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第6話 「誕生日の基地」



@北海道共和国U109歩兵団基地―娯楽室

8月15日北海道標準時刻1055時


国分ライコ 中尉


「ああ~ひまだぁー」

 ハヤブサが古ぼけたソファーにねっころがりながらうだうだする。

「ゲームでもやる~?」

 テレビに家庭用ゲーム機を接続しているヒエンコが聞き返す。

「いいよ~どうせ大空戦でしょ~」

 確かに、実戦部隊にいるのになにが悲しくて戦闘機のゲームをせにゃいかんのかよくわからん。

「ライコ~なんかいいのないの~?」

「生憎。モンスターハンターハンターは注文したところだけど~」

 ハヤブサがこちらに話を振ってくるが、椅子の背もたれにもたれ掛かった姿勢を崩さずにいなす。

 ちなみにモンスターハンターハンターとは、ゲーム持ち込み禁止の学校の教師になって、授業中や休み時間にゲームをしている生徒を捕まえてゲームを没収するというクソゲー臭あふれるゲームである。もっとも、装備になぜか催涙ガス弾や発煙筒、グレネードランチャーなど学校内で使用したらあきらかに懲戒免職じゃ済まなさそうなものがあるのは気になるのだが。

 まぁ、生徒もバリケード作ったりG36(アサルトライフル)を使ってたりするから問題ないのだろうが。というか主人公強すぎ。これが生活指導部魂か。

「うだ~」

 ハヤブサがブラウン管テレビを点け、番組をいくつか切り替えていくが主婦向けの料理番組しかやっていない。

「はぁ、暇だ……」

 諦めたハヤブサがテレビのリモコンを放り投げる。

 投げられたリモコンは放物線を描いてリモコン入れに収まった。

「エアコンとって~」

 ヒエンコがリモコン入れに一番近い場所にいるハヤブサに頼む。

「ほぃ~」

 動く気0のハヤブサの代わりにエアコンのリモコンを出してヒエンコに渡すフタコ。

 ちなみに、エアコンとはエアコンプレックス……じゃなくてエアコンディショナーのリモコン、略してエアリモコンの略だ。

 いろいろ略した結果原型をとどめていないが、それは突っ込んではいけないことだ。

「そういやアメリカの方は大変らしいね~」

「あぁ~」

「あれ?たしか新型機投入されたらしいよね」

「……(コクコク)」

 レイコに話を振ると、シデンコとショウコが反応してきた。

「AH-70 アフロだっけ?」

「そうそう。なんか魔女が搭乗してるとシールドが張れるらしいね~」

 アフロなんてネタだとしか思えない命名だが、アメリカの原住民の名前からとっているから仕方ないらしい。

 ちなみに、アメリカ合衆国などとはクラックゥの攻勢の薄い(だが、無いわけではない)アラスカ付近を経由したルートでの通信や武器などの交易が辛うじて生きていて向こうの兵器などの情報も多少入ってくるのだ。

 噂によるとアメリカとカナダは大西洋に面した東部を完全に制圧され、砂漠地帯でなんとか迎撃しているらしい。

「なんか今度東部の小型拠点を制圧するためにBSR-71とかで爆撃するらしいよ」

「BSR-71ねぇ……」

 思わず見てみたいと思ってしまう。

 BSR-71とはアメリカの戦略偵察機、SR-71ブラックバードを改造した超音速・高高度爆撃機らしい。もはや変態兵器の香りしかしない。

 ちなみに、画像は画素数の粗いものしか通信回線の関係で送られておらず、BSR-71とかは文字情報がメインである。さっきかららしいらしいと連発しているらしいのもこのせいだ。

 しかもベーリング海にはクラックゥの超弩級拠点――いわゆる、“巣”がある。

 ちなみにクラックゥの出現と巣の発生は関係があるとされ、巣の出現とほぼ連動してクラックゥも出現している。

 そして、巣の中心にあるコアを破壊すると、クラックゥの出現と瘴気が消滅することもアシカガ作戦の際に確認されている。

 クラックゥには謎が多い。

 ――なぜ、現れたのか。

 ――正体はなんなのか。

 ――どこからやってきたのか。

 ――目的はなんなのか。

 謎ばかりだ。

 カチャ。

 律儀に制服を着たノリヒサがドアを開けて入ってきた。

「ちわ~す」「おかえりです~」「です~」「……(コクコク)」

 それに対して全員がそれぞれの反応を見せる。

「や、やぁ…」

 ノリヒサは微妙に戸惑った様子でそそくさと娯楽室の隅に置かれた北海道空軍の機関誌に手を伸ばす。

 機関誌をとったノリヒサはそそそっと隅の方の椅子に腰掛け、熱心に機関誌を読み始める。

 その間に他の面々は再びゲームを始めたり雑談を再開して、また元に戻った。



@北海道共和国U109歩兵団基地―食堂

8月15日北海道標準時刻1845時


国分ライコ 中尉


「ハッピバアースデイツトゥーユー、ハッピバアースデイディアライコー。ハッピバアースデイツトゥーユー」

 ふゅぅーー

 大きく息を吸い込んでから一気に吐き出すと、ケーキに立てられた18本のろうそくの火が一斉に消える。

 ポンッ!

 レイコが構えた|ダイナミッククラッカー《レイコ製変態兵器》が紙吹雪弾を撃ちだし、紙吹雪が部屋の壁際で舞い、それをヒエンコがカメラにおさめる。

「わーい、誕生日おめでとー」

「………おめでとう」

「ケーキ食べよー」

「ストップ、シデンコ。その前にプレゼントをわたさないといけないんだよ?」

「ちゃっちゃとわたそー」

 シデンコやハヤブサたちがコントみたいな会話をしながらめいめいのプレゼントを出す。

「ほい」

 シデンコが渡してきたのは北海道ファイターズのユニフォーム。ご丁寧に背番号109、さらにRAIKO KOKUBUまで書いてある。

「………はい。」

 つぎにショウコが渡してくる。

 ショウコは「静電気除去具セット」。静電気が春夏秋冬昼夜問わず発生するのでありがたい。だけど、この手のものはなぜか焦げてしまったりしてほとんど役に立たないことが多いのが悩みである。

「こんなので……よかったでしょうか?」

 やや弱気なフタコ。

 フタコは「私製静電気除去具Mk3」。

「一応今回はジュラルミンで作ってみました……」

 今回はジュラルミン製らしい。フタコが作ってくれるタイプは市販のよりは頑丈なのか割と保つのでとてもありがたい。

 けどやっぱり突然ショートしたりして壊れてしまうことが多い。

「どうぞ」

 イチコはわりとかわいめの文具セット。

「ほいよ」

 こんどはハヤブサ。

 こっちはフツーの服だ。

「はい。こらからの時季役に立つと思う」

 レイコが渡してきたのは少々大きめのドックタグ。

「ドックタグ……?」

「いやこれカトリズ」

 どうやらカトリズを銀色に塗ったらしい。

 次はノリヒサだ。

「はい」

 ノリヒサが渡してきたのは……

「なんですか……?ソフト?」

 それは見たところCD-ROMであった。

「肯定だ。魔力シュミレーター。魔力の配分率を変えてさまざまな状況をシュミレートできるらしい。友人が作ってくれた」

 ものすごく実用的な一品であった。

 でも、女子(一応自覚はある)へのプレゼントとしてはどうよ……と思う。

 まぁ、ノリヒサらしい気もするが。

「はい。これ。」

 続いてナイエが渡してきたのはゲームソフト。

 それも「りらいと」というテクノロジーアート社の「鍵」というブランドから最近発売されたばかりのノベルゲーだ。

 さすがナイエ大尉。趣味をきちんと把握している。

 ちなみにヒエンコのプレゼントはケーキである。

「んじゃ、ケーキ食べますかー」

 ハヤブサがシールドを使ってケーキを器用に切り分けていく。というかこんな使い方もあるのか。便利棚シールド……じゃなくて便利だな、シールド。



@北海道共和国U109歩兵団基地―美唄自室

8月15日北海道標準時刻2203時


谷田ノリヒサ 少佐


「八丈島にクラックゥの拠点……か」

 MCPの画面に表示されたネット新聞の記事を読みながらつぶやく。

 今日の昼過ぎ、坂東帝国東京都八丈町で瘴気が発生、1800時までに軍によって全住民が島外避難したという。ただ、瘴気を吸い込んだ住民12人が犠牲になり、5人が意識不明らしい。

「はぁ……」

 小さくついたため息は部屋の中に消えていった。


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