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クリスマス2014

イベントものは書きづらいんじゃぁ _(;3 _/∠)ゞ

「何をしているのかしら?無風?」

「…………木に飾り付けをしているんだ」

「木って貴方……それ本物じゃないわよ」

「…………本物は飾り付けが大変だろ、それに毎年木を買うのも馬鹿らしい」

「ふーん、なるほどね。つまり無風がしている事は毎年ある行事って事であってるかしら?」

「…………話が早くて助かる」


 自分の部屋でクリスマスツリーを仕立てていると、孟徳が部屋にやってきた。

 そこで冒頭の会話に繋がり今に至る。

 しかし、何故自分の部屋にクリスマスツリーを立てているんだと言うと……

 純粋に"やった事がない"のだ、クリスマスという行事を。

 俺の家元はそこまで古くからある武家の家系ではないが、曲がりなりにも武家なのだ。

 だからかは知らないが、外国の宗教から来た風習であるクリスマスやバレンタインなどを経験した事がない。

 それだけならば孟徳に言ってクリスマスを開催してはどうかと言えばいいと思うだろう。

 だが、それを言うに言えない事情がある。

 何故かこちらにも年末は大掃除をし、年始には正月があり旧年が無事に終わった事と新年を祝う行事があるらしい。

 なのにクリスマスは知らない。

 この情報だけで陳留の現状が分かる奴は分かると思うが……

 既に一年最後の大掃除へ向けて準備の真っ最中なのだ。

 孟徳や妙才に流琉などの自他共にしっかりしている面子は掃除がしやすい様にと家具を少し動かしていたり、掃除する前に要らなくなった物をある程度纏めておくなどしているくらいだ。

 そんな所にクリスマスだ!なんて言える程、俺は猛者ではない。

 だから自分の部屋にこっそりとクリスマスツリーを立てているだけに留めるという結果になった訳である。


「それで無風、その行事は天の国の年末年始に行う行事か何かかしら?」

「…………いや、違う」

「え?じゃあ、何時やるのよ」


 孟徳が怪訝な顔で俺とツリーを交互に見やる。

 本当なら教えたくはないが、ここで変に誤魔化そうとすると孟徳の機嫌が悪くなるので諦めよう。

 

「…………12月25日」

「……今日ね」

「…………そうだな」

「何故早く言わなかったのかしら?」

「…………言えると思ってるのか?」


 質問に質問で返すのは卑怯だとは思ったが、それ以外に返しようがない。

 数秒してから孟徳がため息を吐いて椅子に腰掛ける。


「確かに皆が年越しの為に大掃除をしようって時に言うのは厳しいわね」

「…………」

「でも、なら何故もっと早く私に言わなかったのかしら?」


 顔はニッコリと笑っているが彼女から醸し出される黒いオーラが怒りの度合いを示していた。

 自分だけならば臆する事は無いが、この状態の孟徳に話しかけられる奴は少ない。

 面倒極まりないがそれで非難されるのは自分だ。

 正直に言うしかない……よなぁ。


「…………俺もよく知らない」

「……はっ?」

「…………俺自身も初めてだから、自身が持てなかった」

「ちょっと待って。それは天の国の風習なのよね」

「…………そうだ。だから北郷あたりは知ってるだろうな」

「劉備のとこの……」

「…………孟徳なら分かるだろうが、簡単に言えば家のしきたりでな」


 自身の家での事を思い出したのか、なるほどと呟きながらも渋い顔をする。

 

「じゃあ、どうするのよ。何も分からないのにそんな物を出して」

「…………いや、何をするかは知っている。が、経験は無いというだけだ」

「何をするのよ」

「…………人によっては家族で過ごしたり、恋人と過ごしたりする……らしい」

「へぇ……恋人と…………ねぇ」


 ああ、もうその喋り方だけで大体どんな顔をしているのか分かった。

 十中八九悪巧みを考えてる様な笑顔をしているだろう。


「そう、分かったわ。ありがとうね、無風」

「…………あぁ」


 そこで部屋を後にする辺り、外堀を埋めに行ったんだろうなぁとどこか他人事の様に現実逃避しながら飾り付けを再開する。

 それから幾分か時間が経ってから孟徳が再度部屋を訪れてきた。


「無風、買い物に行くわよ。付いてらっしゃい」

「…………元譲」

「調練で忙しいわ」

「…………妙才」

「桂花の書類整理が滞ってるらしくて、それの手伝いとして今は手が空いてない」

「…………」


 心の中で「あぁ、これは逃れられないな」と思ってしまった。

 この分で他の面子の名前を挙げて言っても何かしらで手が空かない状態なのだろう。

 なんせ、孟徳が「~らしい」といった曖昧な表現は殆ど使わない。

 確実且つ正確な情報を求める彼女からして"らしくない"言動に白旗を上げる。


「…………わかった」

「ん。物分りが良くてよろしい。それと……」


シュルッ……… 


「今日は"それ"を付けるのを禁ずるわ」


 そう言いながら孟徳は俺の目隠しを外し、そのまま没収された。


「…………無くすなよ?」

「誰に向かって言ってるのかしら?そんな事しないわよ」


 後ろを振り向きながら笑顔で答える孟徳。

 これ以上は時間の無駄だと言う様に若干足早で廊下に出て城門に向かう。


(男は諦めが肝心だと、誰が言ったのやら……)


 心の内側でため息を吐きつつ、孟徳の後ろを歩きながらその背中を眺める。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「…………それで、何か目的は?」

「無いわよ?」

「…………さいで」

「目的が無ければ買い物に出かけては駄目?」

「…………駄目」

「あら、どうして?」

「…………冬の風は体に悪いからな。孟徳の体が心配だ」

「…………」

「…………」

「ふふふ、大丈夫よ。だって」


 孟徳が(おもむろ)に腕を上げたと思ったら、俺の腕に絡めてきた。


「私の体が冷えたら、貴方が温めてくれるもの」

「…………やめろ」

「嫌よ」

「…………その言い方、誤解しそうになる」

「あら、そっちだったの。私はてっきり……」


 孟徳の言葉を遮り、視線を合わせてからニヤリと笑って言葉を返す。


「…………こんな可愛い子に抱きつかれて、嫌な男は居ねぇよ」

「なっ・・・!」

「クックック」


 孟徳が少し顔を赤く染めて目を見開く。

 その様子がおかしく、思わず笑い声が漏れる。

 まぁ、斯く言う俺自身も小っ恥ずかしい言葉だった為に言葉が汚くなってしまったが。


「あ、貴方こそ止めなさい。その言葉」

「…………これでお相子だ」

「まったく………」


 それからというもの、服屋に本屋、飲食店から武器屋まで様々な店を練り歩いた。

 総じて一連の出来事を辿ると、中々に楽しい買い物だったな。

 服屋でどちらの下着がいいか選択され、いっそのこと下着無しは?と言ったら、まち針が飛んできたり。

 本屋は本の内容よりも値段に目が行ってしまい、どうすればもっと安く売れるのかを何故か真面目に考察したり。

 飲食店は最高だった。

 店先に夏侯惇饅頭とか言う代物が出ており、食べると夏侯惇様の様に強くなれる!とかいう看板まである始末。

 これには俺も孟徳さえも笑ってしまい、勢いで購入して食べては見たが、味も中身もただの饅頭。

 それさえもおかしく笑い合いあった。

 武器屋には孟徳の愛用する絶のレプリカが置かれており、孟徳はその出来の悪さに店主を呼び出し激怒。

 そしてどこから出したのか、絶を一つ店主に渡して見本をやるから作って見せろと言って店を出た。

 

 そんなこんなで随分と城から離れた位置まで来た俺たちは、どうせここまで来たのならと街の一番外側まで行き、暗くなってきた地平線を眺める。


「…………」

「…………」


 先程までの騒がしさは何処へやら。

 無言のまま地平線を、空と地の境界線を眺める。

 すると視界の隅で孟徳が一度震えた。


「…………こっちだ」

「あっ」


 孟徳の手を取り、近くにあった樹の下まで移動する。

 この時、既に孟徳の手は冷え切っていた。


「…………着てろ。暖かい」

「えっ?」


 いつもの黒い上着を脱いで孟徳の上から着せ、樹にドカッと寄りかかり孟徳を引き寄せる。


「ちょ、ちょっと!」

「…………いいから大人しくしとけ」


 自身は胡座をかいた状態で座り、その中に孟徳をすっぽりと入れて抱きしめる。


「……あったかい」

「…………そりゃどうも」

「ねぇ、無風?」


 孟徳が首を回してこちらを見上げる。

 

「…………なんだ?」


 一瞬言うかどうか迷った様に目を泳がせていたが、意を決したのかこちらの目と合わせて問いてきた。


「どうして貴方は、私の軍に居るの?」

「…………は?」


 いきなり訳の分からない言葉を孟徳の口から聞いて間抜けな声を発してしまった。

 すると孟徳は顔を前に戻して下を向いた。


「だって、貴方は私の軍で一番強いじゃない。今は知名度が無いから誘いは無いけれど、貴方なら引く手あまただったとしても不思議じゃない」

「…………買いかぶり過ぎだ」

「いいえ、正当な評価をしているつもりよ。それに、貴方なら私から軍を奪って自ら旗揚げする事もできる。どうしてそれをしないの?」


 正直、何を言ってるんだ?としか思えない。

 孟徳だって人間だから、弱音を吐く事もあるだろう。

 愚痴りたい時もあるだろう。

 だが、今回のその不安は一体どこから来るものなのか。

 判断がつかない。


「…………どうしてそう思う?」


 俺もこうべを垂れて孟徳の耳まで口を持ってゆき、囁くように声をかける。

 同時に腕と足を締めて、孟徳と更に密着する。


「だって、無風……貴方は私の真名を呼んでくれないじゃない」

「…………」

「最初の頃に言ったけれど、真名を預けたにも関わらず呼んでくれないのはその人を認めないのと一緒なの。確かに、私はそれでもいいとは言ったわ。でもね?私だって一人の人間で女の子なのよ?疲れも傷つきもする」

「…………それで?」

 

 最初、孟徳の言いたい事が分からなかったが、喋っている途中で気がついた。

 理由なんか無いのだと。

 日々の生活の中で溜まりに溜まってきた不安や不満が爆発したのだ。

 こうなったら最後までその不安を声にして出させなければ確実に孟徳の心に残ってしまう。

 だから先を促す。


「貴方にとって私は何?ただの従える君主?それともこの先でのし上がる為の餌?ねぇ、答えてよ。無風」


 あぁ、迂闊だった。

 俺は真名なんて風習の無い世界で生きてきた。

 だから、真名の意味を自分だけの一方的な価値観で見ていたのかもしれない。

 そのせいで孟徳がここまで苦しんでるとも知らず。


「無風、答えて頂戴。貴方にとって私がどんな存在なのか。教えt……っ!んっ!」

「…………んっ。ちゅ……ちゅる。んく………」

「んん!……ちゅぷ……んっ、ちゅっ…………っ、んふっ」


 抱きしめていた両手のうち、左手を使って孟徳の頬を押してこっちを向かせ、キスをする。

 どれくらい長くキスしていたかは分からないが、お互いの息が苦しくなるまで口づけを交わした。


「ん………はぁ!はぁ…はぁ…」

「…………落ち着いたか?」


 孟徳と目を合わせると、いつもより目が潤んでいる気がする。 


「……も………バカ……変な気を使わなくても」

「…………俺はな、野心なんてもんは持ち合わせてない」

「………」

「…………ただただ、生きるためだけに誰かに仕えてる訳でもない」

「そう……」

「…………まぁ、野心があるとすれば」

「えっ?ちょっ!?何……を!んん!んむ……ちゅ」

「…………ちゅ…ぷ、ちゅる………んっ……」


(好きになった女を独占したい……くらいだな)


 最後の言葉は心の中で呟き、自分の体の中で逃れようと藻掻く少女を逃がさないとばかりにより強く抱きしめる。


「ちょ…っと。んむ……はぁ……ちゅむ……い…痛ぁ…」


 痛いと言いながらも特に抵抗が強くなる訳でもなく、目をゆっくり開いて彼女をみると目に涙を溜めながらも蕩けた様にこちらを見つめ返してくる。

 やめろ、そんな目をするな。

 もっと欲しくなってしまう。

 少女の全てを、この身で奪いたくなる。

 そうして理性と本能が葛藤し続け、しばらくしてから唇を離した。


(なんとか……理性が勝ってくれた…か)


 二人で荒い息を吐きながら見つめ合う。

 すると、またもや視界の隅で何かが見え、視線を上…空へと移す。

 気付かなかったが、既に空は真っ暗になっており、月の光が降り注いでいる。

 そしてもう一つ……


「雪………」


 空からゆっくりと白い粒がフワリフワリと舞い降りてきた。

 そのうちの一粒が先程まで熱く交わされていた唇に落ちて、沸騰しそうに熱くなった唇と心をヒンヤリと冷たくした。


「…………ホワイトクリスマス」

「えっ?」

「…………今日のこの日をクリスマスと言ってな、雪が降るとホワイトクリスマスと言うんだ」

「そういえば、今日が何の日なのか聞いてなかったわね」

「…………孟徳にしては迂闊だったな」

「う、うるさいわね。次からは失敗なんてしないわ」

「…………いや」

「え?」

「…………俺と二人だけの時くらいは……女の子に戻ってもいいだろ」

「無風……」

「…………そんな関係で、そんな存在では駄目………か?」

「真名も呼ばないのに?」

「…………真名も呼ばない程に……だ」

「なにそれ」


 孟徳はクスクスと笑い、こんどは逆に孟徳の方から俺と密着する。

 熱が冷めてくると、周りの空気が冷えてる事を再度実感し始めてきた。


「寒くなって来たわね」

「…………そうだな」

「そろそろ帰りましょ……って言いたい所だけど」

「…………え?」

「にーいーさーまー?」


ビックゥッ!!!!


 かけられた言葉だけで体中の筋肉が痙攣を起こしたように固まる。

 視線だけで横を見ると流琉に文若、そして夏侯姉妹までもがそこにいた。


「何時まで経っても帰ってこない二人を心配して、皆で必死に探してたのに」


 流琉の目が怒りの炎で燃えてるのに、顔は今まで見た中で一番の笑顔。


「華琳様と無風に何かあったと思って心配してたけど、心配するだけ損だったわ。華琳様"だけ"は今もいろんな意味で心配ですが」


 怒りを通り越して何時もの罵詈雑言が全く無いという、逆に恐ろしく不気味な文若。


「覚悟はいいな?無風」


 いつもの元譲。

 だが、七星餓狼に注がれてゆく膨大な覇気が普段と桁違いな量で、七星餓狼が耐え切れずに振動し始めている。


「まぁ、あれだ。頑張れ」


 こちらは本当にいつも通りな妙才。

 今のこの状況だととても助かる。


「…………孟徳」

「何かしら?」

「…………助けてくれ」

「嫌」

「…………」

「しょうがないわねぇ」


 その言葉にホッとしたのも束の間。


「私をこんな状態にしといて、止めちゃうなんて酷いわ!」

「兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

「「無風ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」」

「…………っ!」


 直ぐ様孟徳から離れ、逃走を開始する。


「兄様!私にはあんなに甘くしてくれないのに、華琳様にだけなんてズルいです!!」

「わ、私はそんなんでヤキモチなんか………って何を言わせる気なのよ。この精液拡散発生発情男!」

「殺す!殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺」


 こ、怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?

 え?ちょっと待って。

 なんでこれ、俺のせいにばっかしされるんでしょうか!?

 というか夏侯惇さん!?

 恐ろしいを通り越して色々とやばいから!?


「ふふふ」

「どうでしたか?華琳様」

「ええ、少し……いえ、かなり気が楽になったわ」

「それは良かったです。それで、本当に助けなくてよろしいので?」

「ええ、だって無風が本気だったら彼女達は一歩たりとも動けられないもの」

「それもそうでしたな、しかし大丈夫なのでしょうか」

「平気よ、だって……」


 無風の上着を、まだ彼の熱の残っている上着をギュッと握りながら。


「私と無風はそういう関係……だもの」


 右手の人差し指で彼と触れ合った唇をなぞりながら、逃げ惑う無風とそれを追う3人を見つめる。


























 ホワイトクリスマス………悪くない日ね

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