表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/37

CHAPTER7:帰還の旅路

ミクレスは、ラミネに次の目的地を伝え、共にひたすら北へと向かっていた。

果てしなく続く平原の先に、ぼんやりと雪山が見え始めていた。


ラブレイズの本部は、帝国との国境であるその雪山のすぐ手前にあり、

ラブレイズ自治組織(東西南北支部&本部)の中でも最も北に位置する。


ミクレスは、ラミネがリンディア人だとラブレイズの者に

気付かれないように、魔法の使用禁止と、彼が身につけていた懐剣を

腰に掛けるように言った。

幸い、リンディア人には民族特有の容姿や衣装がないため、

ちょっとした細工を加えるだけでもある程度は通用する。


しかし、バレてしまったときは非常にマズイ。

リンディア人のラミネはもちろん、ミクレスの処分もただでは済まされないだろう。

それはミクレス自身も重々承知していることであるし、

ラミネだってそれくらいは言われなくても判っている。


正直、ラミネをランツの家で待機させ、

任務を受けた後に迎えに来るという方法でもよかった。

しかし、それでは時間制限のある任務などのときには

ランツの家に立ち寄ることさえもできないし、

何よりスホウが何故かそれを許さなかったのだ。


しかし、ミクレスがある意味仲間を裏切る危険な行為を行い、

彼女を旅のお供として連れて行こうとした理由は

スホウの強制や仕方ないなどの軽いものではなかった。

実は、ミクレスは彼女に「連れて行って」と叫ばれたときは、正直否定するつもりであった。

その気持ちを変えたものというのは、彼女の強い{眼}であった。

ミクレスがあのとき、振り向いて彼女を眼を見たとき、彼の心境は一変した。

彼女の眼は、自分の持つ大きな意志を強く語っていた。

少なくとも、ミクレスはそう確信している。

彼女は単に旅を楽しむためにそう頼んだのではなく、

自分の心にある重い何かを納得のいくものにするために頼んだのだと。


しかし、ラミネには旅についてくる代わりに、

ミクレス自身のペースを乱すことは許さないと約束させた。

たとえば、ミクレスの朝から夜まで歩き通すというたびのスタイルである。

もちろん、もしこれで彼女が自分についていけないというのならば、

その場に置き去りにしてやるつもりだ。


ラミネはミクレスとお揃いの(ランツから貰った)ウエストポーチに手を入れ、

手のひらに包み込んでしまえるくらいの小さなボトルを取り出した。

「あ、間違えた」

ラミネは咄嗟に呟く。

「どうした?」歩きながらミクレスは聞いた。

「いえ、ちょっと間違っただけ」

ラミネが手にしていたボトルは、女神の神泉から取り入れた、

不思議な力を持つ水を入れたボトルであった。

彼女は普通の飲み水とはっきり区別するため、

ボトルの大きさが違うものにして入れておいたのだが、やはり間違えてしまったのだ。


ラミネは神泉の水が入ったボトルをバッグに戻し、次に大きなボトルを取り出した。

こちらは普通の飲み水が入ったボトルである。

ラミネはふたを開け、のどを潤した。


彼らは、ミクレスの旅のスタイルに従って本部に向かっていた。

普段、徒歩で長距離を踏むことがなかったラミネは、

きっと一歩一歩が辛いはずだ。

そう感じたラミネに、ミクレスは声をかける。

「お前、こんな歩き続けで大丈夫なのか?」

ラミネは俯いていた顔を上げ、こう答えた。

「うん。それに、約束したし」

出発して三日目になるが、彼女は決して弱音を吐くことはなかった。


この分だと、後二日もあれば目的地に辿り着くだろう。

期限的に余裕だったが、ミクレスはあえて休息をとることはしなかった。


北に向かうほど、肌寒い風が吹き通るのがわかった。

雲際に見えていた国境の雪山は、もうその巨体さをあらわにし、

その影を正していた。

もうすぐ、本部のあるアレが見えることではないだろうか。


ミクレスは歩きながら言った。

「ラブレイズ本部は、あの雪山のすぐ手前につくられている。

 後もう少し歩けば見えてくるだろう」

「うん」

ミクレスはラミネのほうをチラっと見やると、

彼女はどことなく力強さを感じさせるような笑みを浮かべていた。


ミクレスは、他にも自分たちと同様に本部へと向かっている者たちと出会ったりすると

予想していたのだが、ここまできてまだ誰一人として

そのような者とは会っていなかった。



そしてまた一日が過ぎ、とうとう雪山の入り口付近まで来ていた。


ラミネはあたりを見渡した。しかし、本部といえるものらしき建物はどこにもない。

あるのは雪山と、木々と草原だけであった。

あちこちに目を回すラミネに、ミクレスは一言声をかけた。

「こっちだ」


ラミネはミクレスの後について歩いた。

とうに枯れ果てた木々の中を通り抜け、彼らは広場なようなところにでた。


その広場の中心に、まるで人の形をしたような奇妙で巨大な木があった。

ミクレスは黙ってそれに近づいた。


そして、巨木の周りを歩き始めて、何かを探し出した。

ミクレスはあるところで足を止め、その視線の先には目印のような跡があった。


ミクレスは巨木を見て言った。

「ここだ。ここが、ラブレイズ本部への入り口―――」

そして、ミクレスはその目印を強く押した。

次の瞬間、その部分が強くめり込み、ちょうど人が入れるくらいの穴が現れた。

とたんに、白い冷気が漏れ出す。


「凄い・・・これなら、襲撃されることはまずないよ」

「まあ総隊長さんは用心深いお方だからな」

ラミネは目を丸くして穴を見つめていた。


「さあ、急いで中へ入ろう! 誰かに見られていてはマズイ」

ラブレイズ本部は、この入り口の秘密を公にはしていない。

それは、総隊長フォローガル直々の命令であった。



ミクレスとラミネは、急いで穴の中へと入っていった。



{そう感じたラミネに、ミクレスは声をかける}

この部分、ミスです。

{そう感じたミクレスは、ラミネに声をかける}

です。

いやー恥ずかしいです(汗)

もっと文章読み返します!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ