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CHAPTER29:討伐の独自任務

―――ミクレスたちの目の前で、信じられないことが起ころうとしていた。


 カリドールは、ダークネスフラグメントを飲まされた男から離れた。

 

 男は何かに苦しみ喘ぐ。ウガウガと悲鳴を上げているのもつかの間、男の肉体は真っ青になり、突然変異を始めていた。


「なによ……あれ……」

どうやらF・Iも、ダークネスフラグメントの効力を知るのが始めてだったらしい。見るにも耐えない酷い光景に、二の句がつげない状態に陥った。


 ミクレスは背筋が凍りつきそうになった。額に汗が吹き出る。やばい。やばすぎる。かつて雪山で出会ったときに感じた恐怖より、さらに大きな恐怖に駆られた感じだった。


 男は、もはや人間の原型さえも失い、二メートル以上の醜い怪物へと変化した。あばら骨が胸から飛び出ており、その中は真っ暗になっている。髪は全て脱毛し、血管のようなものが浮き出た頭だけになってしまった。腕や脚は、さきほどの男の六・七倍は太くなっており、今にもはちきれてしまいそうなほどの筋肉へと膨れ上がっていた。背中からはヌルヌルしてそうな触手が何本も蠢いており、とても見るに耐えない。顔は、瞳が消えた目と、大きな牙、浮き出た血管が特徴だ。その全てがもはやこの世のものとは思えないほどの異常さで、一言で言えば、{魔人}だった。


 「ククク、フハハハハハハハハ!!! どうだ! 見たか、これこそダークネスフラグメントの力だ!」

カリドールは高らかに笑う。今の彼は、正真正銘の悪魔だった。


 ミクレスは剣を抜こうと腰に手を触れた。しかし―――


「ちっ、あいつらに奪われたままだったぜ……」


そう、捕まった際にログタントから奪われたままで、取り返すのを忘れていたのだ。もちろん、短剣や懐剣なども根こそぎ奪われており、もう戦えるものなど何も無かった。


「逃げるぞ! F・I!」


ミクレスは慌てて叫んだ。F・Iははっと気がついて、「ええ」と小さく言った。


 F・Iはスカイボードを取り出し、崖の外に投げようとした。しかし―――


「えっ!?」

何かがボードにぶつかり、ガンという音と共に、F・Iはスカイボードを落としてしまった。


 スカイボードはひっくり返り、そのまま荒野へと落下していってしまった。どうやら、反対向きだと浮かないようだ。F・Iは悔しそうに振り向き、カリドールを睨んだ。


 「フフフ、逃がしはしないよ。特にそこの女、私たちの秘密を知ってただで帰れると思っているのかね?」

低く冷たい声。その言葉には、殺すという意味が暗示されていた。


 F・Iは拳銃を抜いた。まずはカリドール。ヤツを倒さねば、後々厄介である。


 カリドールはわざとらしく大笑いした。

「ハハハハハハハハハ! そんな子供だまし、私には通用しな―――――」

そのとき、カリドールの皮肉っぽい言葉が留まった。


 次の瞬間、カリドールの脆弱な肉体は、変化した魔人の腕の下敷きになっていた。


「……!?」

ミクレスとF・Iは息を呑んだ。どうやらこの魔人は、敵と味方の区別がつかないらしい。


 カリドールを下敷きにしたその腕の下にある地面は、大きくへこみ、そして亀裂が走っていた。さすがダークネスフラグメントの力だ。たかが岩盤くらい、ただの脆い塊なのだ。


「おいおい、どうするんだよ……さすがにあんなの倒せそうにねえぞ?」

ミクレスは焦って呟く。F・Iも恐怖に震えていた。



 カリドールは起き上がることはなかった。この戦いでの第一の戦死者はカリドールだった。



F・Iは咄嗟にバズーカ砲を取り出した。そして魔人に狙いを定め、耳をつんざく爆音とともに、ミサイルを発射した。


 天に昇るのではないか、と思わされるくらいの煙が舞い上がった。ミクレスはこの光景に見覚えがあった。


「あ……セレディーの……あれ、あんただったのか?」


セレディーで、ミクレスが魔獣に殺されかけたときも、似たような爆発のおかげで無事助かることが出来た。あのときも同じように、もの凄く黒く、火を伴った煙が舞い上がっていたような記憶がある。


「セレディー?……ああ! あのときは、ナイス援護射撃だったでしょ?」

意気揚々と呟く。しかし、安心していられる暇もなかった。


 大煙の中から、魔人の影が現れた。どうやら全く効いていないらしい。


「でも、あのときもあんなふうに、化け物には通用しなかったわよね……」


 今度の敵は、傷一つついていなかった。首をボキボキ鳴らし、ピンピンした様子で近づいてくる。


「こりゃ倒せませんわ……どうする? 諦めて殺されちゃう?」


「バカを言うな! なんとかして逃げるに決まってるだろ」


 ミクレスは広場の周辺部を駆け出した。どこか降りれそうな岩棚があれば、そこから抜け出すことができる。崖下ばかりに注意を払っていた、そのときだった。


「なっ!!」


ミクレスの眼前に、青白い巨体が現れた。


「やっ! ちっ!」


ミクレスは後ろへ跳んで攻撃をかわした。


 巨体は黒色の爪をピンと立てた。腕には血管がビキビキと浮き出、次の瞬間、その搾取に見舞われることになった。


 「わわっ!」

巨体は爪による高速の攻撃を繰り出してきた。それは、全てが突き。そしてその全てが地面に突き刺さり、地面は粉々に砕かれていった。


 ミクレスはかわすのがやっとだった。服が爪によってボロボロに破られ、ところどころに傷を負う。


「マズイわ……あのままじゃ、あの子……」

そのとき、F・Iはついにアレを使うことを決心した。


 背負っていたバッグの中から、折りたたみ式の変な銃を取り出した。それは、バズーカに勝るとも劣らずの大きさの銃で、先端になるほど銃口が大きくなっていくという形状になっている。F・Iはすばやく弾を詰め込み、暴れる怪物に視点を合わせた。


 

 「ミクレス! 離れて!」

F・Iの叫び声が聞こえた。ミクレスは凄まじい連打の中、なんとかスキをつくって敵の股下にもぐりこみ、そのまま魔人の背後へと抜けた。


「今だ! やれ!」

ミクレスは叫んだ。そして、できるだけ被害を抑えようと魔人から離れた。


 次の瞬間、ボンという音と共に高速のミサイルが魔人へと直撃した。


 爆発はバズーカより凄まじいものであった。魔人の身体は宙に浮き、それに追い討ちをかけるかのように二度目の爆発をする。さらに地面に着地した後、三度目の爆発を起こした。


 これはさすがに効いただろう! ミクレスは急いでF・Iのもとへと近づいた。


「何をやった?」


「特注品の拡散型榴弾銃よ。たった一つの弾丸で五発は爆発するわ」


ミクレスの質問に答えながらも、F・Iは次の攻撃の準備をしていた。また銃に弾を詰め込み、標的を捉える。


 魔人はよろよろと立ち上がった。

「ウガアアアアアアアアアア!!」

耳をつんざくような雄たけび。しかし、F・Iの攻撃によって遮られてしまった。


「あんなクズ野郎、倒してやるわ! ミクレス、あんたも手伝いなさい!」

「お、おう!」


向こうでは何度も爆発が起こっている。魔人には、確実にダメージを与えていた。


 ミクレスは大きなバズーカを手渡された。というか、使い方もわからないのにどうしろというのだ。


「おい、これどうやって使うんだ?」


「それは五発くらい連続で打てるから! そのまま引き金を引けば発射するよ!」


そしてF・Iの三度目の攻撃。また爆発が拡散する。


 ミクレスは言われたとおり、起き上がる魔人に視点を合わせ、思い切り引き金を引いた。


 ボンという音と共に、バズーカから何かが発射されたのを感じた。反動で吹っ飛びそうになる。


「よし、もう少しよ!」


 F・Iの言うとおり、魔人はもう立ち上がるだけで精一杯のようだった。足が震え、よろけふためいている。F・Iはとどめの一発といわんばかりに、最後の弾丸を発射した。


 弾丸は魔人に向かって直進していった。そして、当たったかと思うともの凄い爆風と煙を引き起こして爆発する。大きな爆発とともに、魔人は宙に浮き、またその途中で爆発した。最後に地面についたあと、今までで最高かと思われるような爆発を引き起こした。


 高台の表面はボコボコであった。ところどころで穴があき、地表が陥没したり砕けたりしている。そんな中、F・Iはハッと笑った。


「ふう……なんとか片付いたわね」


 F・Iはため息をつくと、拡散銃をバッグへと直し始めた。


「ほんとにやったのか……?」

煙が上がっていてよく見えない。でも、F・Iが言うのなら本当なのだろう。


 


 ミクレスは安心したようにその場に座り込んだ。


「まったく、もう死ぬかと思ったよ」


 死闘の末に、決まって口にするこの言葉。でも、本当に死ぬかと思った。


 F・Iも疲れたように腰を下ろした。

「ほんとに……こんなにヒヤヒヤしたのは何年ぶりかしら」


F・Iはまた三角座りをしていた。ミクレスは目をそらして注意する。


「どうでもいいけど、その体勢やめろって!」


「はっ!?なんであんたそんなとこばっかり見てんの?」


「……っ」


なんであんたそんなとこばっかり見てんの?そんなことを言いながらもにやけているF・Iに、呆れてものも言う気になれなかった。







何はともあれ、討伐できたんだからいいんじゃないですか♪


それにしてもバズーカなんて大胆なモノ使いますよねぇ……しかもバズーカが効かなかったなんて、どんだけぇー^^;



次回、いよいよ三国の戦争が始まります……

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