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未完結短編集  作者: .六条河原おにびんびn
非・王道系戦隊モノ ギャグ
13/86

非・王道系戦隊モノ 3

「起きてんご」

 腹パンを食らわされ、僕は鯨が潮を吹くように口から水を吐き出した。

「大丈夫んご?どこか痛いとこないんご?」

 目を開けると、前ぱっつんの茶髪の女の子が座っていた。毛糸のパンツが丸見えだ。

「溺れていたんご。お前河童なのかんご?」

 茶髪というよりはバーガンディという小豆に近い色だろうか。目がくりくりと大きく睫毛も長い。カワイイ。おそらく口を開かなければモテるタイプだ。

「俺様は海老原武道言うんご」

 後ろの髪は上の方を2本で縛って、あとは垂らしている。かわいいな。お人形みたいだ。それにしても残念な子だなと思う。

「お前喋らないなんご。もしかして話せないんご?」

「えーっと・・・?」

 あの犬と少女は無事だろうか。目の前にいる語尾と一人称が奇抜な美少女を一度視界から外し、キョロキョロと辺りを見た。アコースティックギターを奏でるファッションセンスのない青年はどこだろうか。

「飼い主様ならあそこにいるんご」

 ぴっとした仕草で奇抜な美少女は指を出す。その先に、ずぶ濡れになった少女が座り込み、その隣にセンスのない上着を少女に掛けているアコースティックギターの青年がいる。

 ちょっと待て。

「飼い主様・・・・?」

「俺様の飼い主様んご」

 後頭部をぶん殴られたような気分だ。嫌でも察しがつく。この女、犬だ。

「俺様が魚にコーフンして池に入っちゃったんご。飼い主様がカナヅチなの知ってたのにんご」

 制服は泥まみれで濡れている。僕は起き上がった。犬のパンツを見て喜ぶ趣味はない。

「君は犬のくせに、服をきてパンツまで穿いているんだね」

 僕は立って、それから奇抜な美少女に刺々しくそう言って、その場か去ろうとする。

「俺様が人間の姿になるときはいつも服着てるんご。それとも裸になったほうがいいんご?」

 奇抜な美少女はバーガンディ基調のメイド服のような衣装に手を掛け出す。

「脱がなくてもいいよ。それじゃぁね。助けてくれてありがとう」

 僕は僕の形に濡れているアスファルトを一瞥した。

「君、ありがとう。真っ先にこの季節の池に飛び込んでいくなんてね 」(訳:君のバカさ加減には驚き呆れたよ)

 ふと肩に重みを感じ、振り返る。世にいうイケメンが爽やかな笑顔を向けてきた。彼はアコースティックギターの人だ。ナンセンスな襟のシャツがイケメンさを消していたのだろう。

「・・・・ども」

「いやー。君が動かなかったらイケメン君も動けなかったなー 」(訳:助けにいこうとして助けられてんじゃねぇーよ)

 イケメンだと思う。素直に。ただ言い方にどこか含みがあるというか、含みがあるように聞こえさせるのが得意なのかもしれない。

「君、見覚えがあるな。イケメン君の名前は、軍城グンジョウ 沙火サファイアっていうんだけど・・・知らない?」(訳:このイケメンの顔を覚えろ)

「知りません・・・・」

「君は?」 (訳:このイケメンが君のような貧相な男の名前も覚えておいてやろう)

「・・・・明石 麗兎」

 僕が名乗った瞬間、この人の顔が一瞬引き攣ってから、噴き出した。失礼な人だ。

「え~まじ?ちょー普通なんですけど!!ウケる~!!」

 なんなんだこいつ。僕はじろりとこの人を睨んだ。

「もしかして、元アカイロでしょ??だよね??噂通りの不幸そうな面構えですこと」

 横できょとんと奇抜な美少女が僕を見つめる。そんな目で見るな。

「ええ。そうですとも」

 きっとあのろくでなしの3人が言ったのだろう。

「辞めて正解だって!向いてないもん!助けようとして助けられちゃうんだもんね!!」

 まったくその通り。だから辞めたのさ。

「まぁ、安心してよ!今度のアカイロとアオイロはイケメン君たちだからさ!!ちなみにアオイロがイケメン君ね!」

 聞き流していたが今理解した。この人が度々口にする「イケメン君」とはこの人自身のことなのか。

「今度のアオイロは、丈夫そうな人で安心しました」

 あのろくでなしブルーを思い浮かべると、素直にそう言えた。

「それでは」




「本当に腑抜けたヤツだったね」

 池からばしゃっと赤い物体が飛んでくる。一度光ってから、光が剥がれていく。現れたのは端整な顔立ちの男だ。

「・・・・少しは怒ると思ったんだがな」

 沙火は後頭部をがりがり掻いて、池から上ってきた相棒・暮夜くれない 我網があねっとに言った。

「仕方ないさ。彼も色々悩んでいたことなんじゃないか?」

 にかっと笑う相棒に沙火も微笑み返した。


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