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再会

冷たい風の中にも暖かい日差しを感じていた。


僕は、祖母に買って貰ったランドセルを背負っていた。

今日から小学生になる。

期待とか希望に満ちて、僕は小学校の入学式に出席した。


自分の席に着くなり僕は、落ち着くことができず、ずっとキョロキョロしていた。


後方の保護者席を振り返ると祖母がニコニコしていた。

そして僕と目が合うと、声は聞こえないが、「ちゃんと前を向きなさい。」そんな口の動きをさせて、手で前を向く様にジェスチャーをしていた。

隣の子も、同じやり取りをしていた。

僕は、そのやり取りを出来たことが心の底から嬉しかった。


僕は、ずっとご機嫌だった。


式が中盤に差し掛かった頃、会場の体育館の入口が大きい音を立てて開いた。

何事かと目をやると、入口には東京にいるはずの父親がいた。

かなり風貌は変わっていたが、一目でわかった。


後から聞いた話だと、音信不通だった父親を祖母が何度も何度も、いろんな所に電話を掛けてようやく連絡がついた。

僕の入学式に行くことに、乗り気ではなかったそうだが、祖母が無理矢理呼んだそうだ。


きっと祖母はサプライズのつもりだったのかもしれない。

でも、僕は少しも嬉しくなかった。


母親も父親も弟も全て忘れて思い出さないように頑張っていたのに、突如現れた父親に色々な感情が湧いてきた。

憎しみ。

多分それだと思う。


気が付いたら、父親を睨みつけていた。

何分睨み続けたかわからないが、何回も父親と目があった。

帰ってほしかった。


結局、式が終わるぐらいまでずっと入口の近くで立っていた父親を睨んでいた。


式が終わった後、祖母に手を引かれ父親の所に行った。

何度も会いたくないと拒んだが、わざわざ来てくれたからと聞いてもらえなかった。


僕は父親の前に立った時、ずっと下を向いてうつむいていた。

しばらく沈黙だった。

祖母が、話を振ってくれていたが僕と父親の間には会話はなかった。


「久しぶりだな。」

久々に聞く父親の声だった。


父親の顔を見上げた時、おもいっきり顔面を叩かれた。

ものすごく痛くて耳がキーンとなった。

それを見ていた祖母は、父親になんで叩いたんだと大声を出していたが、父親は遮って僕に言った。

「辛いのはお前だけじゃないんだ。」

父親は、泣いていた。


今考えてみると、父親もあいつ犯人あいつに狂わされた被害者の一人で相当苦しんで、悩んだと思うし、再会した息子に睨まれるまれた父親は相当辛かったと思う。


でも、当時の僕には訳がわからずただ叩かれた右頬が痛かった。


それから一言も話さず父親は東京に帰っていった。







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