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CHAPTER19:一対の神威

――――これは、ミクレスたちが魔獣を倒したときの夜の話である。


無数の転がる死体の中に、二つの黒い影が見えた。


「やれやれ、帝国軍の前線部隊といっても、所詮この程度か」


・・・フォローガルだ。


「弱肉強食の社会といっても、あながち強い者ばかりではないということですね」


そして、シズ。


二人は、胸にラブレイズの紋章が着いた同じ黒服を着ていた。

フォローガルのほうは左右の腰に白く光る剣を掛け、

いっぽうシズは特異な形状の黒い剣を背中に掛けている。

その剣は彼らの愛用しているもので、さらにフォルムに特徴のあることから

剣豪たちから注目を浴びている無二の剣なのだ。


彼ら二人は、ラブレイズで第六天とともに指示を与えた翌日、

帝国軍へと進出し、前線部隊を殲滅するという奇襲をかけていた。


といっても前線部隊の殲滅だけではあまりに早く終わってしまい、

もう数部隊潰しておこうという話をしているところだった。


「ここはもう誰もいないでしょう。次の拠点に向かいましょう」

シズは滑らかな口調で言う。

フォローガルは、相変わらずの鋭い目つきで答えた。

「ならば二手に分かれよう。同行するだけ無駄が多い」

「ええ」

シズは遠くを見るように呟いた。

「まずはそこにいる敵を片付けてから」


シズとフォローガルは、物陰に隠れる何者かに気付いていた。

二人はそちらを見遣る。それでも出てこないので、フォローガルは辛辣そうに叫んだ。

「そこにいるのはわかっておる。隠れていないで出て来い」

「・・・・」

何者かは正体を現した。

ひょこひょこと現れたその者は、ボロボロの服を着る痩せこけた子供であった。


子供は現れるなりガタガタと震えながら棍棒を持って構え、

歯を食いしばりながら叫んだ。

「お、お前ら、こんなことして、どうなるかわかってるのか!!?」

ところどころでつっかえながら言い切った。


それを見た二人は、互いに顔を合わせてから子供に戻す。

「どうやら奴隷みたいですね。相手にするだけ無駄です。放っておきましょう」

シズは滑らかに呟いた。フォローガルも賛同する。


二人は子供に相手をすることもなく、振り向き立ち去ろうとした。

「ま、待てよ! 話を聞け!」

放っておくと言っているのに、あくまでも呼び止めようとする子供に、

フォローガルは刺すように鋭い視線を浴びせて言った。

「わしらは奴隷に用はない。しかし小僧、事情が変わればおぬしの首なぞ今すぐにでも刎ねて やってよいのだぞ?」


子供はその場で凍りついたように固まった。

それを見た二人は、何事もなかったかのように立ち去った。



「では二手に分かれますか」と、シズ。

「よし、ではわしは向こうを担当しよう。シズはこちらを頼む」


そして、二人は左右に分かれ、それぞれの戦いへと向かうのであった。



フォローガルは辺りを警戒しながら、前方に見える第二前線部隊の拠点に向かった。


フィアーシル島の夜は基本的に明るいため、火がなくとも大丈夫だった。


フォローガルは拠点の門を開けた。

彼の十倍ものある、巨大な木の門である。

周りも同じような高さの木の柵で囲まれており、

外からは中の様子を窺えない仕組みになっていた。


門は意外と重かった。ゴゴゴという大地を引きずる音がする。

そしてフォローガルは、門の先に待ち構えていた予想外の敵に唖然した。


「待ってたぜ。きっと来てくれると信じていたよ」


「・・・まさかおぬしがここにいるとはな・・・まったく考えても見なかった」


フォローガルと向かい合う巨体の正体は、

帝国軍最強の剣士、ルルカ・シャトルークであった。


ルルカはいつもと同じく白く厚い鎧に身を包み、

その巨体さえも凌駕する、フィアーシル最大級の大剣を右腕に持っていた。


ルルカは百キロもあるかと思われる大剣を片手で、しかも高速で振り回すことや、

人を殺すときに何の躊躇いもなくむしろ笑いながら殺す冷酷さから、

生涯無敵の大剣豪として恐れられてきた。


しかしあるとき、ラフェルフォードの最強の剣士、フォローガルと対峙することになった。

そして、激しい闘いの末、ついに彼は負けてしまった。

それは彼をさらなる強さへと追いやる要因となった。

ただ振り回すだけでは超えられない壁があるということを思い知らされた。


そして今、彼は再びフォローガルの前へと立ちはだかった。

ヤツを倒し、再び最強の座を取り戻すために。


「俺は生まれて初めて負けを知った。最強の剣士の座を手にしてからな。

 それがどれだけ屈辱的だったか、貴様にはわかるまい」

ルルカは剣をブン、ブンと二回振ると、その剣先をフォローガルへと向けた。


「最強の剣士の座か。わしに負けたということは、はなっから貴様は最強ではなかったという

 ことではないのか?」

フォローガルはたしなめるように言った。


ルルカの顔に血管が浮き出る。

「調子に乗るなよクソジジイ!!」

そして前傾姿勢になり、駆け出した。


「性懲りもないひよっこめ!」

フォローガルも駆け出す。そして二つの剣を抜いた。




邂逅、そして、ぶつかり合った二人の意志。

伝説の再戦、果たして勝利の行方は―――



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