人は巡りて
生ある物はいずれその命を全うし、此の世から無くなる。
人間にせよ、動物にせよ……。
人の死は突然で、考えもしない内に果ててしまう。
「寿命」というものだろう。
ある程度の覚悟や準備なくして去る場合、その言葉さえ遺された者は受け入れられない。
昨日まで、一週間前まで元気で生きていた人が、突然に此の世を去ってしまった時程、周りの人間は尚更受け入れ難く、途方に暮れる。
けれど人は巡りてまた此の世で生きる。
運命に従い。
何の前触れもなく突然死を迎えたとしても、巡り巡ってまた此の世に誕生する。
どんな人生を送るかは分からないけれど。
人はそうやって歴史を紡ぐ。命を繋ぐ。
母が突然他界した。本当に突然に。
一週間前、御墓参りに一緒に出かけた。
けれど数日後、体調を崩し入院。
いつもの入院で、暫くすれば帰宅できると思っていたし、医師の説明もそうだった。
……なのに。
母は無言で帰宅した。「ただいま」 もなしに。
生き絶える母を目の当たりにした時、母の靴を胸に抱き、私は叫んだ。
「この靴を履いて帰るんでしょ! 何でそこで寝ているの⁈」
無駄な言葉だと分かっていたけれど、余りに突然の出来事に受け入れられないと。
けれど暫くたち、少しずつ現実になってきた時に、「人は巡りてまた此の世に生まれる」
ゆっくりとそう考えた。
生あるものは天に還り、また生まれる。
流した涙は故人を偲び、笑った分だけ思い出す。
巡り巡りてまた会える日まで。