み進めると、それは過去の校内新聞を閲覧するためのものだった。

「なるほど…使えるかも」

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