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暗闇グルメ  作者: 八花月
8/11

8. これが答え?

 帰り道は丘を突っ切らず、ぐるっと回って元の家へ向かう。

 小さい作業小屋らしきものや、畑のような場所を通って丘を回り込み、やっと二人のいる母屋に辿りついた。

「どう?」

 正一が短く、峻に訊ねる。

「鯨の肉はありませんねえ……他に使えそうな物も……あ、猪はいましたよ」

 ふん、と藍は鼻を鳴らした。

 何か考えている様子だ。

「柵があって……何匹か寝てました」

 猪じゃあしょうがないでしょう、と正一がため息をつく。

 この様子だと、皆収穫はなかったようだ、と峻は思った。

「鍋はあったよ」

 藍は口を開いたかと思うと、金属製の鍋を床に投げ出した。

 ガランガランと派手な音がして、床を転げまわる。

「やけくそにならないでくださいよ」 

 正一が拾い上げて、中を覗く。

「まあ……使えそうですね。洗えば」 

「あたしらが食うためのものを作るために、使うんじゃない。ついでにいえば、多分誰も食わないし。余計なことを考える必要はない」

 気分の問題ですよ、イヤだなあ。真面目に答えられると。

 とか何とか、ブツブツ言いながら、正一は目線を当て処もなく彷徨わせている。

「これは幽霊様の口に合うものを作らなければいけない、っていうことじゃない。クイズみたいなもんなんだ。気持ちとか気分は関係ないよ」 

 幾分か、トゲトゲしさが藍から消えたように見えた。

「クイズ……」

 何か、峻にピンとくるものがあった。

 今までこれは、普通に考えてはいけない、と考えていたがむしろ普通に考えたほうがいいのかもしれない。

 ある意味ここは、人工的な世界なのだ。

『ゲームみたいなもんなんだよな』

 クイズ、という言葉に峻は引っかかっている。

『ゲーム、ゲームってことは……』

 必ず正解があり、それに向かう手順がある。

 言い換えれば、不可能なことを問題にはしていない。はず。

「明かりか何かありませんかね?」 

 峻は、唐突に言った。

 他二人が顔を見合わせる。

「明かりねえ……何かに使うの? 料理する時にあればいいんじゃない?」

 正一は面倒くさそうだが、峻は意に介さなかった。

 峻は、もう動き出している。

 今いるんですよ、今!

 ガサガサその辺を漁りながら、声を張り上げた。

 暗いので、もう手当たり次第である。

 他に妙案があるわけでもないので、藍と正一も手伝い始めた。

「蝋燭があったよ」

 藍が腕を上げて言った。

 良く見えないが、その手には蝋燭が握られているのであろう。

「火が……」

 火が点けられればいいのだが。と峻は思う。

「私、ライター持ってます」 

 正一が曇りのない、朗らかな声を上げた。どういう精神状態なのか。

 とにかく問題は解決した。

 峻は、それを受け取り屋外に駆け出す。

 後ろから、二人とも追いかけてきた。

「案外義理がたいんですね」  

 並走している二人に、峻は話しかける。

「待ってたって、わけわかんないからね」

「好奇心ですよ、好奇心」

 気軽に声を揃えた。

 妙な大人だ、と峻は思ったがそう悪い気もしない。 

 丘を越え、叢を抜ける。

 むせるような緑の匂いを掻きわけて、猪の檻に着いた。

 まだ、猪達の寝息が聞こえる。

 手に持った蝋燭を掲げ、火を点ける。

 走ったせいで体温が上がっており、皮膚に触れている部分の蝋が少し融けていた。

「何があるんです?」

 正一の言葉を尻目に、峻は心許ない蝋燭の火で何かを探している。

「あ、ほら、これ」

 見つかったようだ。

 薄汚れた、木製の看板だった。

 この牧場? の入口らしきところに立てかけてある。

 峻達は裏側からここに侵入していたのだ。

 こちら側から入るのが、本来のルートなのである。 

 看板に書いてあるのは、

『猪』 

 の文字であった。

「見りゃあわかるよねぇ」

 藍が軽く舌打ちする。

「間違いない!」

 峻が大声を上げ、他二人を驚かせた。

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