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CHAPTER21:セトゥルメント




ミクレスは本部に。フルクとアレイラはラフェルフォード城へ。ラミネはスホウのもとへ。

また、フォローガルとシズは帝国軍へと侵略を開始しました。


ちらつくログタントの影。迫り来る三国大戦争。果たして勝利の行方は……?


事態は思わぬ方向へと進行する!

――――二人の剣が今、交わり合った。


 彼らの視線の先に、無数の火花が飛び散る。


 フォローガルの左手にしっかりと握っていたはずの剣が、空高く弾き飛ばされてしまった。


(やはり、力だけでいけばヤツのほうがやや上……か)


「相変わらずの馬鹿力だな!」

フォローガルは静かに言った。威厳のある低く唸るような声だ。


 ルルカはニヤっと笑い、大剣を大きく引いて、まるで剣の五月雨が起こっているかのような高速の突きを繰り出した。


「むっ!」

フォローガルは唸った。反撃のチャンスがうかがえない!


 これはルルカの対フォローガル用の作戦であった。得意の大剣のリーチの長さをフル活用し、相手を接近させないことでフォローガルの二刀流を封じる。速さに重点を置いているフォローガルの剣は、細く短い形状になっているため、敵に近付けないと反撃することが出来ないのだ。


 以前のルルカはもっと豪快で単発的な攻撃がメインだった。それが自分のとりえだと思っていたし、その闘い方に誇りを持っていた。しかし、それだけでは超えられない壁があると知った彼は、力だけではなく速さにもこだわり始め、とうとう両方を併せ持つ無敵の剣士へと成長したのだ。


(あの剣で速攻は不可能だと思っていたが……。さすが四天王と呼ばれるだけあるということか)

 フォローガルはそんなことを考えながら、チラっと片目を空にやった。さきほど弾きあげられた剣が、もうすぐそこまで落ちてきている。


 彼はルルカの攻撃をしゃがんでかわし、落下地点に到達しそうな剣を、片手をスっと差し伸べてつかまえた。


(む……あの体勢で剣をつかまえたか……さすが、ジジイになっても四天王ってわけか)

ルルカは攻撃をやめなかった。二刀流になったところで、この状況で反撃など不可能だ。何も恐れることは無い。


しかし、フォローガルは攻撃をかわしながら、どこか自信気な表情を浮かべていた。

「おいおい、二刀流のわし相手にそれは悪手だろ……」


フォローガルは身をかがめ、次の瞬間脚のバネをフルに使って地を滑るように跳んだ。そして片方の剣でブレーキをかけ、ルルカの真下からほぼ九十度向きに剣を投げつけた。


「っ!」

ルルカは間一髪のところで顔を逸らし、直撃はまぬがれた。しかし、頬に掠り傷を負う。


 一瞬止まったルルカのスキを、フォローガルは見逃すことは無かった。剣を軸に、ルルカの側面にもぐりこみ、剣を横腹に突き刺した。


「ぬぅ! あぁ!」

ルルカは低く唸った。大量のつばを吐き出す。


 フォローガルはその巨体の横をすり抜け、投げつけた剣の落下地点に入った。もともと相手の注意を引くために軽く投げただけだったため、剣はもう落下地点間際に来ていた。


 しかし、フォローガルの視線は剣には向いていなかった。ルルカの不断な精神力は、たとえ怪我を負おうとお構いなし。案の定ルルカは、剣を横になぎ払った。フォローガルはしゃがんでかわす。


(くっ……危ないところだった)

気付いたときにはもう、フォローガルの手には二本の剣が収まっていた。


「剣が二つとなれば、攻撃の範囲も手段も大幅に広がる。接近させなければ安心だと油断していたのが裏目に出たな」

ルルカの間合いから離れたフォローガルは、半ば挑発気味に言う。


「以前はあえて何も言わなかったが、おぬしがわしに勝てない最大の理由を教えてやろう」

威風堂々とした口調、恐れも躊躇いもない淡々とした物言い。


 そして、フォローガルの鋭い目がルルカを睨んだ。


「バカだから」


「……」


ルルカは黙って聞いていた。しかし、怒りに震えている様子がよくわかる。


 フォローガルはさらに刺激するかのように、続けて罵った。


「わしは経験不足の浅知恵小僧に負けはせん」



 ルルカはそれを聞いて笑っていた。不敵で、不気味な笑い。


「クハハハハハ! 言ってくれるねえ!」


そして、顔の血管がはちきれそうなほど浮き上がる。


「では経験不足の浅知恵小僧に負けてもらおうかあ!」


ルルカは飛び出した。両手で剣を振り上げ、着地寸前で振り下ろす。


フォローガルは速やかに回避したが、そこにあった地面が大きく陥没してしまった。


(このに及んでまだ威力があがるというのか……)


地面の陥没したところから、回避したフォローガルの足元まで大きな亀裂が走っていた。

フォローガルの額に汗が流れる。


 人は感情によって自分でも気付かないほどの潜在能力を引き出すことが出来る。

 感情とは、激昂を中心とした、嫉妬・屈辱・憎悪・悲嘆・哀傷など、多種多様であるが、

これらの感情を心底思うことで、通常では考えられない能力を発揮することが出来るのだ。


 しかしここまで超人的な能力が発動されると愕然としてしまうものである。剣で地を割るなどといった神技は、七十年間さまざまな剣豪と戦ってきたが今だ皆無だ。


(しかし残念。冷静を失うと周りが見えなくなる)


フォローガルはニヤリと笑った。そして、矢倉(城壁や城門の高楼)の近くに避難し、ルルカを誘導させた。


「ちょこまかちょこまかと逃げ回りやがって!」


反撃のスキならいくらでもある。だが、あえて反撃はしない。


 フォローガルは、矢倉のそばに来て、矢倉を支える主な四本の柱の一本を傷つけた。相手に見つからないように。


 次の一撃、大剣はフォローガルの頭上を通過していった。そして、傷つけた柱の部分に直撃し、その部分を吹っ飛ばしてしまった。


 メキメキという音が鳴る。


 どうやらルルカもそれに気付いたようだった。


「……そういうこ……!!」


フォローガルは思い切り剣を顔面に投げつけた。ルルカは対応しきれず、直撃はまぬがれたものの、転ばされてしまった。


 次にフォローガルはもう一方の柱を滅多切りにした。ルルカも何が起こるかわかったようだ。次の瞬間、矢倉はゴゴゴという音を立ててルルカのほうに倒壊していった。


 「ぬっ!」


ルルカは逃げようとした。しかし、それもフォローガルの想定の範囲内。フォローガルは回避しようとするルルカのひざに剣をなげつけた。


 「ぬああ!!」


 ルルカは悲鳴をあげた。脚がカクンとして動かない。もうすぐ頭上には矢倉が……。



 矢倉はルルカを下敷きにして倒壊した。辺りにほこりが巻き起こる。


 砂煙の中、フォローガルは一発目に投げた剣を拾いに行った。


 (おぬしの敗因は、バカだから)


 フォローガルは城壁を見上げた。その中間くらいに剣が綺麗に突き刺さっている。


「ふむ……あれじゃ、ちと取れんな……」


 どうしようか、困ったものだった。とてもじゃないが、何か引っ掛けるものがなければ登れそうにも無い。フォローガルはしばらく上を眺めていたとき、城壁の上に現れた何者かに目をやった。


 「こちらは二隊ほど消しておきましたよ」

シズだ。滑らかな口調、滑らかな体格、滑らかな顔立ち。下からでもよくわかる。あれはシズだ。


 シズはフォローガルから目を移し、砂煙が舞う倒壊した矢倉のほうに目をやった。

「これまた派手にやったみたいですね。どんな打ち上げをなされていたんですか?」

半ば呆れた様子で言う。


 フォローガルは返答しなかった。


 「シズよ。お前の下に剣が刺さっておろう。それを取ってくれんか?」

「下……ですか? ……ああ、ありました。アレですね」


シズは下を見つめ、城壁にめり込むように突き刺さる剣を発見した。


「あの、一つ質問いいですか? どんなことをすれば、こんなところに剣が刺さるのです?」

「ちとルルカと対戦してな。そのとき投げた剣がそこに突き刺さったのだ。まあ少し取りにくいかもしれんが、取ってくれ」


シズは了解した、と頷いて城壁を下りはじめた。


別に慎重でもなく、やはり滑らかに下りていった。


やがて剣の位置に到達した。シズは剣を抜き、その後はそこから飛び降りた。


 シズはフォローガルに剣を手渡した。フォローガルは黙って受け取る。


「さて次はあの巨体に刺さった剣を抜きに行かねばな……」


「……まったく、帝国軍最強のルルカを倒してしまうなんて……」


シズも気付いたようだった。{氷の白影}の討伐。以前は思わぬアクシデントのため、フォローガルは彼を見逃してしまったみたいだったが、今度こそは、完全に仕留めたのだ。


「フン、所詮は帝国軍最強だ」








大変お待たせいたしました! 待望?の第二部更新開始! より物語が深くなると思いますので、三国の名前とミクレス・ラミネ・フルクのことを思い出して置いてください! ←生意気ですみません;;自重。



では、第二部、お楽しみください!

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