翔くんどうする?
俺の思いがけない登場にその場の2人はえらく驚いていた。
まあ、それはそうだろう。
「お前…いつから?ってか何でここにいんだ?」
「お前がこいつに路地裏へ連れていかれるところを見た訳だから、
お前らの会話は全部聞いていたよ。
まーだが、今はそんなこと言っている場合じゃねーだろ?」
そう、今バイオレーンズの過去を詮索するよりも
優先して対処するべき状況が目の前で展開されている。
さて、出て来たのはいいが、どうしたもんかねー。
その辺に名前を書いたら死ぬノートでも落ちてないもんかねー。
それだったら万事解決…ってあるわけないね…。
「兄さん、そいつはだれだい?知り合い?
まあ何にせよ、今の会話を全部聞かれて生かしておくには危険だからねー。
残念だけど、この場にいたのが運の尽きってことで、
諦めて死んでもらいましょうかねー!」
まったく、すぐ死ぬだの殺すだの、本当この兄弟って野蛮だよ。
もうちょっと穏やかにいこうぜ。
まあ、父親が宇宙の帝王っていうからそうなってしまうってことかもしれんが…。
だが残念ながら俺は死にに来た訳じゃない。
「インテリージェンよー、こいつは無関係な人間だぞ。
聞かれたのだってお前のミスだ。お前皇帝になるとか言ってっけどよ、
無関係な人間殺してくような奴につとまると思ってんの?」
ほーう、これは意外だな。もしかして俺のこと心配してしくれてんの?
いやー、これも日頃の行いの成果かねー。
こいつと信頼関係を築くのはそれほど悪くないかも!
ってこんな状況で何馬鹿なこと考えてんだ俺。
「あなたがよく言えたものですね。
反対勢力を殺すことでしか解決方法を見いだせなくて、
その結果ここ地球にとばされたのはあなたなんですよ?」
「ちっ…。」
バイオレーンズは何も言い返すことができず、ただただ悔しそうにしている。
その一方でインテリージェンの方はそのやりとりで兄を論破したと確信し、
満足そうにしている。そこからは俺の方に冷徹な目を向ける。
「兄さんの方は満足に動けそうにないんで後回しでいいとして…、問題はお前だな。
大丈夫、俺の目的はお前を殺すことだけだ。別に痛めつけようとしている訳ではない。
本当に無抵抗を約束するというのならば、
せめてもの情けとして全く痛みを感じないまま死なせてあげることもできますよ。
俺がここにわざわざ来た理由は誰にもばれずに兄さんを殺すことだからな。」
大丈夫、落ち着け。相手は別に何ら特別な存在ではない。
ただ刃物を2本持っているだけのただの人間と何ら変わらない…能力的には。
しかし対して俺は武器も何も持っていない丸腰状態。
強いて言えば学校帰りということでこの無駄に重い教科書入りの鞄だけ。
…やばい……足手まといにしかならんじゃねーか。ここは…。
「じゃ、俺はひとまずこの場から退散して周りに助けを求めてここに戻ってくる。
バイオレーンズ、それまでの間死なないようふんばっておけよ。」
そう言った直後、俺はすばやくインテリージェンの視界から姿を消し、目的地へ向かう。
「かっこよく登場して結局他人頼みかよ!しゃーねーな。
もやしっ子のあいつにこの状況で何か出来るとも思わねーし。
お前の言うとおり、死なずにおいてやるよ!」
さて、俺の作戦は果たして上手くいくのだろうか?いや、自分の作戦を信じろ、俺。
時間はそう長くない。たとえ作戦が上手くいくとしてもそれは時間との勝負だ。
いそげ!俺は自分のやるべきことをすばやく!
「ふっ、まさかお前は本当に助けを呼びに行ったのか?いや、それはないだろう。
お前は、俺がお前を殺すと言った直後に走り出して行った。
これは俺が他の奴らにこの状況を知られたくないと考え、
それを阻止しようと兄さんを取り残し、自分を追ってくると考えての行動だろう。
それから上手く俺をまき、その隙に一人になった兄さんを救出し、
さっさと撤退といった算段だろう。
単純だが犯人の嫌がることを熟知してのよく出来た作戦だ。
今から人を殺すという人間はテンションがハイになっているので
冷静に考えるひまもなくとっさに奴を追うという犯人の心理も上手く利用しているだろう。
しかし、相手が悪かったな。この分野は俺の十八番でな。
俺は冷静に考えてから行動するというのを肝に命じている。
非力な俺が何も考えずにつっこんでも結果は見えているからな。お前の思惑は外れだ。
ここで俺が冷静に考えた時点で俺がお前を追うという選択肢はなくなる訳だ。
たとえお前が宣言通り助けを呼びに行っていたとしても
それまでに俺が兄さんを始末しさっさとこの場を去ればいい。
どうせ後から来た奴が兄さんの死体を調べようと問題ない。
俺はすぐにこの地球から去って惑星ダーキシスに帰還するわけだからな。
この勝負俺の勝ちだ。ふふふふふふ。
おっといかんいかん急がねば、ではそろそろお別れだ兄さん、
せいぜいあの世で俺の活躍見ててよ。さよならー。」
勝ちを確信し、顔を歪んだ笑顔でそめたままナイフをふり上げる。
「くっ…もはやこれまでか…。」
ドンっ!鈍い音とともにインテリージェンのナイフは下に向かって加速する…
が、インテリージェンの体も一緒に倒れる。
そして鈍い音の音源である鞄らしきものが地面に落ちる。
「これは…どういうことだ…?」
バイオレーンズはさっきまでの死を覚悟した穏やかな表情から一変、
まぬけな顔でつぶやく。




