またね 死ネタ
【死ネタ】またね
友達が死んじゃった。
施設のおばさんよりも好きだった、お父さんみたいなお兄ちゃんみたいな、たまにお母さんみたいな友達。世界でたったひとりの人。
本当の親にも名前を呼んでもらえなかったオレにあだ名をくれた、たったひとりの人。
もうあの人と話すことはない。この今立っている地面から全部崩れてしまえばいいのに。
もう会うこともないんだ。こんな風に思うなら会わなければよかった、と思っても本心じゃなくて。
どうして今、あの人がいないここにいるんだろう。
悪魔みたいな本当のお母さんよりも、鬼みたいなお父さんよりも、大好きだった。
花に埋もれていた。真っ白い顔をして、けれど傷んだ茶色の髪は生きているときと変わらない。ただ、ワックスをかけられていないだけ。本当は真っ直ぐな髪だったのかと今になって気付いた。
こんな近い人が死ぬのなら、いつか自分も死ぬのか。
いつ死ぬんだろう。
どこで死ぬんだろう。
なんで死ぬんだろう。
花に埋もれた棺が運ばれる。霊柩車に乗って。
ああ、起きないかな。棺の中から、起き上がってこないかな。
棺が焼かれるために、運ばれる。水の中で生まれ、炎にまかれ消えていく。
ガスバーナーの点火を怖がっていたよね。火は怖いって、火傷したくないって、言ってよ。今すぐ起き上がって、そう言ってみてよ。
棺も花も消えて、綺麗な骨が見える。これが本体か。結局この骨に皮を被せたのが人間なのか。そしてオレも。
結局この形になるために生まれてきたのか。あの人も、オレも。
それなら、向ける言葉は「さようなら」じゃなくて
ま
た
ね
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