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CHAPTER24:魔法国軍の進撃

「明日にはラフェルフォードに進撃を開始しよう」

フィアーシル四天王で、リンディア最高司令官のヴィランティアが言った。


 ここはミクレスがちょうどログタントに気絶させられたときのリンディア。そして、リンディアの最高階級の{七賢者}による会議が行われていた。七人は皆、紺色のローブを着、辛辣そうな面持ちで円状に座っていた。


 「異議あるものはいるか?」

ヴィランティアの険しい口調。どうやら他の六人も賛成らしく、異議を述べるものは一人もいなかった。

「よし、そうと決まれば早速出発の準備をしよう」

ヴィランティアが言うと、七賢者の一人、クラフィスが

「私は各地方に極秘礼状を書いて届けます」と言った。


 続いて一人、また一人と自分の役割を述べていった。ヴィランティアは黙って聞き、その都度頷く。そして最後の一人が役割を言い終えた後、自分に残された役を自分に言い聞かせるように言った。

「ならば私は魔法使い育成機関セラフィーフォースターの者どもを収集しておこう。彼らは第一線を担う大事な戦士たちだからな」


 ヴィランティアは立ち上がった。そして、立ち去りざまにこういう。

「会議は終了だ。各々は持ち場についてくれ」





 ここは魔法使い育成機関セラフィーフォースター。そこでは、いつもと変わらず厳しい修行が行われていた。セラフィーフォースターに所属する魔法使いたちは超エリートたちで、過去の経歴を辿っていってもここから国を動かす為政者が生まれることも少なくない。実際、フィアーシル四天王のヴィランティアもここを卒業している。


 セラフィーフォースターはまるで学校のようなところで、毎日十限目まで授業があり、朝の早くから夜の遅くまでずっと自らの魔法を磨いている。もちろん、風術系魔法なら風術系魔法の、炎術系魔法なら炎術系魔法のコースがあり、それぞれの意思に応じて自由に選択できるようになっているのだ。

 

 また、各コースにもランクがあり、たとえば炎術系魔法コースならC〜SSクラスまでなど。それぞれの力量に見合ったランクが設定され、確実に力を付けられるように国は提供している。


 ちなみにここは破壊系魔法SSクラス。険しい表情で真剣に授業に取り組む生徒の姿があった。

 「ハァアアアアアア!!」

SSクラスの生徒でさえも、破壊系魔法の修行にはかなりの体力を使う。精神を統一し、気持ちを集中させ、そして魔法弾を放つ。たったこの一連の動作だけでも、想像以上に疲労がたまるのだ。


 部屋は道場のようなところで、しかしとても広い空間である。他人の放った魔法弾が当たらないように広い造りになっているのだ。

 

 人々が集中して練習をする中、ただ一人クククと笑って立っている男がいた。身長は百八十センチくらいで、髪はふにゃふにゃだが一つに固められている。顔は白く、口紅をつけメイクをし、気障な目と尖がった鼻が特徴だ。全体的に身体が柔らかいサーカス団のピエロのイメージがあり、肌が真っ白で不気味な笑みを浮かべていた。


「おいこのオカマ野郎! 気が散るんだよ! やる気ないなら家帰って寝てろ!」

ある大柄の男が、クククと笑う男に近づいて怒鳴る。笑う男は大柄の男を横目で見た。


「ああ、コラコラ……ケンカはやめてください! ……ラウクさんも、真面目に練習に参加してくださいよ……」

先生がやってきて言った。ラウクとは、クククと笑い、オカマと呼ばれた男のことである。ラウクはいつも不気味に微笑んで、つまらなさそうに練習を見つめていることから、先生たちを困らせている生徒の一人だ。


 ラウクは先生と、大柄の男の腹部に手を当てた。そして、ニヤリと不気味な笑みを見せた後、こう唱える。


「プラットライン」


その瞬間、ラウクの手から大きな白い光が現れた。次の瞬間、白い魔法弾となって先生と大柄の男を吹っ飛ばしていった。


「ウフフ、あたしに歯向かう者はどうなるか、思い知ったかしら?」

男なのに{あたし}だなんてなんだか気色悪い。だが、その実力は並ではなかった。


 先生と大柄の男は、壁を突き破って向こうの部屋へと出て行ってしまった。それほどまでに、強力で危険な力、プラットラインのことを説明しよう。


 プラットラインとは、破壊系魔術最強の技。その力はあらゆるものを粉砕し、破壊するといわれている。破壊対象は、主に物体(人体を含む)で、これにやられたものは再生までに通常の数倍の時間がかかるらしい。もちろん、その威力に見合った体力を発動時に奪われる。それを容易く発動させることのできるラウクは、やはりただものではないということがおわかりいただけただろう。


 部屋中の生徒や先生たちが凍りついてしまったかのように動きが止まった。そして、震えながら吹っ飛んだ二人の行方を捜す。二人は悲鳴さえも上げず、ただじっと壁の向こうで倒れていた。


 ラウクはまたクククと笑い、近くで呆然と立ち尽くす生徒の一人を呼んだ。

「ねえそこのナイスガイ」

生徒は目を見開いてラウクを見つめた。

「え、は、私ですか……?」

とてもおどおどしている。それもそうだ。たとえ破壊系魔術を使いこなすことができるにしても、それを人に、ましてや同じクラスの生徒に使うなどとは思ってもいなかっただろう。そんなことさえも平気でやってのける彼には、逆らってはいけないと直感した。


 「早く助けてあげたら? ほっとけば後数分で死んじゃうよ?」

生徒は震えながら何度も頷いた。そして、ラウクに背を向け、二人のもとへと駆けていった。


 「なぁラウク、もう少し軽い魔法使ってもよかったんじゃないか?」

ラウクといつも一緒にいる男、クルックが言った。ラウクは苦笑しながら答える。

「ヤダわぁ。クルックまでそんなこと言うの? あたしちゃんと急所を外してあげたのよ?」

「……いや、そういう問題じゃ……」

急所を外したからといって、一般人でしかも敵じゃない人たちにプラットラインを使うのはさすがにどうだろう……。まあ、本当に殺さなかっただけマシか。


「さてと、あたしはそろそろ休憩するわ。面倒くさくなっちゃった」

ラウクはつまらなさそうに言い、クルっと振り向く。クルックはやれやれとため息をついた。


 そのときだった。

 部屋を出ようとするラウクの前に、頑固なしわが刻まれた男が現れた。

「あら、ヴィランティア様じゃなくて?」

ラウクは微笑んで聞く。ヴィランティアはラウクの顔の前に手を出した。


「プラットライン」


「っ!!!」

ラウクは咄嗟に両手で顔面をガードしたが、吹っ飛ばされしまった。しかし、何故か空中でバック転をし、見事綺麗に着地することができた。


「酷いわね。……もしあたしがマジックバリアーを使ってなきゃ、顔ごと吹っ飛んでたところよ」

ラウクは怒ったように言う。ラウクの腕の服は破かれ、中の皮膚も赤くただれていた。


 周りの生徒たちは、そんな反抗的な態度をとるラウクに驚いた。また、最高司令官たる男の攻撃を難なく防御したことにも驚愕していた。


 そして、ヴィランティアが入ってくると、ラウク以外の全員がひざまずき、地を向いた。

「風紀を乱す愚か者には制裁を下さなければならない、と、言いたいところだが、君は大事な戦力だ。今ここで首をとってやってもいいのだが、実に惜しい」

ヴィランティアは歩きながら言う。ラウクはフンと鼻を鳴らして言い返した。

「惜しいですって? たった今殺そうとしていたくせに」


 ヴィランティアはそれを軽く無視して、会議の結果を報告した。

「さきほど七賢者による今後の予定に関する会議が行われた。そこで、明日、ラフェルフォードへと進撃を開始することが決議された。したがって、本日の訓練は中断し、明日の進撃に備えてゆっくり休んでくれたまえ」


 生徒たちは驚いて顔を上げた。互いに顔を見合わせ、部屋中にどよめきが走る。その微妙な空気を打ち破ったのが、ラウクだった。

「それってさ、たくさん人殺していいってことよね」

あたりは静まり返った。

「まあ、言い換えればそういうことだ。ただし、敵をな」


 ヴィランティアの返答に、ラウクはこの上ないほどの不気味な笑みを浮かべた。


「そりゃ面白い。血が騒ぐわ……」





 



破壊術系魔法最強のプラットラインの「ライン」には「壊す・破壊する」という意味があります!ちなみに思いつきなのでプラットは大した意味はありません〜。


さてさて魔法国軍も進撃を開始しました! ラブレイズ本部も崩壊し、フォローガルやシズも帰国途中。ほぼ無防備なラフェルフォードの、運命はいかに!?


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