『 バディ と 道すがら 』
バディには未だ判明していない事実が多数ある。
バディとして選ばれる生命は両者が同じ日同じ時間に生まれていることが条件であり、この両者が生まれてくるタイミングには他の生命は一切生まれないこと。
本来喋る筈が無い動物達が喋ること。
照らし合わせたように同じ場所にいること。
バディのコンビは解消できるものでなく、政府に管理されていること。
そして、バディの研究はある日を境に禁忌とされたこと
現在芽吹が通う国立大学はその波を受けバディ研究学を廃止にされ、今はバディ心理学としての学問を開いている。
「でも、バディに関する学問が少なくなっている今、心理学でも勉強になるよね!!」
これは新入生の為にサークルレクリエーションを打ち合わせしていた時の先輩の言葉だ。
確かに思っていた学問とは少々異なっているが、そもそもバディに関する学問が廃止になっている今の時代から考えてみれば我儘は言えないのかもしれない。
「でもやっぱり僕は知りたかったな……」
芽吹は数ヶ月前この学校に入学した時のことを思い出し、億劫になりながら加入したサークルのメンバーが集まっている集合場所へと歩いていた。
「過ぎたことを思い卑屈になるのは勝手だが、今日くらいは印象を気にした方がいいのではないか?」
ナッツはこれからのレクリエーションに期待しているのか足早に先へ先へと歩いている。
「ナッツとはずっと一緒に暮らしてきたけど、どうしてそこまで他人と付き合うのが楽しみなのか理解できないのだけど……」
「他人と付き合うことが楽しみだけだと考えているから理解できないだけなのではないか?」
芽吹の問いに対しすぐに返答を返したナッツは更に先を先導するかのように歩いて行った。
バディとはいえ仲の良いバディ、仲の悪いバディは必ずいる。芽吹のバディ、ナッツの見かけは老犬を感じさせない毛色の艶、がっしりとした足の筋肉が特徴的だが、どこか古臭さを感じる口調、達観した物言いを好んで行っている。そのような態度に対し芽吹はなんの問題も感じていないが、いざ意味深長な事を言われると、どのように受け止めるか困惑してしまう。その点に関しては決して仲の良いバディではないと芽吹は感じている。
「なんにせよそろそろ皆が集まっているサーカス会場が近い、少しはシャキッとしてくれ」
赤と白の縞縞模様のテントが見え始めたのかナッツは尻尾を大きく振りながら芽吹に呼びかけた。
……振る舞いは大人びているのに性根は子どもっぽい。
芽吹が昔から感じているナッツの率直な印象だが、これはナッツ本人には一度たりとも話したことはない。僕はナッツよりも客観的に物事を見ることが出来る。それを感じさせないことがより大人らしいと芽吹が考えているからである。