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prologue

どうも!鶯です!

新しく連載始めましたっ!

良かったらみてって下さい。



リア充。

いうならばそれは、周囲に羨望を与える存在。

いうならばそれは、毎日が楽しいといえる象徴。

いうならばそれは、学生生活の希望。

どこかの捻くれぼっちはこの定義に唾を吐きつけるだろうが、そのような者は非常に稀であって、普通の学生ならば、学生生活において貴族ともとれるこのリア充に成ることを夢見るものだ。

勿論、この僕、二見実松(ふたみさねまつ)も例外ではない。僕は今までリア充とは対極に位置する存在、所謂非リア充に属しているような冴えない男子だ。

だが!


「お客さーん。ホントにやっちゃっていいの?」


「あ、は、はい。お願いします」


「あーい。OK。カラーリングはいりま〜す!」


……コホン。話を戻そう。冴えない男子代表だった僕は、高校入学を機にあのリア充に生まれ変わる!!


「お客さん。こんなもんでいいかな?」


パツキンの店員さんに言われて慎重に目を開ける。完成を楽しみにしたかったから目は閉じていたのだ。決して店員さんと喋るのが嫌だった訳では無い。すぐ側に置いておいた眼鏡をかけ、鏡を見ると今までの僕とは思えない僕が映っていた。純日本人な僕は髪の色は純度百パーセントの黒髪だったのだが、鏡に映る僕の髪は明るい茶色になっている。冴えない男子の王道ヘアーと言ってもいいモサモサした髪の量は短く切り揃えられていた。側頭部と後頭部はバリカンで刈り上げ、頭頂部は整髪料をつけて固めてある。まるで昨日テレビで見たサッカー選手の様だ。そして僕を僕たらしめていた太くて濃い眉は、とても細く、とても薄くなっていた。


……はっきり言ってここまで変わるとは思っていなかった。


「こっ、こ、こ、これでいいですっ!」


劇的ビフォーアフターもびっくりの変わりように僕の口は仕事をほっぽりだしたらしい。僕今「こ」って何回言ったんだろう。

ふと、高揚感が胸中をくすぐった錯覚がした。浮き足立つとはこのようなことを言うのだろう。こころなしか髪だけじゃなく重力も軽くなったような浮遊感も感じる。そうか。僕は翼を授かったのか。高校という大空を飛ぶための翼を!


「はい。カットとカラーリングで七千円ね〜」


「……一万円からで」


…手に入れた翼は意外とお高めでした。




諭吉さんがいなくなり、軽くなった財布をリュックに戻す。中学入学時に親に買ってもらったリュック。黒色だったそれは、今ではグラデーションのように所々色褪せている。そろそろビンテージ感が出てきてもおかしくない。鞄を閉める。キャラクターだけいなくなったキーホルダーの紐の部分で。キャラクターは確かピカチュウだったが、いつの間にかいなくなっていた。きっちり閉めたリュックを背負い直す。肩をかける所が少々解れている。ダメージ感がでてまた乙なものだ。



……これはやばい。


今の僕は髪の色と髪型だけを見れば、生粋のリア充にも対抗できるような力は恐らくあるだろう。だがそれだけだ。鞄だけではない。足元を見る。初めは白かったはずのスニーカーは灰色に近い色になっている。かれこれ二年は履き続けているので当然ともとれるけど。パンツは安物の店で母親に買って貰ったジーパン。街中で見かけるヤンキーみたいに裾が破れている。そして上着。一体何のキャラクターか分からないパーカー。ポケットにはガムの包み紙やレシートが詰め込まれている。最後に眼鏡。芸能人が掛けているようなお洒落な黒縁眼鏡とかではなく、至って普通の丸眼鏡。ちょっとレンズも脂が浮いている。そこはかとなく非リア充の香りがする。



……これはやばい!


そうだよ。何をいい気になっていたんだ僕は。僕はただ髪型と髪色、それに眉毛を整えただけだ。ゲームでいう最初の武器を手に入れただけのビギナーだ。このままでは高校生活という大海を漕げる事は不可能だろう。もし仮に、このままで高校に入学したら…


「アイツ、髪だけ明るいけど鞄ボロいし。靴も汚いし。高校デビュー失敗の王道パターンだろ」


とリア充の人間が無慈悲な鉄槌を下せば。


「陰キャの癖にいきがるからだww」


などと非リア充のヤツらが遠巻きに嘲笑うだろう。


そして何処にも居場所がなくなった僕は高校生活の三年を亡者のように過ごす。



……こんな未来が手を拱いて待っているはず!


それだけはいやだ!それだけは避けないといけない!

少なくとも、見た目だけはリア充にならないといけない。何事も形からとも言うし。

僕は再度財布をリュックから取り出す。中身は樋口さん一人と野口さん三人。家にある貯金箱には何年も日の目を浴びてない諭吉さんもいたはず。高校の入学式まであと三日。僕の全勢力(ルビは全財産)使ってでも、まずはこの見窄らしい見た目を何とかしなければ。


まずは本屋に行こう。そして今まで決して見ることの無かったファッション雑誌を買って研究しよう。

そうと決まれば。僕は頻繁に利用している書店に行く為に、帰り道とは逆の方向に歩みを進めた。




感想評価お待ちしております。


あと、私が書いてる儚く散ったその花は。

も、更新致しましたので、そちらも宜しければ。

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