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CHAPTER10:フルクと愉快な仲間たち

眼前には、男と女の二人組みが立っていた。

男のほうは、肩くらいまで伸びた金髪と、とても格好良い顔つきが特徴の、

十六歳くらいの少年だ。赤色のローブと、背中に背負う巨大な弓も印象的だ。

身長は百七十五センチ強で、ミクレスを少し見下ろすくらいである。

一方、女のほうは、ラミネと同じくらいの身長、百五十五センチ強くらいで、

髪の毛は黒。ポニーテールが特徴だ。

さらに、くりくりした目を持つ顔とは裏腹に、へそが見える騎士の鎧を装着していた。


男女の上から下までを見つめているとき、行商人が叫んだ。

「へい! お待ち!」

ミクレスは慌てて振り向く。そして、彼が商品を受け取っているときであった。


金髪の少年が目を細くして、さらに格好の良い顔をしてラミネを見つめた。

「なんと美しい・・・。貴方のような綺麗な方と

 共に調査をできるなんて、まるで夢のようです」

そして、ラミネのあごを優しくつかむ。

少年はラミネに顔を近づけ、優しく微笑んでから呟いた。

「やはり・・・今日こうして出会えたことは、何かの・・・」

「あ、あの・・・いきなりそれは・・・」

ラミネは後ずさりして、困ったような顔をして言った。


ようやく、ミクレスは商品を受け取り、売買を終えたところであった。

そして、困るラミネに妙に近づいて口説く少年を見て、こう呟いた。

「なんだ? あいつ」

同じくその様子を見つめていた女が、呆れたように言う。

「フルクは大の女好きで・・・。ちょっと可愛い子見つけたら

 あんなふうに口説きはじめるのよね・・・」


ミクレスは手荷物をバッグに入れながら、独り言のように言った。

「ああ、いわゆる女たらしってヤツか」

そして、世も末だな、と思った。


その言葉をひそかに聞いていたフルクという男が、

ミクレスに接近して語り始める。

「女誑しとは人聞きが悪い。俺は女を誑しているのではなく、

 女を愛しているのだよ。女を愛することこそ、我々男どもの使命!

 恋をしたことある者にはわかるはず。この気持ち、この熱烈な感情!

 ああ、可哀想な坊や、君は恋をしたことがないんだね・・・」

フルクは大袈裟に、落胆したような仕草をした。


ミクレスは恋をしたことがなければ女に興味さえもなかったため、

この男の言葉には理解に苦しんだ。

いや、恋をしたとしても理解に苦しむだろうと思った。

「どうでもいいけど、お前頭痛いだろ?」

咄嗟に出てきた言葉がコレだった。

ミクレスの中での結論。{こいつは頭がおかしい}だ。


フルクはやれやれといった仕草をし、また変なことを言い出す。

「愛することはそんなにおかしいことか? それでは男として最悪だぞ?」

頑固としても自分の意見を曲げないフルクに、

まるで子供をしつける親のような態度で女は呟いた。

「とにかく、いきなり女の子にあんなことをするのは失礼だわ、フルク」

「そうか、それは失礼」

本当に気障キザな物言いだった。

しかし、ラミネはニコっと笑って答えた。

「いえ、気にしてませんから」


女は一度頷いてから「じゃそろそろ本題へと入りましょうか」と言った。

「ああ、それよりまず確認だ。お前らラブレイズから来た調査メンバーのヤツらか?

 ん? 待てよ。手紙には一人だと書いていたぞ」

さきほどの上品キザさを忘れさせるような口調で、フルクが言う。

ミクレスは咄嗟に答えた。

「こいつは今回の調査に特別に加わることになったんだよ」

「そうか」いぶかしげにフルクは言う。

しかし、次の瞬間、また気障な少年になって言った。

「ま、女だから許そう」


ったく、折角ラフェルフォード城下町まで遠回りして来てやったというのに、

こんな変人と一緒になるなんて・・・。

ミクレスはため息をついた。自分がナメられているように感じられて仕方がなかった。

「さて、確認もとれたことだし、自己紹介といこうぜ。俺はフルク・ライラフォルだ。

 弓術の達人として世に聞こえている」

「いや、女誑しの達人ってことでよく知られているよ」

ミクレスは揚げ足を取るように言った。

つーか普通、世に聞こえているなら自分を自慢するか?


少年は首を横に振りながら呟いた。

「失礼な・・・。では君は何という名前なんだい?」

「俺はミクレス」


その瞬間、フルクは驚いたように目を見開いた。

「ミクレスって・・・まさか、ラブレイズ本部所属の、あのミクレスか!?」

どのミクレスかは知らないが、そうだ。


ミクレスは、最少年ラブレイズ本部所属ということで、非常に有名である。

特に、同年代の戦士の中では知らないものはいないほどだ。


フルクはつまらなそうにフンと鼻を鳴らした。


フルクと一緒にいた女は、フルクに一瞬視線を送った後、名を名乗った。

「あたしはアレイラ。王国軍として剣士を志している」

続いてラミネ。

「私はラミネ。よろしく!」


こうして、四人は無事?自己紹介を済ますことができた。



四人は、行商人のそばから離れ、木の木陰に入った。

そして、そこに腰を下ろし、調査云々についての話を始めた。

「今回の任務はセレディー大雪山の調査だ。

 聞くところによると、それほど危険でもなく、むしろ楽だと聞いた。

 国王陛下から直々にな」

そういうとフルクは腕組みをする。

「あの辺りにはアクスラ機関が根を下ろしている。

 おそらく、彼らも独自で調査を進めているだろう」と、ミクレス。



そんなこんなで、彼らの話は長時間へと続いた。

日が暮れ、そろそろ夜になるというころ、彼らはいったん解散することにした。

「では出発は明日にしよう。今日はそこの宿屋で休むといい。

 安心しろ。俺が宿屋の店長に言っておいたから。タダでいける」

「誑しのくせに気が利くじゃないか」

「その呼び方はいい加減やめろ」



愉快。ただその一言である。

女誑しのフルクと、それをなだめるアレイラ。

なんだか今回の旅は賑やかになりそうだ・・・。


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