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未完結短編集  作者: .六条河原おにびんびn
プリンスの王子様 恋愛/腐女子ヒロイン
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プリンスの王子様1

わたし、AAAAは今年、薔薇百合学園に入学することになったの!!



 どんな学園生活が待っているのかな?







 空は快晴!小鳥の囀りがとても清々しい!入学式の朝からツイてる!

 そう思いながらわたしは、真新しいローファーを穿いて玄関を飛び出した。


・・・・・・・なんて、この男同士の恋愛が好きなわたしには似合わない文句を添えるだけで、随分と現実は輝いて見えた。



「痛っ!」

 学園までもう少しという十字路で、質量感のあるものが突進してきた。よろけて膝がごつごつしたアスファルトに叩きつけられた。ふわりと芳ばしい香りが鼻を突き抜ける。


「・・・・てってて・・・・」

 茶色の短髪をぐしゃぐしゃと掻きながら、その人はわたしを見下ろした。





  →何すんのよ!

    ごめんなさい!




「何すんのよ!」

 わたしは怒鳴った。

「ごめんごめん」

 鼻にフリーズなんちゃらとかいう白い絆創膏みたいなのをつけた少年が、口にトーストを含みながら謝った。ぼろぼろとトーストのクズが道に落ちている。

 このありがちな展開に今日は2ちゃんにスレを立ててやろうかと、相手をよく吟味する。

「あ、その制服、薔薇学だよね?オレもなんだ。よろしく♪」

 馴れ馴れしくその少年は手を伸ばす。よろしく、の手なのか、立ち上がらせてくれる手なのかわたしには分からなかったけれど、その手を掴む。

「ごめんね、膝、怪我してる?」

 少年は手を引いてわたしを立ち上がらせると、屈み込んで、スカートの裾の下、膝を見た。

「・・・・・それ、変態みたいだよ」

 もしわたしが、男なら。スカートを穿いた男であるなら、よろこんでこの裾をちょっと上げ、この清純そうな少年を誘ってみたのだけれど。

「マジっ!?」

 はっとして少年は立ち上がり、謝った。

「ごめん!」

 わたしは頬を染め出す目の前の少年を吟味した。とりあえず2ちゃんねるでのこの手のスレはスペックが問われる。そうだな。茶髪で目は大きめ。おそらく制服の新しさからいってタメ。

「オ、オレの顔に、な、何かついてる?そんなに・・・見られると、て、照れちゃうな・・・・」

「うん。ついてるよ」

 わたしは後頭部を掻く少年の頬に手を伸ばし、トーストのクズを取った。染めていた頬がさらに赤くなり、熱い。きっとわたしのこの冷たい手を感じているんだろうな。ああ、自分が男だったらな、という思いに駆られる。

「うわ・・・・・。オレ、ほんと、今日何やってんだろ・・・・・!」

「君、名前は?」

 まぁ、名前を聞いておいて損はないだろう。流石に2ちゃんで晒すなんてことはしないけれど。

「オレ!?小鳥遊 貴也って言うっす!!」

 たかなしたかや。「たか」が2つもつくなんて、某青い猫型ロボットの主人公みたいだな、と鼻で笑う。

「わたしはAAAAっていうの。よろしくね」

 これでアドレスでももらえれば安価(※アンカー)でもするのだけれど。初対面で、しかもこの程度でわざわざアドレス渡すほどの人はいないか、と思った。

「AAAAちゃんかー!よろしくっす!!アドレスもらってもいいっすか?」

 タカナシ君は大きな目を開けて、首を傾げた。これはもう受けの仕草でしかないと思った。これはもう無邪気受けだ。とすればわたしは。



 

   もちろん!

  →ごめんなさい。今バッテリーがないの




「ごめんなさい。今バッテリーがないの」

 無邪気受けには焦らすのが好き。わたしはもう二度とないかもしれないタカナシ君のアドレスをもらえるチャンスを棒に振るった。

「じゃぁ今日1日大変だね!充電器貸してあげるよ!」

 にかっと笑うタカナシ君。だめだこの子。すぐにそう思った。タカナシ君は荷物をがさごそと漁る。

「多分、型合わないよ。機種違うもの。でもありがとう」

「えっ!?充電器って全部共通じゃないの??」

 表情を曇らせるタカナシ君。腹の中で笑うしかなかった。この子はもうとことん蹂躙されるのがお似合いだ。攻め役は・・・鬼畜な幼馴染みとかどうだろう。

「メーカーによって違うのもあるんだよ。気持ちはありがたく受け取らせてもらうね」

 きょとんとわたしを見つめてからタカナシ君は満面の笑みを浮かべる。

「AAAAちゃんは、本当にいい人なんすね!よかったー!慰謝料とか請求されなくて」

 するわよ。妄想の中で。そして妄想の世界で、タカナシ君には身体で払ってもらうわ。

 脳内には、悪い輩に捕まり、泣き叫ぶタカナシ君の姿がある。

「ありがとう。じゃ、わたしはそろそろ行くね!」

「また入学式で会えるといいねー!!」

 やはり蹂躙受けが似合うな。タカナシ君に背を向け、わたしは薔薇百合学園の方へ歩き出した。


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