龍玉
お前は私の手中の珠だ
我が掌に収まり 幾千の輝きを放つ
時に明るく 時に暗く 鋭く 鈍く
甘く 香る様に 匂う様に
其処に佇む
時折 自ら震えるように まろく
其の身を揺すり
我が掌を擽る
其の微かな振動は ゆるやかに 大きな悦びとなって
我が身の芯を伝い昇華する
ふと 悪戯心を起こす時
我が親指の爪にて 表面を滑らせれば
キィと 小さき音を立て
時にそっと 軽く握れば
静かに 其の身を留め
じっと 待つ
更に強く
握り締める指を
そっと力を緩め 開放する指を
再び我が掌にて 遊ぶ其の時を
我が指と爪に砕かれ 開かれた掌の上に
散らばり
新たなる姿のまま
未知なる輝きを以ってして
我が目を悦ばせる其の時を
残骸を磨り潰され
粉となり 霧となり
我が掌より 美しく
舞い飛び 旅立つ時を
うとうと と 微睡み
待ち続ける
私は貴方の 手中の珠
其の掌に収まり
其の指の間から全てを覗き
委ねる手の鼓動を感じ
甘く微睡む
其の手の中で 夢を見
其の手の中で 風を感じる
時に強く 握られれば
熱い血潮を感じ
包まれ
幸福を感じ
何時の日か 其の指で
其の爪で
砕かれ
新たに生まれる輝きを以ってして
目を細め嬉しそうに微笑む顔を想い
少しだけ其の悦びに身を震わせる
何時かこの身が
磨り潰され 粉になろうとも
今生の舞を想いを込めて
愛しい その掌より
舞い上がり
少しでも
少しでも 長く
少しでも高く 舞い上がり
ああ・・・
美しい・・・と
呟く貴方の声を うっとりと聞きながら
目を瞑り
空へ
無に
返る
前半と後半違う人物を描いてみました。