小学校一年生
朝から蝉が精一杯鳴いていた。
夏休みに入り僕はラジオ体操に参加していた。
皆勤賞はお菓子が貰えると聞いて毎日行っていた。
この日もラジオ体操を終えて家に帰る途中、寄り道をしてカブト虫を探していた。
街灯の下には虫が集まり、早朝ならカブト虫やらクワガタがまだ下にいたりする。
僕は、捕まえて自慢する為にあらゆる街灯の下を探し回っていた。
友達がミヤマクワガタを捕まえたと自慢していたので必死だった。
森の小道にぽつんとある、街灯の下を探している時に夢中になっていると何かを蹴った。
よく見るとみかんの段ボールに子猫が三匹入っていた。
二匹は元気に僕の顔を見るなり飛びだしてきたが、一匹は様子が違った。
目が見えない子だった。
僕は幼いながらに捨てられたんだと悟った。
同時に僕と同じだと思った。
すぐにカブト虫を諦めて段ボールを抱えて家に帰った。
家に帰るなり祖母に事情を話して飼ってもいいか聞いた。
祖母は動物が好きだったので問題ないと思っていたが、猛反対され僕は泣きながら友達の家を回った。
この子達をちゃんと飼ってくれそうな家を回って貰ってくれませんかと聞いてあるいた。
朝飯もお昼も食べずに回っていたら元気な二匹は貰い手がついたが、目の見えない子だけが残ってしまった。
ひぐらしが鳴きはじめたころには、知っている友達の家は全部回っていた。
なにかとても悲しくなって泣き虫な僕は気付いたら段ボールを抱えてわんわん泣いていた。
段ボールの中の子猫もニャーニャー鳴きだした。
もうどうしようも出来なくて家に帰った。
ダメ元で祖母にもう一度頼んだ。
「ちゃんと面倒みるからお願い。」
「その子の目になれるかい?」
「ちゃんとなるよ。」
祖母は根負けしたのか、最初からこうなるのを知っていたのか、朝とは打って変わって優しかった。
僕はその子にクロと名付けて一緒に暮らすことになった。
目が見えず、ご飯などで不自由をしていたが必死に生きようとしているクロを見て僕も頑張らなきゃと思った。
近所の我が家の事情通達は気味悪がったり、貧乏なのに目の見えない猫なんか飼いだしてとか言っていたが、冬になる頃にはみんなクロのファンになっていた。
僕の家族が増えた小学校一年生だった。