惑星ダーキシスにて
時は宇宙のとある惑星での侵略戦争の真っ最中である。
「この地域の征服はおまえ達にまかせてあるが、準備はいいな。」
「はい、おまかせください、お父上。」
そういう丁寧な口調で受け答えする青年は筋肉はあまりなく、
どちらかと言えば、やせている印象をいだかせるような風貌をしていた。
そして、その青年は周りに対して安心感を与えるような顔つきをしていた。
「期待しておけよ、親父。」
荒々しい口調のこの青年は先ほどの青年とほとんど外見は変わらず、
しかし背は少し高く、表情には少しやる気とは違った何かが感じられる。
「では、作戦を伝える。全部隊を3部隊に分ける。
どの部隊に所属かは前のボードを見てくれ。
第1部隊は正面から、第2部隊は背後から攻めろ。
すると、閉鎖されたこの土地ではこちら側から逃げていくことになるので、
そこを第3部隊が攻めてふくろだたきにしてくれ。
兄さんは万がーのときのため、待機していてくれ。大まかな動きはこうだ。
では次に細かい動きについて説明すると…」
「おい、インテリージェン、そんなまどろっこしい作戦実行しなくても、
俺がいけば充分片が付くだろう。」
「兄さん、しかし、作戦を立てて挑んだ方が確実だ。
確かに兄さんのカは圧倒的だが、念には念をだ、
確実に成功する方を選んだ方がいいだろう。」
「そんなの必要ねーよ。
今まで俺のカを上回っていた奴らなんていなかっただろ。
面倒くせえー。俺は1人で行くぜ!
お前等も巻き添え食らいたくなければ、おとなしく待っていろや!」
兄と思われる青年の表情は戦闘狂のそれであり、そして自分の実力に対してかなりの自信をもっているように感じられた。
「兄さん、まて!」
弟の方がそう言うのを聞かず、兄は気にもとめずに行ってしまった。
その空間には、兄に対するその言葉だけが、むなしく響いていた。
「お前ら、俺らに従う気はないのか!」
先ほど一人出ていった青年、ダー К バイオレーンズは、
敵と思われる大勢の軍隊に一人囲まれていた。
しかし、その状況においても彼の表情から焦りがみえるわけもなく、
相手をなめくさったような口調で言葉を放つ。
「あるわけないだろ。貴様らのような奴らに服従するわけなかろう。」
「そうか、ならば俺らに従わなかった自分たちを恨めよ!」
ダー K バイオレーンズは空高くに飛び上がり、
腕をのばし手の平を下の方に向け重ね合わせて奇妙な赤い光線を放った。
彼の放つその光線はその土地を敵もろとも更地に変えてしまった。
それは、凡人がいくら束になっても、
絶対的強者に対しては足下にもおよぶことは到底できないいう
辛辣な現実を思い知らされるには十分な光景だった。
「ほらな、一瞬で終わっただろう。」
兄の方は俺1人だけで片付けることができたことを証明できたということで非常に満足そうに言う。
それが、自分の作戦の必要性を完全否定されたように感じたのか、
一方の弟の方は悔しさを顔ににじませながら拳を力強く握りしめている。
「ぐ、…兄さん…!」
「よくやった、バイオレーンズよ。…だが、前から言っているだろう。
お前は自分のカを過信し、仲間をないがしろにしている節がある。
そんなことでは、民の上に立つ帝王にはなれない。
お前はこれからは協調性も大切にしていくのだ。」
「何言ってやがんだ親父、たとえ民が束になって反乱してきたとしても、俺にはかなわねーよ!」
ダー К バイオレーンズは自信満々に言う。
しかしその言葉を聞いたとたん、さっきまであくまで上機嫌を保っていた父親、
その名も帝王ダー К パフェクションは急におでこにしわをよせ、
目を細めて不機嫌そうな顔をして息子に対して静かに話し出す。
「今ので確信した。お前は帝国の維持、拡大だけにとらわれ、
民の幸福には目を向けられていないようだ。
仕方がない…、バイオレーンズよ、お前にこんなことをしなければならないとは…。
だが民の為だ、はっ!」
「親父、一体何を…!ああああぁぁぁ…!」
白髪のまじったいかにもカリスマ性を感じさせるような老人は、
何もないところに何やらループの入り口のようなものをつくりだし、
息子と思われるダー К バイオレーンズをその中へ吹き飛ばし、その入り口をとじてしまった。
「お父上、兄さんに一体何を!」
「あやつには次期皇帝としてふさわしくなってもらわねばならんからな。少々試練を与えねばな。」




