病院の夜
西向きに建っている我が家に、沈みかけの夕日が照りつけていた。
倒れていた、祖母に話しかけると意識があった。
「今日は、行けなくてごめんね。」
弱々しい声で、そう言ってくれた。
「救急車?救急車?」
僕は、おろおろして何もできなかった。
結局、祖母は自分でゆっくり時間を掛けて起き上がり、自分で救急車を呼んだ。
救急車の中で、ずっと祖母が「ごめんね。ごめんね。」と繰り返し言っていた。
病院に着き、処置室に入りずっと点滴を何時間もやっていた。
大事には至らなかった。
ただの風邪をこじらせただけだったが、元々、持病があり体力がなかったのと、心労がたったのが原因だった。
点滴を受けている間、祖母は深く眠っていた。その横で僕は、泣きながらずっと祖母に謝っていた。
医者に「今後もありえるから、おばあちゃんを大切にね。」と言われた。
僕が、守れなかった。
強くならきゃいけない。
そう思ったのと同時に、卒園式に来なかった祖母を一瞬でも恨んでしまった自分が悔しかった。
点滴が終わってから目覚めた祖母の第一声は、やはり「ごめんね。」だった。
僕は、照れ臭かったけれど
「これからは僕が守ってあげる。」と言ったのを覚えている。
それを聞いた祖母は、ニッコリ微笑んだ。
病院を後にするとき、フラフラ歩く祖母の手を僕は引いて歩いた。
強くならきゃいけない。
そう決めた、夜だった。