別世界(祭り作)
久しぶりに外に出たら、まるで蜂の巣を突いたような騒ぎだった。
「外周第一壁突破されました!!迎撃部隊第一、第二応答無し!!」
「迎撃部隊第三、救援申請!!」
「迎撃部隊第四、準備できました!!」
近くにいた連中に話を聞く。
「一体こりゃ何の騒ぎだ?」
「外周第一壁が鬼の進行で潰されたんだよ!!しかも同時に護鬼教もテロを始めててんてこ舞なんだ!!」
「そりゃ大変だ」
肩を竦める、おどけるような仕草に一瞬ムッとした様子のその従業員も、仕事があるらしくすぐに走っていった。
「まさかまた護鬼教の仕業か?」
まぁ、考えていても仕方がない。
久し振りにあのバカに会いに行くか。
「この世界は、遥か昔に鬼に一度滅ぼされかけた。その時、誰が何をした?アンドリュー」
「当時希少であった金と鉄の合金を使い、シルブレット・スクリーアが鬼に対して有効な武器を作りました」
「正解だ。ではなぜシルブレットは金と鉄の合金が鬼に有効だと気が付いた?キャシー」
「えぇと……。確か金のアクセサリーを着けた人と鉄のアクセサリーを着けた人が襲われなかったから?」
「語尾が気になるが正解だ」
ピリリリリリリリリ…。
「失礼」
教授は携帯を取り出した。
「私だ。どうした?……何?分かった」
「学徒よ、今、外周第一壁が鬼によって破壊された。一度寮に戻りなさい」
その言葉で一気に騒ぎだす教室。
「あぁーうるさいうるさい。そら、さっさと行く!!」
「おい、武章!!どうなってんだこれ!?」
「おぅふ!!」
あ、やべ、タックルしちゃった。
「涼成…。痛ぇよ」
「わりぃわりぃ。んで?」
「お前も知ってるだろ、鬼が来たんだよ」
「オッケー。おまえが言うんだ、間違いない。俺の武器はどこだ?」
「俺の部屋だ。ロックして「おまえの部屋だな!?サンキュー!!」あるんだが……」
武章の部屋だな。
よっしゃ、行くぜ。
「……で、言うことは?」
「悪かった」
鍵がかかっていたので、壊したら怒られた。
おまえそんなこと言ってねぇだろ!!
「……はぁ。まずいいや、おまえの給金で賄うから。さっさといけ」
「わかってるよ!!」
飛び出す。
「外に出る。全員を非難させろ」
「わかりました!!」
耳元の無線のチャンネルをオープンにしたのだろう。
そのまま、口元のマイクに話す受付。
「殲滅第一隊長、向井涼成が出ます。非難してください」
「よし、俺は後出るぜ?」
「御武運を」
「くそったれ、何だこいつは!?」
「あの隊長が来るまで持ち堪えりゃあ何とかなるだろ、来るぞ!!」
『ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』
それは、龍の形をしていた。
それは、角を持たなかった。
それは、人を喰わなかった。
しかしそれは、全てを壊した。
「おい、おまえら、大丈夫か?」
「…つ……あ?殲滅第一隊長?」
「あぁ、さっさと外周第二壁内にはいって護鬼教の制圧に回ってくれ」
「わ…かった」
全員が外周第二壁の中に入ったのを確認して、向き合う。
『ゴァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァァァァァァ』
「おうおうおう、やる気だなぁ」
散弾銃を構える。
「ただまぁ、まともにやりあうわきゃないけど、な」
引き金を引く。
即座に反転、近くの廃屋に身を潜める。
くそっ。
どんだけ生命力あんだよ!!
ポーチの残弾を確認……後10発。
装填中なのも合わせて28発か。
にしても…。
なんで角がないんだ?
ピリリリリリリリリ。
!!
ざっけんな!!
「こなくそ!!」
走りだす。
龍が此方に向かってくる。
引き付けて、引き付けて…。
すれ違う。
同時に三度引き金を引く。
ようやく、一息つける。
「なんだよ!?」
『すまない、そいつが最後だ。やはり此方で鬼繰師がいた。そいつも捕えたからさっさと戻ってこい』
どうやら、さっき助けた奴らが上手くやったらしい。
「なら、こっちも頑張んなきゃな」
ボッ。
煙草に火をつけ、口に咥える。
「来いよ、龍」
先程の突進で幾つかの廃屋に火が回ったらしい。
ひどく蒸し暑い。
残弾は残り三発。
どちらも満身創痍。
『グァァァァァ』
言葉は伝わらない筈なのに、俺にはそいつが『これで終わらせる』と言っているように聞こえた。
「オーライ。次で終わりだな」
何本目になるかもわからない煙草に火をつける。
『ゴァァァァァァアァァァァァァァァァァァァ』
「――い、おい、涼成!!涼成!!」
「……うっせぇ」
目を開けると、そこには武章の顔が。
「そこは美女だろう……!!」
「知るか!!んな冗談言えるなら大丈夫だな。すまない、運んでくれ!!」
どうやら担架に載せられているらしい。
横になって見れば、龍の死骸が。
背景の街並みでは、廃屋からあがっていた、燃え尽きようとしている炎が、幾筋の煙に変わろうとしていた。
規定の言葉を変えましたがこれくらいなら許容範囲だよね?
ダメなら連絡下さい